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深夜のスタジオ

昔はよく通った音楽スタジオもこの頃はあまり行かなくなった。

20代前半のころまでバンドなんかを組んで遊んでいたことがあった。
メンバーの年齢はほとんど変わらないのに、大学生2人とフリーターとサラリーマンによるおかしな4人組みだった。
そのうちにみんな社会人になって、ある日、メンバーのひとりが唐突に「やっぱ東京に行きてえ」となって終わった。
いつも終わりはあっけないもの。

あれから10年くらい過ぎた。
今では休みの日、なーんにもやることがない時なんかにおもむろに電話をかけて予約をとる。
昼間はほとんど空きがないから、いつも時間は24時から26時とか。

お気に入りのストラトキャスターといくつかのペダルをたずさえて、大音量でギターを弾くんだ。
ひとりで。
寂しくなんかない。
思い出ががあればそれで十分。

昼間は愛想よくせかせかと働いているスタッフも喫煙所で馴染みの客といつまでも雑談したまま片づけにも来ない。
そうそう、この気怠い感じ。
音楽スタジオ特有の空気が深夜になると降りてくる。
むかしはどこのスタジオもこんな感じだったけど、最近はどうなんだろうか。

スタジオの前にあるガストは変わらず今もある。
変わったことは営業時間くらいか。
深夜にみんなで寄ったのにな。

動物園だって今もある。
そりゃそうか。
みんなで展望タワーに登ったことを思い出した。
あれ以来、登ってないな。
そりゃそうか。

帰りに24時間営業のマクドナルドへ寄った。
あの頃はハンバーガーを腹一杯食べて帰ったりもしたけど、今じゃ、ホットコーヒーを一杯飲むだけ。
歳をとったねえ、俺も。

こんな深夜でもここのマクドナルドにはたくさんの客がいて、そのほとんどが大学生ばかり。
みんな部屋着のままコンピュータに向かって、ひたすらレポートを仕上げているようだった。

大変だね、学生さんは。
そんな彼らを横目に、明日は何時に起きようかなと考えながら店をあとにする。
帰りみち、アラームを鳴らそうかと辞めようかと考えた結果、鳴らさないことにした。
翌日、丸一日無駄にしてしまったったと後悔するのにね。

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