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優しさは貴方へ返る。
もう15年ほど前の話だ。
仕事帰り、自宅の最寄り駅を降りると雨が降っていた。傘は持っていない。もう家に帰るだけだ。わざわざ傘を買うほどでもなかった。
自宅まで15分弱。ちょっとした軒下を歩いてみたり、木の下を歩いてみたり。少しでも濡れないように、俯きながら歩く。
もう着くかなと思っていた時だ。
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「これ使って下さい。」
後ろからスーツの男性に声をかけられた。
男性が持っていたビニール傘を差し出されていた。
「あっ…家そんな遠くないので大丈夫です。」
少しびっくりして焦って答えた。
「ううん。使って。」
一度差し出した傘を引っ込めるのもバツが悪かったのかもしれない。私にすっと手渡した後、男性は足早に去った。
本当にあと数分の自宅。貰ったビニール傘をさして帰宅した。
顔も名前も知らない。でも、あのスーツの人は今、幸せかな。幸せでありますように。優しい気持ちをありがとう。15年経っても、ふっと思い出しては祈っている。
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