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「The Last Of Us」をPS4版で再プレイ 結局どこが魅力なのか

もはやゲームではなく、「もう一つの人生の疑似体験」だと思っている。

「The Last of Us」は私の心の中で「いくらなんでも物語おもしろすぎるで賞」を送ったゲームのひとつだ。
セリフも短い、ムービーも短い、なのにボリュームがあって、いつまでも心に残り続ける。
「俺がクリッカーになるんじゃないか」というぐらい寝ずにプレイした作品である。

始めて遊んだのはPS3で発売されたときだった。
手に取ったきっかけは覚えてない。
大好きな「アンチャーテッド」をつくったノーティドックの新作だから、くらいの理由だったと思う。


手に取ったきっかけは曖昧だが、この作品のラストは鮮明に覚えている。


私はこのゲームのことを一生忘れることが出来ない。
それくらいに物語も、世界観も、キャラクターも秀逸だった。

完璧に幕を閉じたと思われたこの物語が、再度幕を開けようとしている。
「The Last of Us PARTⅡ」の登場である。
完璧すぎるラストを迎えた「トイストーリー3」の続編が発表された時のような不安と期待が胸をよぎる。

というわけで今回の記事では、
数年ぶりに原点のラスアス1をPS4リマスター版でプレイした結果
「結局私はラスアスのどこに惹かれたのか」を言語化してみることにする。

好きな作品であればあるほど、言葉は出てこないものだ。
言語化できないからこそ、心に残り続けるものだから。
だからがんばって言葉にする。誰かに共感されたり、それは違うと新たな意見をもらえたら幸いである。

ネタバレを存分に含む可能性があるため、既に遊んだ方推奨記事です。

ジョエルの喪失と再起、人間ドラマと感情移入


主人公ジョエルは、本作最強の中年男性である。

分かりやすく言えばゾンビ化(正確には違うが)する細菌によってパンデミックが起きてしまい、法も秩序も失われた滅茶苦茶な世界で20年も生き延びた男だ。

荒廃した世界で生きるため、道徳心などとっくの昔に捨てている。
自分の命が狙われるならば、生きることの障害となる相手ならば、敵の命を奪うこともいとわない。一言で言えばサバイバーである。

血も涙もない人間であるように見えるが、以前は一人娘を育てる良きパパであった。
彼は20年前、パンデミックが世界を襲ったその日にに愛娘のサラを失っている。
開始10分で、ジョエルとプレイヤーはその悲劇に胸をえぐられるのである。


そんなジョエルが出会う少女、エリー。
ある組織に特定の場所まで運んで欲しいと依頼された、その「荷物」が彼女だった。年頃はサラと変わらない。

強いメンタルを持った彼女と、実は内面がズタズタであるジョエルの対比がまず美しいポイントの一つ。

私は「龍が如く」の桐生一馬と澤村遥の関係を連想した。

最強の中年男性と少女のコンビ。
親子ではない、恋愛関係でもない。
赤の他人だが年の離れた男女が少しずつ信頼関係を構築していくドラマが、何度見ても心に残る。


「ダメだ」
「それはするな」
「死んだ人間のことは口にするな」
「お前には任せられない」

当初ジョエルからエリーに投げかけられる言葉は、まるでパワハラ上司のように否定的なモノばかり。
この世界で簡単に人に心を開くことは騙され、殺される可能性に繋がるからだろうか。それとも失ったサラを連想させるからか。

しかも、エリーはそのメンタルの明るさ故、意図せずジョエルの深い闇の記憶を再び開こうとしてしまう。

過去に起きた悲劇を直視したくないジョエルは、半ば無意識に否定してしまうのだ。

そこから、少しずつお互いに親子のようでいて、それでいて対等なパートナーとして信頼関係を結んでいく様子がプレイヤーに伝わっていく。
映画では味わえない、「自分でプレイする」からこそ味わえる極上の感情移入が、ジョエルの「最後の決断」をプレイヤーに認めさせる理由になる。

ジョエルとプレイヤーが一体化したような感情移入体験が、ある意味で人生の疑似体験レベルに仕上がっており、
ゆえに私の「体験」として、深く心に刻まれているのではないかと思う。

荒廃した世界の音楽

私は音楽的な素養は0に等しく、ゆえに本作の音楽についても専門的な知識で語れることはひとつもないが、
それでも「この作品の音楽は素晴らしい」と言いたい。

なぜ素晴らしいのか?
音楽を多用しないからである。

いや、おそらくたくさんの音楽は流れているのだが、過剰なBGMがひとつもない。劇を邪魔しないが、確実にその説得力を音楽が高めている。

耳に残るのは、儚いアコースティックギターの旋律のみ。

荒廃した世界では電気を使うことが容易ではない。
大きな音を出せば「感染者」が集まってくる危険性がある。
この世界に残されたささやかな楽しみの象徴が、静かに流れるアコースティックギターの音色なのではないかと私は思った。

普通のアクションゲームなら、戦闘を盛り上げるために騒々しいBGMが使われるところだが、このゲームは特に静かだ。
だからこそ、主人公の息遣いや敵の断末魔がより鮮明に響き渡ることになり、それが後述する「緊張したゲームプレイ」の魅力につながっている。

言いたいことは、このゲームの音楽は「引き算」的に配置されていて、無駄がない、ということだ。


緊張感のあるゲームプレイ


本作はTPSのアクションゲームで、ジャンルで言えばホラーだ。
挙動のおかしな感染者や、命を狙って集団で襲い掛かる野蛮人どもに襲われる恐怖がこのゲームのキモとなる。

前述したように、このゲームは割とBGMが少ない。
なので敵を発見したときの主人公の息遣いや敵の会話、足音、感染者の発する耳障りな異音が、その空間に緊張感を生じさせる。

進みたい方向に敵の集団がいる時、主人公はいくつかの方法を試みることが出来る。

たとえば空き瓶を拾い、明後日の方向に投げて音を立て、敵がその音に注意を向けている隙に背後を通り過ぎる。
直接その瓶を敵に当てて隙をつくり、羽交い絞めにして人質にとっても良い。


もしくは弾丸を正確に当てる覚悟で銃撃戦に持ち込むか、木製バットにハサミの刃をくくりつけた武器で殴り倒してもいい。
道中で拾って作成した火炎瓶や爆弾を使用するのも方法のひとつだ。

方法は様々だが、制約がある。
それは「道中に落ちている武器(またはその素材)が少ない」ということだ。

ゲームの難易度設定によって弾薬や武器素材の入手量に違いがあるが、基本的に物資には限りがある。

「今ここで爆弾を使ってしまっていいのか?」
「物資が少ないからこの敵は静かにやり過ごそう」
「弾薬に限りがあるから絶対に外さないようにしよう」

と、今の手持ちと状況を考えて、最善の方法をとる必要がある。
高難易度になるほど、その特徴は顕著になり、だからこそ敵との遭遇には常に緊張が付きまとう。
その緊張感が、ゲームプレイの熱中度を高めているのだ。


また、おもしろいのが「感染者」と「人間」で戦い方が変わるということだ。

感染者は知性を失っていたり視覚を失っているため、ステルスでやり過ごすのが容易だ。
だが見つかると一気に何体もの感染者が「何も考えずに」つっこんでくるため、見つかると処理にテンパって殺されてしまう場合がある。

それに対し人間は知性があるため、
こちらの裏をかくように回り込んできたり、主人公の隠れた方向を味方に知らせて連携を取ってくる。
また遠方から銃で狙ってくるので、こちらもより高度な立ち回りを要求される。

このゲームは敵の配置バランスが美味い。
ずっと人間相手でもずっと感染者相手でも飽きる。
異なる対処を迫られるからこそ、交互に襲い来る敵に対してのアクションに飽きが来ない。
食べ放題バイキングでしょっぱいものと甘いものを交互に食べるような感じに近い。


魅力は失われない


本物は色あせない。
このゲームが発売されたのは7年前の6月13日。
リマスター版のおかげで、今も充分すぎるほどに楽しめる。
濃厚で救いのない、でも希望も0ではない、一言では伝えられない物語のページをその手でめくってみてほしい。

動画で見るだけなのと、ジョエルになるのとではまったく違うはずだから。

続編もレビュー書いてみようと思う。
この記事を書いた時点で恐らく全体の折り返し地点まで来たけど、なかなかエグイ冒頭からスタートしましたよ。
この新たな物語がどのような着地を決めるのか見届けて、またあなたに紹介出来たらと思う。

必ず書く、誓うよ。

分かった。

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