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小説|パラレルハウス|⑦最後の扉―メグ編

明は扉に入ると、来たことの無い店内にいた。。

(ここは・・・・一体・・)

見たことない店内に呆然と立ち尽くし、辺りを見回していた明の目の前に、メイドの格好をした女の子が突然やってきた。

「おかえりなさいませ♡♡ご主人様♡♡」

「あちらにお連れさまがお待ちです₍ᐢ⑅•ᴗ•⑅ᐢ₎♡」

よく分からないまま、明はメイドについて行った。そして案内された先には眞子が座っていた。

眞子「あ!あきら〜!こっちだょー」

(え!?なんで眞子??
そして、ここはどこ??まさか、、、、メイド、、、)

明「なんで、ここにいるの?」
眞子「え?!明が一緒に行こうって誘ってくれたんだよ」
明「お、おれが?!!!」

「お待たせしました(*´ㅂ`*)ご主人様」

明「!!!!!!」
恵巳「フフフ♡今日はありがと♡♡」

目の前の光景に明は半分パニックになっていた。今すぐにでもここから出たい衝動が止まらない。。

裏返りそうな声をなんとか抑えつつ振り絞って出てきた言葉は、、、
「おれ、ちょっと、、トイレ、、」

なんとかトイレに逃げ込んだ明だったが、心臓のバクバクと汗が止まらない。

(昨日、メグとあったことは覚えてる。。
でもなんで眞子がここにいて、、、しかもメグがバイトしてる店。。。。
とりあえず、用事を思い出したってことにして、ここを早く出よう!それがいい!)

勇気を振り絞って、明はトイレを出て席に戻った。

眞子「明、なんか顔色悪いけど、大丈夫??」
明「あぁ、、、そういえば、俺、、」
と眞子に店を出ようと言おうとした時に
恵巳「アキラくん!彼女さんですかぁ?」
眞子「あれ?知り合いなの?!」
明「・・・あ、いや、、」
恵巳「昨日、初めて知り合ったんです。明くんの友達の友達なんです(^^)メグミと言います♡♡よろしくお願いします!」

眞子「そうなんだぁ!なんか、明が急にメイドカフェ行きたいって言うから、何でかと思ってたけど、、、私、マコ。よろしくね!」
「ねぇ、メグミちゃんだっけ?メイドカフェは長いの?私ね、お芝居の勉強してるんだけど、メイドもお芝居みたいな感じじゃない?私、前から興味はあったんだよねぇ」
恵巳「う〜ん、ここのバイトは1年くらいしてますぅ♡♡私はいつもご主人様にご奉仕できて、とっても楽しいんです₍ᐢ⑅•ᴗ•⑅ᐢ₎♡」
眞子「ご奉仕ねー。だってさ、変な人とかも来るでしょ?」
恵巳「ご主人様は皆さん良い人ばかりですよ(^^)ところで、明さんと眞子さんはお付き合いしてどれくらいなんですか?」
眞子「半年、、くらいかな。バイトが同じなの。」
恵巳「いいなぁ〜♡私もアキラさんと同じバイトしたいなぁ♡♡」
明「!バイトって言っても、別にシフトがいつも同じとは限らないしさ💦そんないつも一緒に居るわけじゃないんだけどな💦」

眞子「え?!明なんかあったの?すごい汗だけど、、、( ̄・ω・ ̄)」
恵巳「じゃぁ、私はご奉仕があるので、お2人で楽しんでくださいね♡♡」
明を見つめてメグはテーブルから離れた。
メグのメイド服姿で余計に明はドキドキしてしまった。。

(何考えてんだーおれ!!щ(゚ロ゚щ) )

眞子「それにしても、メイドカフェね〜。。。明、あの恵巳ちゃんとなんかあったの?なんかすごい慌ててる感じしたけど、、、」
明「昨日知り合ったばっかだぞ、なんかある訳ないだろ・・」
すると眞子は何かを察知したのか、急に少し怒った様子になった。

眞子「なんかあったんだね。もーいぃ。私、帰る」
席を立とうとする眞子を必死で明はおさえた。

明「いやいや!何言ってんだよ!俺たち付き合ってるだろ、恵巳ちゃんはただの友達だし、それこそ変だろ、なんかあったら彼女と一緒に来れないし💦」
眞子「まぁ、、でも恵巳ちゃん、明ばっかり見て、一緒にバイトしたいとか言うしさ。。。」

「なんか、、私、少し明のこと見損なった。ぜんぜん話す気になれない。せっかく楽しみに来たのに、恵巳ちゃんのあんな態度みたら、つまんなくなってきた。。。。」

明「いやぁ、、、そう言われても、、」

眞子「恵巳ちゃんに会いたかっただけなら、私のこと呼ばなくてもイイじゃん。ゆっくり2人で話したら。。私、バイトあるし行くね。」

明は1人メイドカフェに残された。。。

恵巳「あれぇ?彼女さん帰っちゃったんですかぁ??」
メグは明の耳元で囁くように言った。
「ねぇ、アキラくん、この後予定ある?♡♡」

明「あ、ごめん。メグ。俺、あの時は勢いでしちゃったけど、、、メグに特別な気持ちとかなくて、、、」
恵巳「え??なんの話??」

恵巳には実家での出来事は覚えてないのか、よく分からなくなった。。

明「とにかく、俺、今日、眞子との予定あるから、、それに、ここに来たのは眞子も興味あるって言ってたから、なんとなく来てみただけで、深い意味はないっていうか。。。」
恵巳「そっかぁー、残念(*´^`)また永美といる時に会うかもね!」

明は席を立って、お会計を済ませた。

「ご主人様♡いってらっしゃいませ〜♡♡」

ビルの下に降りるエレベーターが来た。
メイドカフェを出てエレベーターに乗り込んだ。すぐにでも眞子に会いに行こうと思い電話するが一向に繋がらない。
焦る気持ちをさらに駆り立てるように、エレベーターはゆっくりと下に降りていった。

ようやく1階に着いて、エレベーターの扉が開いて、外に出たと思ったら、そこはパラレルハウスの中だった。

(あ、、、、パラレルハウス。。)


明はパラレルハウスはどうでも良くなっていた。とにかく眞子に会いたかった。
スマホを探すが、手荷物を預けてることを思い出した。

(!!そうだった。。。)

「アキラくん?」
後ろから聞き覚えのある声がする

明「あぁ、メグ。。。」
全くテンションが上がらない明をメグは心配そうに見つめた。

恵巳「アキラくん、大丈夫?」
明「あぁ、、、大丈夫。。。メグ、、、俺の実家でのこと覚えてるか?」
恵巳「うん。覚えてるよ。なんか、すごく夢中になっちゃったね私たち。。。♡私、アキラくんのこと、、、」
と恵巳が言いかけた時、
明「いや、ホントごめん!!俺、彼女のことが好きなんだ。だから、あの時は勢いでというか、なんというか、、、、」

恵巳「・・・そっか。。いいの。私、別に彼氏欲しいとかじゃないし、、アキラくんのこと責めないよ(^^)」
明「ほんと、、ごめん。。。」


恵巳「ねぇ、あそこに椅子があるから、座って少し話さない?」
明は疲れていたので、少し休憩したかった。
2人はカフェにあるようなテーブルを挟み、向かい合って座った。

恵巳「そういえば、アキラくんの実家行った時、アキラくんの部屋でみた本とかホント凄いなぁって思ったよ。それに羨ましかった。」
明「え?そうなの??」
恵巳「うん、、、実は私、子供の頃、ずっと親からの虐待受けてて。。」
メグの顔が急に暗くなってきた。

「それで、子供の頃はずっと親の顔色ばかりうかがって、何したら親に怒られないか、そんな事ばかり考えてたから、欲しい本とかあっても言えなくて。。。
今は暴力振るわれることはほとんど無くなったけど、それでもいつあるか分からない暴力が怖くて、親が望むような子供でいるために親の前ではなるべく自分を隠すようにしてるの。」
「私の今のメインはライバー。だから、親にバイトはラーメン屋って言って、メイドカフェでたまにバイトしてるだけなんだ。いざという時に親への言い訳の為の保険みたいに、場所だけ確保してるの。
ライバーは少し前から始めたんだけど、時間も自由だし、自分をさらけ出しても、誰にも文句言われないし、逆に色んな人に応援してもらえるから楽しくて、なんとなく始めたらハマっちゃったの♪今は暇があったらマン喫行ってライブばっかりしてる♡♡」
「私、ずっとそんな感じだったから、けっこうメンヘラなの。。大学入って少し自由になって、メンヘラな自分を少しでも変えたくて今は色んなことしてるけど、親からの呪縛みたいなのはぜんぜん解けなくて、、、
今でもたまに死にたくなったり逃げ出したくなるんだ。。将来の自分なんて、全然想像できないし、このまま親の言いなりで生きていくのかなァって思うと、ほんと辛くて・・・こうやって楽しめるのも大学に行ってる間なのかもって。。。」
「だから、アキラくんの部屋に行った時、そっかー、普通はこんな風に自分の好きな物とか部屋に置けるんだぁって思って。。」

恵巳は少し涙目になっていた。
「アキラくんは親からあんなに大事にされてるから、沢山の本も買えたんだと思うし、そういうの大事にした方がいいと思う。」

明はメグが涙目になって話してくれたのをみて、少し胸が締めつけられた。

明「ありがとう。そんな風に感じてくれてたんだ、、、」

恵巳「私は自分のこととか理解されたいとか思わないけど、アキラくんはあんなに親に愛されてるんだから、もっと自分を大事にした方がいいと思うよ。」
「なんかね、就活してないって話聞いた時、何でだろうって思ったの。なんで、やりたいこととか夢とかないんだろうって。。もしかしたら、私とは違って色んなことが当たり前すぎて、幸せがわからないのかもね。」

明は相づちを打ちながら、聞くしかなかった。恵巳の家庭環境や心境が、自分の世界とはあまりにも違っていて全く想像つかなくて、かえす言葉がみつからなかった。

でも、恵巳の言うことに反論はなかった。
自分は確かに、恵まれてる。欲しいものはだいたい手に入ったし、親からも大事にされてるのは感じる。大学にも難なく入れて、東京には親の援助で住むことができている。
兄貴たちとも仲もいいし、友達にも恵まれて、バイトもできてる。
それなのに、気が進まないという理由で就活もせずに、俺は何やってるんだろう・・・

恵巳「ねぇ、アキラくんさ、私のこと本にしてよ!」
明「え!えぇぇ!!」
恵巳「私が主人公の物語でもいいや笑
何でもいいから、なんか私、自分みたいな女子もいることを少しでも色んな人に知ってもらいたい。それで、同じような境遇の子がいたら、その子たちを勇気付けられるような、そんな本書いて欲しいな」
明「あー、そっかぁ、そういうのもイイね。・・・俺、正直メグの気持ちは全然分からないけど、俺の彼女にも相談して、、、あ!そうだ!彼女、芝居してるんだけど、今度彼女に会って、メグのその辛い子供時代からの話、してくれない?」
恵巳「え、良いけどさ、、、明くんは大丈夫なの?だって、私たち、、、」
明「あ💦そうだったな。。いや、まぁとにかく紹介するから、、、あとは俺は彼女から話を聞くようにするから。。。」
「それにメグのこと書くのに、この先あんまり彼女の知らないところで、メグと2人で会うのは気が進まないから、、、」
恵巳「なら、どこかのカフェで改めてだね。永美は呼ばない方が良い?」
明「それは好きにしてくれ。俺はすぐに居なくなるから。😅」

そういえば、ここはパラレルハウスだっけ・・・
2人は席をたつと、2つの扉があらわれた。

明「どっちに行こうか、、、」
恵巳「なら私はこっち。アキラくんはそっちに行って。」
明「わかった。なんか永美に似てるな笑」


2人は別々の扉を開けた。


扉をあけると、そこは暗闇だった。
明は暗闇の中を少し歩くと、眩しい光とともにシャッター音のような音が聞こえた。


そして、少し離れたところに見える出口のようなところに向かって明は歩いていった。


*****

黒服「お疲れさまでした。パラレルハウスはいかがでしたでしょうか?お預かりしているお手荷物を持ってきますので、番号札を頂けますでしょうか?」

明は何が起きたのか、わけも分からないまま、ポケットにあった番号札を黒服に渡した。

黒服「少々お待ち下さい」

しばらくすると、黒服が手荷物が入った袋をもってあらわれた。

黒服「お待たせしました。こちらがお預かりしていたお手荷物になります。お連れさまが戻るまで少々お待ち下さい。戻られましたら、お帰りになって構いません。本日はパラレルハウスにご来館いただきまして、ありがとうございました。」

黒服はそれだけ言うと、どこかに行ってしまった。

明は目の前にあったトイレに行き、さっきの場所に戻るとメグがいた。

恵巳「あ!アキラくん♪(^^)」
明「おぉ、メグ!」
恵巳「なんか、外雨みたいで、黒服の人から傘もらったよ」

2人がパラレルハウスを出ようとした時、明の電話が鳴った。

電話は眞子からだった。

明「ごめん!彼女から電話だ!悪いけど、俺少し話してから帰るから、ここで🙏」
恵巳「あーそっか。じゃあ、またね!」

恵巳は黒服にもらった傘をさして、少し明るくなってきた雨の街をひとり歩いて帰った。


眞子「もしもし〜。明?ごめーん、昨日の夜電話してくれてたんだね(⊃ωー`).。oOアワアワ」
明は眞子の声を聞いて、安心したと同時に、すぐにでも会いたくなった。。


おしまい♡♡

*****

前回の記事はこちら

恵巳(メグ)編だけを集めました⤵︎⤵︎⤵︎


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