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ファンタジー小説で「ズボン」を漢字で表現したい

ファンタジー小説と一口に言っても色んな種類のものがありますが、私が特に好きなのは、子供の頃に読んだ翻訳ファンタジーのかおりが感じられるもの。「ここではないどこか」をたっぷりと味わえて没頭できる、懐かしのファンタジーです。

あの雰囲気を踏襲したくて、私はファンタジー小説(特に技術レベルが近世以前のもの)を書く際は、できるだけカタカナ語を使わないようにしています。カタカナ語って和語や漢語に比べて新しいものが多いから、単語によってはいきなりそこだけ近現代な色合いになってしまうんですよね。

一例を挙げると、森と鉄の世界を舞台に重苦しい悲劇を描くとして、火事の場面で「バケツリレー」って単語は使いたくないな、とか。

バケツリレーって聞くと、プラスチック製の青いバケツが頭の中にポップアップしませんか。私はします。産業革命もまだ興っていない世界に青バケツとか、オーパーツですやん。それまでコツコツと積み上げてきたシリアスな雰囲気ぶち壊しですよ……。

前置きが長くなりました。
そういう「マウント・ドゥーム」じゃなくて「滅びの山」と書く路線でファンタジー小説を書いていて、以前から「ズボン」をどう書き表したものか悩んでいたんです。
厚手の上着、襟のある上衣、ときたら、ズボンも漢字で表記したい。いやまあ、バケツリレーに比べたらズボンなんてかわいらしいものですが、地名と人名以外カタカナが見当たらない文面でいきなり「ズボン」と登場すると、やっぱりちょっと「おお?」となります。

で。
最近「脚衣」という言葉を発見したので、広く共有したいと思ってこの記事を書きました。
言うて、ツイッタで「脚衣」を検索すると、何人もの人が当たり前のようにこの単語を使っておられるのが見つかるんですが、私は今回初めて存在を明確に認識したので、「なんだお前今まで知らなかったのかよ」とお思いの方はスーッとスルーしていただければ幸いです。まだこの言葉に出会っていなかった人向けの記事なので!

まずはコトバンクの、『世界大百科事典 第2版』の記述から。

腰から脚部にかけて左右別々に覆う西洋式脚衣(スラックス,パンタロン,パンツなど)の総称。語源は明らかではなく,はくとずぼんと足が入るところからそう呼ばれたともいう。またフランス語の〈ジュポン〉に由来するともいう。しかしジュポンjuponは,16世紀以来スカートにあたる〈ジュープ〉が女装として定着するにつれ,もっぱら女性用の下ばき(ペティコートの類)を指すようになったから,語義上の関係はない。

コトバンク【ズボン】

次は、語源由来辞典より。

【パンツの語源・由来】
パンツは、英語「pants」からの外来語。
英語の「pants(パンツ)」は、「脚衣」「ズボン」を意味する「pantaloons(パンタルーンズ)」の短縮形。
「pantaloons(パンタルーンズ)」は、「パンタロン」の語源にもなっている語で、昔のイタリア喜劇やパントマイム劇に出てくる痩せこけた老いぼ役の「Pantaleone(パンタローネ)」が、細くて長いズボンをはいているのが印象的であったため、「パンタローネ」という役名から「脚衣」を「パンタルーンズ」と呼ぶようになった。

語源由来辞典 パンツ/pants

(以上、双方ともに文字強調は引用者が追加)

見つけた瞬間「コレダ!」と膝を打った、この喜びをどうか分かち合っていただけたら。
多くの人にこの言葉を知ってもらえたら使いやすくなるなあ、なんて打算も入りまくっていますが、是非「脚衣」をよろしくお願いいたします!!


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