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映画「アムステルダム」「ハスラー」「アフター・ヤン」のこと

11月×日
新宿ピカデリーで「アムステルダム」(デヴィッド・O・ラッセル)
シリアスな内容を、笑いを交えた軽いタッチで描く、という好きなタイプの映画。
だが好きなタイプの作品だからこそ点は辛くなる。
第一次世界大戦で負傷した二人の兵士と一人の看護婦が、戦後のアムステルダムで友情をはぐくむ辺りまではかなり良い感じで進んで行くのだが・・・。
もう一段ギアが上がるところがあればなあ、という感じ。
いろいろ文句を言いたくなるのだが、「つまんなかった」という人がいたらちょっと反論したくなるような気もする映画。
面白くないことは無いので、観ようか迷っている人にはぜひ観てほしいが・・・。

11月×日
新宿ピカデリーで「ハスラー」(ロバート・ロッセン監督)
「テアトルクラシックスACT.2 名優ポール・ニューマン特集」という特集上映の内の一本。
有名な映画だが未見で、一度観てみたかった。
ヒリヒリとした135分。

最近、ウォルター・テヴィスの「地球に落ちて来た男」や「クイーンズ・ギャンビット」のことをnoteに書いたが、それはこの特集上映で「ハスラー」をやることを知ったのがきっかけだった。
「ハスラー」はウォルター・テヴィスの長編第一作目だ。
小説は未読。

モノクロのアメリカ映画というと、思わず「古き良きハリウッド」という形容をつけてしまいそうになるが、1961年の映画である。もう「古き良き」時代は終わっている。
監督のロバート・ロッセンは一時期アメリカ共産党員として活動していたことがあり、それが赤狩りの時代に問題になった。
Wikipediaには、

1951年の非米活動委員会で証言を拒否し、一旦映画界を追放された。苦悩の末に転向し、1953年の委員会では多数の党員の名を証言して以後、ニューヨークやヨーロッパ、中南米を映画作りの拠点として、二度とハリウッドには戻らなかった。

とある。
ということは「ハスラー」もハリウッドではなくニューヨークで制作されたのか。
配給は20世紀フォックスだが、製作はロッセン・エンタープライズとなっている。

小説も未読、映画も初見なので、なんとなくビリヤードの勝負~男の世界~みたいなイメージを勝手に描いていたのだが、実際の映画はそのイメージとはかなり違っていた。
確かに序盤と終盤は「ミネソタ・ファッツ」と呼ばれる伝説のビリヤードプレイヤーと主人公とのビリヤードの勝負だし、主人公(ポール・ニューマン)、ミネソタ・ファッツ(ジャッキー・グリーソン)、そしてそれに絡んでくる賭博師バート(ジョージ・C・スコット)の存在感は相当なものなのだが、観終わって印象が強いのは、それよりも中盤の、主人公の彷徨とヒロインのサラ(パイパー・ローリー)の存在だ。

新潮文庫「クイーンズ・ギャンビット」の訳者あとがきで、
「losersとlonersが私の小説の共通するテーマ」
というウォルター・テヴィスの言葉が紹介されている。
Loser=敗者/負け犬
Loner=孤独な人/一匹狼
確かにこれは「ハスラー」にも、そしてその20年以上後に書かれた「クイーンズ・ギャンビット」にも当てはまるテーマのように思える。

11月×日
TOHOシネマズ日本橋で「アフター・ヤン」(コゴナダ監督)
退屈。
これもまあ、好きなタイプの話(近未来SF/アンドロイドと人間/記憶についての物語)なのでちょっと点が辛くなっているかもしれないが、それにしても退屈だった。
小津安二郎監督の映画は何本か観たことがあって、好きな映画もあればそれほど好きではない映画もあるが、少なくとも退屈したことは無い。
しかし、「小津的」とか「現代の小津」とか「小津の影響を受けた」とかいう謳い文句を冠せられた作品は、ほとんど例外なく退屈だ。

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