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これは変化球が来るな、鋭く曲がるスライダーか、落差の大きなフォークボールか、と待ち構えていたらスポンとストレートを投げ込まれたようなラストでビックリしたけど面白かった映画「LAMB/ラム」

10月×日
新宿ピカデリーで「LAMB/ラム」(ヴァルディマル・ヨハンソン監督)

予告編から得た情報は、
〇羊を育てて暮らしている夫婦(それほど若くは無いが、子供はいない)
〇ある日、一頭の羊から羊じゃないものが生まれる。頭は羊で体が人間の赤ん坊
〇夫婦はそれを我が子のように育てるのだが・・・

そのくらいかな。

予告編はかなり恐ろしげな仕上がりになっていたので、ホラー映画かと思ったのだが、実際に観てみると違っていた。
少なくとも狭義のホラーではない。
常に不穏な空気は漂っているが、基本的には夫婦がそれを育てる様子が淡々と描かれている。

アイスランドの風景、羊の世話や畑仕事、動物たち、が魅力的に描かれる。
どこかで決定的な破局が訪れるのではないか、と思わせつつも訪れないまま静かに映画は進んで行く。
そして不意に破局が訪れる。

ラストにはちょっと驚いた。
この題材なら話の焦点は「別の世界から来たもの」とかあるいは「狂った精神の見た何か」というあたりになるのかな、と思っていたのだが、ある意味すごく「現実的」というか実体がある、というか、「えええ?そういう話なの?」という驚き。

「ファンタジー」とか「サイコホラー」とかいうよりは、「民話」に近い感じを受けた。

色々な解釈が出来るとは思うけれども、あまり解釈をする必要はないのかな。
特にキリスト教的な解釈は、キリスト教に不案内なぼくにもある程度できるくらいにハッキリしてはいるのだが、それが正解、という感じもしない。
レビューで幾つか「考察」みたいのを読んでみたが、正直それを読んでこの映画がより面白く思える、ということはなかった。

「民話」のなかにはなんか不条理な、よくわからない話がわりとあるけれど、そんな感じ。
明らかに「寓話」だと思えるのだけれど、その「寓意」がはっきりしない・・・みたいな。

色々と「解釈」をしてみるのもそれはそれで楽しいのかもしれないが、自分としては「解釈」などせずにいくつかのイメージを反芻してみたい、と思う。
羊だけに。

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