河童58

坊主は背中に大樹をつけ、刀を目の高さで前方に構える。
大きく息を吸い込みそしてゆるりと息をはく。
おおかた吐き出すと、最後のわずかを「フっ」と吐きってしまう。
身体の力を抜き下っ腹に軽く力を込める。
闇を視るとなく観る。
「今度はどこから」
視野のしたに先程斬りつけ仕留めたであろう相手が倒れているようだ。
坊主は確かめるように軽く足で蹴ってみる。
そのとき。
ガサガサ。
頭の上で草木の揺れる音。とほぼ同時に衝撃が頭を襲う。
意識はあるが身体は前のめりに倒れてゆく。
「いかんっ」
倒れる身体を支えるため何とか足を踏み出し瞬間刀を地面につく。
刀から伝わる感触は、足元にあるであろう斬りつけたものに刺さった様だ。
固くない柔らかな感触から「斬る」と言う意識が戻り、肩から臍へと身体を捻り剣先を後方へ降ふり斬る。
「ギャッ」手応え。
「よしっ斬った」
坊主はそのまま倒れてゆく。
身体に鈍痛が走る。
背中を打ち少々息苦しい。
頭の後ろも打ち、この闇のなか、意識が闇へと向かい始める。
「ぅ」何とか意識は踏みとどまる。
踏みとどまらせたのは「不安」。
「不安この上なく不安」
辺りから聞こえる足音。
「複数いるのか」
辺り一面から聞こえる。
消え入りそうな意識は気絶の世界から遠のき、不安と恐怖と闇にとどまる。
「もう、もう成るようになれ」
よろよろと坊主は立ち上がりながら、辺り構わず刀を振り回す。
すぐ側にある足音。
「こわい」
素直な気持ちをこぼし刀を振り回す。手応えあり。
わが身の痛みと斬りつける手応えとが、刀を振り回す事をやめさせない。
いつの間にか片手で振り回し、
「なっ」片手でまばらな髪の毛らしきを掴んでいる。
頭を掴んだ。
坊主は勢い止めず、刀を振り落とした。
首らしきを斬りつけた様子。
自分がどの様な体勢で何をしているのか解る。
勢い恐怖と刀が骨を断つ途中で止まっている感触が「殺りきらねば」もう一度振り落とさせる。
刀の切れ味と片手の力で最後は千切りとるようになる。
その行動がより残酷さに勇気を与える。
「とったぞっ、どうだ」
つかんでいる左手を誰に見せるでもないが高く掲げようとする。
腕は高くあげているつもりだろうが胸元辺りまで。
「とった・・・。」
よろけているが、刀は無造作に振り回している。
新たな手応え、斬られた痛みの呻き声も聞こえる気がする。
坊主は体勢を崩しながらも振り回し、ぬかるむ足場で滑り崩れてゆく。
肩をうち、軽く頭を打つ。
すぐに立ち上がろうとして再び倒れ身体をかばおうとするも妙な動きになり後頭部を打ち付けることになる。
足音がしているのか。
もう解らない。
刀を持つ手はゆらゆらと振り回している。
闇のなか、己の意識は遠のいた。


24

開いた戸口が康介を不安にする。
康介はからだの痛みを我慢して立ち上がり「何か得物はないものか」社の奥へゆるりと歩いてゆく。
娘の方は、蹴破られた戸口のほうの視野に何かを感じて目を向ける。
「うっ」心臓が止まりかけた。
いや、心臓以外のすべての動きが止まった。
蹴破られた戸がきえ、闇が塞ぐ戸口。
今は闇への入り口へとなった場所の向かって左下のかど。

自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!