だからこの本は芥川賞なんだ。途方に暮れるよう、納得した
どうしよう。主人公の気持ちが分かってしまう。
読んだとき、とっさに思いました。
その本とは、こちら。
イギリスにて日本文学が流行しているそうで、特にこの「コンビニ人間」が読まれている。そんなニュースを知り、手に取りました。
芥川賞だから敬遠してたんです。きっとわたしには理解し得ない、純文学で。難解な日本語が並んでるに違いない。
ううん、勘違いでした。しごく読みやすい。当直の準備で慌しかったはずの昨日なのに、時間を作ってでも読みたいほど、先が気になる小説。厚さは薄めです。
読んでて清々しいのか。これがまた、全然。主人公は奇怪な感覚を持ち合わせてる。主人公自身も認識してるけど、何がどうあれば、正常なのかが分からない。マニュアルに準じることで、世の中の一般と己を合わせようとしています。
本人には全く悪気がない。自分が異質に区分されることも、なんとなく気づいてる。じゃあ、どうしたらいいのか。肝心な部分が抜け落ちたように、さっぱり見当がつかない。
どうかわたしと離れた価値観であれ。そう願う人物像のはずなのに、刺さってきて。主人公もわたしも、互いに普通の仲間入りを目指してる。
もしやわたしも、他者から見れば異分子なのかな。不安で胸がざわつく。
主人公とわたしの決定的に違うところは、他者へわかってもらおうとする衝動を持ってるか否か。主人公には焦りがなく、傍観してやり過ごしてもいて。「あー、これでどうも社会で言うところの“普通”らしい」。そんな風に眺めてる余裕がある。
対してわたしは、なんとしても分かってもらえる存在になろうて躍起。焦燥しかない。
「○○ができる、△△がわかる」、「ね?あなたと同じ側にいるよね? こんな感じで生きてていいよね?」
社会という名の外側にいる誰かに、私はこんなにも認めてもらおうとしてる。必要性を感じてもらおうとしてる。
うわっ。気づきたくなかった。でも、ある、持ってるよ。頭を抱えるように、自分の底にあった思いと対峙です。
わたし個人の感想は、モヤっとする本。モヤっとするから、何度も読み直し、その都度に抗いたい。ちゃうねん、わたしはちゃうねん。こんな人じゃない。
自分を奥底まで考える小説。だから芥川賞なんだ。ひとり納得してるのでした。
では また
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