河童39

「とにかく儂らもあんなに気味の悪い奴等と争うことに気がのらんものだから・・・。とにかく皆集まって・・。こうして夜明けをむかえて。」
どうやら話はなにも決まってない様子。
「この調子だと、今夜あたりまたくるだろうと。」
「うむ」長が一言頷く。
皆がそれ以来静まり返り、とぼとぼと牛の歩みに合わせて歩いていると、
「やっぱり今夜も来るかな」と牛の尻から声がする。
皆が驚き同時に振り替える。
「へ、平太」
小枝を左右に軽く振り回し、牛の尻についてくる平太を驚き見つめる。
「いつから着いてきている」
武が驚きのまま声をかける。
「小屋からだけども。どうしたのさ、河童でも見たように驚いて。おいらが河童に見えたの。」
武たちはあきれ顔で平太を見つめる。
「うそだろう。儂は牛の上から辺りを見ていたが、お前に気づかなかったぞ」
少々辛さをかばうように長がしゃべる。
「嘘じゃないよ。おじさんが痛そうに牛の背に座っている顔も見たし、もう一人のおじさんが牛の糞を踏んづけたのも見たし。
おじさんたちがお通夜みたいに頭たれてるから気づかなかっただけだい」
川向かいの男が、自分の足に目をやる。
「おっ、確かに踏んでいる」
男たちは笑いをこぼす。
「どうやら、儂らもかなり周りが見えなくなっている。山にはいるときは気を付けなくてはな」
長が笑みをこぼしながら平太に語りかける。
「わかった。儂らが気づかなかっただけだ。山男に気づかれないまま後ろを歩くとは・・・。どうだ猟師にでもなるか。その度胸も買いだ。」
長のからかいと、誉め言葉に平太が笑顔をつくる。
武も笑いながら、
「うん、度胸ならありそうだ。さあ、あとは村に引き返せ。その度胸だ。一人で帰れるだろう。」
「おいら、おじさんの村の子になるから連れていっておくれよ」
平太の突拍子の言葉に武たちも笑い出す。長も楽しげに。
「わっははは。これは良いぞ。どうだ武、弟子がほしかろう。この子は知恵もありそうだ。弟子にしてやれ。」
楽しげな長の言葉に、武も楽しげに。
「平太わかったぞ。お前が十五、十六の歳になったら考える。それまで村で平太の役割果たせ。」
「わかった」平太は嬉しそうだ。
「十五まで。十五になったら、猟師の仲間入りだ。」
平太が約束を交わそうとする。
「子供との約束だからと忘れたらだめだから。」
「解った解った。早く村に帰るといい」


自分とか周りの友人知人とか、楽しめるように使います。何ができるかなぁー!(^^)!