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どんなに頑張っても、「こころ」は望んでも手に入れられないものだと思う

1.「こころ」は持とうと思っても持てないものだと思う

 歴史が始まってから、いや歴史が始まる以前から人は「こころ」について考えてきたと思います。
歴史が始まってから(歴史とは文字が成立した以降を指します)、人は自身の考えを書物として残し、それを基に今に至るまで様々な学者の方達が今まで考えてきています。

ではそれがわかっているかといったら、私には今でもわかっていないような気がします。
せいぜい「〜すべきではない」と人に強要しているだけのような気がします。

それぐらい難しい、いやもしかしたら分からないのかもしれません。

ではそういう「こころ」を持った人がいないかと言ったら、私はいると思っています。
そもそもお金に全く興味のない人、ただ人を助けたいだけの人、そして一番は人に助けられている人だと私は思っています。

2.頭で考えれば考えるほど失われていくと思う

 なぜこんな事を書こうかと思ったのは、ふと『アルジャーノンに花束を』を思い出したからです。

主人公は知的障害者です。
彼は虐められていても仕返しはしませんし(そもそも虐められている事を理解できていない)、ただ純粋に生きようと働き、頭も良くなりたいと障害者向けの学校に通って勉強もしています。

ある時彼に頭を良くする手術を受けるチャンスが訪れ、彼はその手術を受け、見事成功します。
それから彼は飛躍的に知能が伸び、虐めていた人に仕返しをし、大学で勉強を始め、目覚しい考えを発揮することができるようになります。

では彼はどうなかったかというと、彼は自分より頭の悪い人間を馬鹿にするようになり、どんどん自分の頭の良さに固執し、自分で新しい理屈を考えようと邁進します。

しかし手術は不完全で、彼は次第に知能がどんどん下がっていき、最終的には元の状態に戻ってしまいます。

3.社会の片隅に追いやられても、そこで住みことを選ぶ人もいる

 私はこのことをホームレスの方にも感じます。
彼らは社会で働けなくなって、仕方なくホームレスになってしまった人たちです。
しかし彼らの中には、ホームレスという生き方を自ら辞めようと考えていない人もいます。
いくらシェルターや仮の施設への入居を勧めても拒む人もいます。

彼らは世間を恨んでいるでしょうか?
私にはその辺は分かりません。

時々ホームレスの人を集団で暴行したり、あるいは殺害するまでの事をする事件を時々目にします。
しかし逆にホームレスの人が集団で誰かを襲って、金品を奪うといった事件は私の知る限りは知らないですし、覚えの中にはありません。

ただ炊き出しを頼り、空き缶を集めたりしてお金を稼いで、それで食べ物やらタバコやらお酒やらを望むだけの事しか考えていない気もします。
生きるための食料と、少しの楽しみさえあれば何も望んでいないように思います。
そして今の凍える寒さの中(2021年1月3日)、どこかの片隅で寒さをしのぎながら生きていると思います。

4.望まない人の中に存在しているように感じる

 私が言いたいことは、「こころ」を望まない人の中にしか「こころ」があるのではないかということです。
良い人になりたい、社会貢献をしたい、困っている人を助けたい、そういう人たちの願いは立派だと思いますし、実際助けを受けなければいけない人たちはそういう人たちの助けのもとでやっと生きていけます。
でもそういう人たち、「〜したい」「〜になりたい」という気持ちの中には、私の見る限りではほとんど見られないです。
本当にこころから純粋に困っている人のそばにただ寄り添う人の中には見られることはあります。

障害者の中にも何人か垣間見られます。
変人扱いされ、異端者扱いされ、社会のお荷物扱いにされ、挙句に犯罪者予備軍のように怖がられています。
じゃあ彼らが社会に対して憤るかといったら、「こころ」を持った人はそんな考えは全くないように感じます。
いくら虐められようが、社会に受け入れられなくても、気にしない(そういう事が考えられない・考えようともしない)、ただ純粋に生きることを喜んでいますし、彼らの笑顔に一片の曇りも無いです。

楽しいからではない、嬉しいからでもない、ただ笑顔になる、その中に私は「こころ」を感じます。

5.最後に

 『アルジャーノンに花束を』の最後のシーンを思い出します。
手元に本が無いので正確かどうかは分かりませんが、確かこうだったと思います。

主人公は知能が元の状態に戻り、何も考えられず、昔のようにまた障害者向けの学校に足を運びます。
そこで昔から主人公の事を思ってくれていた先生に授業で会います。
彼女は以前の彼も知っていますし、頭が良くなった経緯も知っています。
彼女は昔から、彼が真面目に勉強に取り組んでいることをとても評価していました。

そして主人公は先生に出会い、満面の笑みを浮かべます。
彼女はその笑顔を見て、涙を流します。

彼女は彼がまた元の状態に戻ってしまったことを嘆いて泣いたのでしょうか?
私はそうは思わなかったです。
彼の存在、彼女はただ彼がいてくれるだけで嬉しかった気持ちもそこにはあったように思います。
私はその中に「こころ」を感じました。

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