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フォント「はんなり明朝」をリニューアルしてみた

こんにちは、Typingart & Co. の中井といいます。普段は電車の運転、たまにフォントの制作をしています。

2021年3月、和文フリーフォント「はんなり明朝」を約8年ぶりにリニューアルしました。ウェブで配布を始めてからかなり経ちましたが、拙いフォントながらも各所で使っていただき、ありがたい限りです。

ですが、各種媒体で見かける度に、細かいところの粗が目立ってしまい、直したいなー、直したいなーと常々思っていました。

はんなり明朝コンセプト

はんなり明朝は築地体を参考に「やさしさとしなやかさを併せ持った、どこか懐かしさのある文字」をコンセプトに制作しました。「はんなり」という言葉どおり、落ち着いているけれど、文字を組むと線の強弱や墨だまりでリズムを感じられる…上品と陽気が相容れるような、そんな書体です。本文ではなく、題字や見出しで使うと魅力が増すかと思います。リニューアルは、上記コンセプトを基本におさえながら、大きくは変えず、細部を詰めていく感じで進めていきました。

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アンカーポイントを少なく

ベジェ曲線を修正。旧書体の制作当初は、イラレ初心者にありがちな、アンカーポイントをとにかく打ちまくるという沼にはまってしまいました。そのため、アンカーポイントを最小限にしました。フォントをアウトライン化して、パスを表示しないと分かりませんし、わずかな違いですが、より自然な曲線になったかと。

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アンカーポイントの少なさについては、データが軽くなるメリットもありますが、何よりフォントワークス・藤田重信さんのツイートに感銘を受け、美学を感じたことが、大きく影響していると思います。

狂気すら感じます 笑
下の画像は新旧の比較です。違和感のある筆運びも直してみました。

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角うろこを無くす

明朝体の筆意をあらわすものに「はね」「はらい」や「うろこ」があります。筆を留めて方向を変える箇所は「角うろこ」と呼ばれています。はんなり明朝のやさしさを求めるなら、カタカナの「角うろこ」を無くしたらどうかなと考えました。ただ、明朝体でうろこを完全に無くすのは違和感があるので、若干膨らみを残しています。

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源ノ明朝の派生フォント

旧はんなり明朝はひらがなとカタカナを制作し、他の漢字や英数字、記号などはオープンソースであるIPA明朝で補ったフォント(以下派生フォントと呼びます)です。「補う」と一言では言えないくらいIPA明朝に依存したフォントで、制作者や組織の方々には感謝しかありません。

しかし、IPA明朝のライセンスは個々の判断に委ねる解釈がいくつかあるため、派生フォントの配布にあたって、WEBフォントやプログラムに埋め込む際にどう対応すればよいのか、問い合わせが数多くありました。今回のリニューアルでは、ライセンス明示をすれば埋め込み可能な源ノ明朝を利用させていただき、派生フォントとして制作をしました。源ノ明朝を制作された方々、組織の方々に御礼を申し上げます。ありがとうございます。

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というわけで、8年ぶりのリニューアルです。

どうぞお試しください!近々はんなり明朝Boldも公開予定です。


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