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「昔かたぎ」では価値がない? 格好いい自分でいたい。50代会社員がすべきたった1つのこと。(前編)

40〜50代社員は頼れる戦力?それとも…

はじめまして、お久しぶりです。
今回も社内研修の現場から見た「大人の悩みと学び方」を紹介していきたいと思います。

製造業は、国内総生産(GDP)の約2割を占めていて、日本全体の儲けを担っている重要な産業です。(経済産業省『2020年版ものづくり白書』より)

私の会社も製造業をしています。
その第一線で会社を支えてきたのは40代50代の社員さん。管理職も多くはこの層の人です。この人達が今の会社を築いてきたとも言えます。

しかし…いざ社内研修を実施する時に

「それ業務時間内にやるん?」
「忙しい現場より研修を優先させるのはなあ…」
「教育や研修って必要ですか?」

こんな声を上げるのはまさに40~50代の人々!
会社は、この方々に対して管理職として後継を育ててほしいと期待しています。頼りにしているのです。そのためには管理職自身も学び、マネージャーとして活躍してもらわねばなりません。

ところが管理職はなぜ学習を必要ないと言うのか?
彼らに学んでもらうにはどうしたらいいのか?
私は、この経験から『本当に大人に学びは必要か』という問いを持つことになりました。今回はそのエピソードをご紹介します。

困っていても「困っていない」管理職

ある時、会社は集合研修で管理職のマネジメント意識を高めることにしました。会社の思いや求める基準をはっきり伝え、彼らに現状との乖離を自覚してもらうためです。生産性や課題点から判断して、ほぼ全ての部署が基準値から遠いと会社は感じていました。

しかし、そこで驚くべきことが起こりました。

その日の受講者は10名の管理職。求める基準を説明した後で、講師役は軽い気持ちで尋ねました。
「今までこうした基準がなかったのでこれから実現していかれると思います。ちなみに、今まではどの程度この基準を満たしていたと感じられますか?」
良くて50%ほどじゃないか、と思って聞いたそうです。

ところが。

「かなり満たしていますね」

10名中10名がそう応えました。驚いてパーセンテージで問い直したところ、平均で「70%はできている」との答えだったのです。自分たちは会社の求めることに応えているという認識でした。またこんな質問もしました。

「部署運営で困っておられることはありますか?」

「いえ、別に困ってません」

すべての部署ではありませんが、課題点がない訳ではありません。当然それを把握しており、場合によっては会社から問い質されている管理職が「問題ない」と返す…。
講師は戸惑いつつも「そうでしたか」と返してプログラムを進めていったそうです。
会社と管理職本人たちのこの温度差。一体なぜなのでしょうか。

叩き上げ部長が
研修テキストを持ち歩くようになった理由

時は遡り、ある部長の話をします。その人は40代男性で現場の叩き上げ。親分肌で部下に怒鳴りながらも飲みにケーションで信頼関係を作っていく人でした。

「知識ばっかあっても現場では使えんよ」
研修担当としては耳が痛いものの、正直な意見は有り難いもの。彼は言いづらいことも相手に正直に伝える裏表のない性格です。現場に寄り添い、部下にも慕われる上司でした。

とはいえ、部長としては経営的視野も培わなくてはなりません。社長の命により、この部長は数カ月の通信教育を受けることになりました。
多忙な業務の合間を縫ってレポートを何本も提出し、採点され、結果は会社でチェックされます。
こういった研修は、あの部長の最も忌避するところだろうと私は思っていました。

ところが、通信教育が終わってみれば、成績優秀者として例の部長の名前が挙がったのです。
また、出張中も常にテキストを鞄に入れ、業務の合間に勉強している姿を多くの人が見ていました。
その部長はこう言いました。

「やってみたら面白かったんだわ」

部長に尋ねたところ、最初は嫌々やっていたものの、自分が今まで現場で感じていた課題に対し「そうか、これを応用したらいけるな!」と発見があったのだそうです。
また、テキストの内容から、過去自分に教えてくれた上司達の言葉を思い出し、今になってその意味が理解できたものもあったとか。

「研修みたいな小難しいことは俺にはできんと思っててな。でも『難しいからやりたくない』なんて言えんかったのよ」

気まずそうに、そして少し照れながら。部長はそう教えてくれました。

”格好いい自分”でいたい。その想いが格好いい。

学習を必要ないと言う40~50代社員。
「困ってません」と言う管理職。
「難しい」と言えなかった部長。

私の考えですが、役職や年齢というのは、上になるほど「できない」と言えなくなるのではないでしょうか。
40~50代の社員は部下から頼られる立場であり、同時に上から成果を求められもします。そんな中では誰にも頼れません。彼らが入社した頃は「仕事は見て盗め」が合言葉だった時代です。今までも、誰かに教えられたり頼ったりすることは少なく、何度も失敗しながら自分自身で積み上げてきたのかもしれません。

その世代の人にとって、「自分は教えられた経験がないのに部下を上手に教えなければならない」という状況はプレッシャーなのではないでしょうか。

しかし彼らは「できない」「困っている」と言いません。業務上は非効率かもしれませんが、私はそこに”矜持”を感じます。部下や会社の期待に応え、「格好いい自分でいよう」とする想いは前向きなもの。それは向上心の塊です。「できないとは言えない。だからできるようになろう」と隠れて努力する管理職の人を私は知っています。


ただ、一つ気になるとしたら、”目隠し”をしてはいないか?ということ。
「できないんじゃない、自分には必要ないんだ」
「研修は自分が理解できないから受けたくないんじゃない。必要ないんだ」
そんなふうに自分に目をつぶってはいないでしょうか。

できない自分を無理に見つめる必要はありません。しかし、いつまでも現状の自分を偽っても、部下からの評判や会社からの期待を満たせる時はやってきません。本当に”格好いい”あなたにはなれません。
その胸の内には、自分の腕でやってきた実績と”格好よさ”があるのに、なんてもったいないことでしょうか。


「じゃあどうしたらいいんだ」


結論をお伝えします。
もし、少しでも”目隠し”状態だと感じるなら、あなたに役立つのは、学んで新しい力をつけ、自分に自信を持つことです。

しかし、それがあなたにとって簡単ではないことも承知しています。30代の私ですら培ってきた経験というものがあります。私よりも更に人生経験豊富なあなたは、既に多くのスキルや経験で満たされていて、そこに新しいものを注ぐのは余計な事に感じられることでしょう。
ましてや、その過程で自分の力不足に直面しなければならないとしたら、今までの自信が揺らぎ不安になってしまうかもしれません。

でも、安心してください。「できない」と言わないままでも、あなたの矜持を守ったままでも、学んで新しい自信をつけることはできます。
私はその方法を社内教育の現場で実際に試して成功しました。

後編では、その方法を紹介するとともに、『本当に大人に学びは必要か』という問いにも答えを出したいと思います。

この前編でお伝えしたかったのは一つだけ。
「”格好いい”自分を目指すあなたは格好いい」ということでした。



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