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風景画のはじまり/SOMPO美術館

日本人は印象派が好きだ。
という話はよく聞くが、ぼくもごく一般的な、どこにでもいる、社会不適合気味の日本人の一人として、印象派は好きだ。

もっとも全部が全部好きなわけではなく、モネは今ひとつ好きになれないし、ルノワールはどちらかと言うと嫌いだし、後期印象派というくくりでゴッホも印象派に入れるのであればゴッホも好きじゃない。

それでも印象派に関係する展覧会があるとちょっと行ってみようかな、と思う程度には印象派が好きだ。

印象派は「なんかわかる」
というか、印象派よりこっち側はみんな「なんかわかる」
キュビズムでもシュルレアリスムでも、わけのわからない「現代アート」でも、何をやろうとしてこれを作ったのか、それをやろうとした動機、みたいなものが「なんとなくわかる」
もちろん「わかったつもりになっているだけ」なのかもしれないが、印象派より前の絵画になると、「わかったつもり」にさえなれない。
(美術のことなんてほとんど知らない人間の感想だということは先に断わっておくけれども)印象派の向こう側に、何か大きな断絶があるような気がする。
印象派の前後あたりで何かが大きく変わって、変わった後の世界が現在までずっと続いている、という「印象」がある。

絵画に限らず、何か大きな変化があって、その変化後の世界が今までずっと続いているという場合、だいたいその大きな変化があった前後が一番面白い。
今に至るまで続く色々な問題や、色々な可能性がすでにその辺りに提出されているから。
もちろんその後にも色々面白いものはあるだろうし、才能はどんな地点にでも勝手に現れるものだし、現在進行形で作られているものの鮮明さみたいなものは他と代え難いのかもしれないというのはあるけれども・・・

なんてことを普段から考えているわけではないのだが、SOMPO美術館でやっている「風景画のはじまり」展に行って来た。
印象派の少し前あたりから印象派にかけての流れを、風景画を通して見る、という感じ。

新しくなったSOMPO美術館に行くのは2回目。
この間の「モンドリアン展」以来。

1階で受付をして、エレベーターで5人ずつ、5階まで昇る。

【5階】 第1章・コローと19世紀風景画の先駆者たち

「相変わらずコローの奴は、なんだかモヤモヤした絵ばっかり描いてんな」と思いながら5階を見て回り、階段で4階へ

【4階】 第2章・バルビゾン派 / 第3章・画家=版画家の誕生

第2章は「風景画」といってイメージする典型的な風景画、という感じ。

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(ジュール・デュプレ「風車」)

一番印象に残ったのはアンリ=ジョセフ・アルビニーという画家の「ヨンヌの思い出、サン=プリヴェからブレノーへの道」という絵。
ポストカードが無かったので写真を載せられないのが残念。
田舎の広々とした一本道を歩いている小さな人影が描かれた絵なのだが、印象的だったのは青空。
青空にぽかんと白い雲が浮かんでいる。
考えてみるとこれだけ風景画を集めているのに青空が印象的な絵はほとんどこれだけ。
ヨーロッパがいつも曇っているわけでもあるまいに、なんでなのかわからない。

4階の後半、第3章は版画。
庶民の生活を書いたものなんかも多く、このエリアは面白かった。
何枚か持って帰りたいな、などと思いつつ3階へ

【3階】 第4章・ウジェーヌ・ブーダン / 第5章・印象主義の展開

第4章、ブーダンはいくつかの展覧会で1枚か2枚展示されているのを見たことはあるけれども、まとめて見るのは初めてかも(今回は7枚)。
今まであまりピンとこなかったが、初めてちょっと面白いな、と思った。
ある程度まとめてみることで初めてわかることもある。

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(ウジェーヌ・ブーダン「ベルク、船の帰還」)

3階の後半、第5章は印象派
モネとルノワールはやっぱりあまり好きになれない。

と、こんな感じで見て回り、3階から階段で5階まで昇ってもう一周。

5階で「コローは相変わらずモヤモヤした絵ばっかり描いてんな」と思い、4階で「版画、面白いな」と思い、3階で「ブーダン、悪くないじゃん」「モネとルノワールはあまり好きになれん」と思い2階へ。

2階はグッズ売り場。
風景画なので「モンドリアン展」と比べるとあんまり面白いな、と思うグッズは無い。


ポストカードを2枚だけ買って帰った。

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