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Zoom(ズーム)

新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるう中、在宅勤務やオンライン学習などで急速にユーザー数を爆発的に伸ばし、株価がうなぎ登りになっていたオンライン会議システムのZoom(ズーム)。

昨年12月は1000万ユーザーだったが、外出禁止令がアメリカ各州で出されるようになった今年3月には2億人がZoomのアプリを使い、オンライン会議を行うようになった。同社のエリック・ユアンCEOによれば、オンライン授業では、20カ国の9万校がZoomを使っているという。

だが、そんな「おこもり時代の救世主」にセキュリティ問題が浮上している。

シリコンバレーで保険会社に勤務するエレノア(仮名)は「一定時間(40分)まで無料だし、安定して使いやすいので、家でもおこもり生活の気晴らしに、みんなでオンラインの飲み会に使っている」。彼女の会社はZoomを社内ミーティングでも使っているが、「なぜか、今朝Zoomを立ち上げると、パスワードを聞いてきた。いつもと違っていて変ね」と思った。

アメリカ連邦捜査局(FBI)は3月30日、Zoomを使っていると、不明の人物が突如会議に割り込んできて、人種の悪口を流したり、画面をハイジャックしてポルノの画像を流したりといった報告が相次いでいると警告した。

FBIのボストン支局によると、3月末、マサチューセッツ州の高校でオンライン授業を実施していたところ、不明者が突然授業に“乱入”し、口汚い言葉で罵ったのち、教師の自宅住所を叫んだという。また、別の高校ではオンライン授業中に不審者がビデオ参加し、鉤十字の入れ墨を生徒たちに見せる事例もあった。アメリカでは、こうした現象を「Zoom Bombing(ズーム爆弾)」と呼んでいる。

また、Zoomをめぐっては、第3者の会議へのアクセスを防ぐエンドツーエンド暗号化をしていないにもかかわらず、そのように喧伝していたり、ハッカーが利用者のウェブカメラやマイクを乗っ取ることを可能にするセキュリティホールがあるといった報道が次々と出てきている。

こうした中、ZoomのユアンCEOは4月2日、今後90日間は新たな機能の追加よりは、セキュリティとプライバシー力を尽力するとブログで発表。5日はCNNのインタビューで、「われわれはあまりに早く動きすぎた。その中で手順が間違っていたこともある」とし、「間違っていたことを認め、今後はセキュリティとプライバシーの強化というステップに立ち戻って力を入れる」との方針を示した。

FBIの警告や報道を受けてZoomの利用を見合わせる動きも出てきた。ワシントン・ポスト紙によると、ニューヨーク市教育委員会はZoomの使用をただち止めるように各学校に通達。同紙によると、ニューヨークの学校ではZoomに変えて、セキュリティが確保されているという理由から、マイクロソフト社のオンライン会議システム、Teams(チームズ)を使うという。

FBIはZoomのハッキング対策として、

1. 会議や教室を「公開」しない。Zoomでの会議を「非公開」にするには、会議参加者にパスワードを発行する、ホストが会議への参加者を管理できる「待機室」を設定するという2つの方法がある。

2. ソーシャルメディアの投稿で、会議や教室へのリンクを共有せず、特定の人に直接リンクを提供する。

3. 画面共有オプションを管理。Zoomでの画面共有を「ホストのみ」に変更する。

4. 2020年1月、Zoomはソフトウェアを更新したので、更新したバージョンを使う。この新しいバージョンではデフォルトに会議のパスワードを追加し、参加する会議をランダムにスキャンする機能を無効化した。

こうした問題が浮上する中、シリコンバレーの人たちはZoomのセキュリティや利用についてどう考えているのか。

現在IT企業の取締役を務める元エンジニアは、「Zoomはエンドツーエンド暗号化していると言っていたが、やっていなかったから、こんなことになる」と不信感を示す。

セキュリティを重視するのであれば、「Zoomの使用はやめて、グーグルのハングアウト(Hangout)や、シスコのウェベックス(Webex)などを使うべき。Zoomはこれでビジネスを失うかもしれない。セキュリティ対策をおろそかにするからだ」と手厳しい。

また、ガジェット報道で知られるウッバー・ギズモ共同設立者で、元エンジニアのユベール・グェン氏は、「どうしてもZoomの使用が必須なら、電話(スマホ)かタブレットで使ったほうがいいと思う。基本的にスマホアプリの方が、OS(基本ソフト)経由で使うより安全だ」とアドバイスする。

シリコンバレーでは、スタートアップを含めて企業レベルや政府関係者も使っているが、使用にあたってはセキュリティに気をつけているようだ。今後、問題の深刻さによっては、Zoomを相手取った集団訴訟が繰り広げられることも起こりうる。今後、同社がどれだけセキュリティ問題に真摯に向き合うのか。早急な対応が求められる。

(東洋経済 オンラインより抜粋)

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