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私の幸せなひと時 #シロクマ文芸部

食べる夜。
私はテーブルに並んだピザやらフライドチキンやらハンバーガーやらポテトやらを次々と平らげていく。
どうせあとでトイレで吐き出すのだから良いのです。

私がこうなったきっかけは高校生の頃に好きだった人から「おまえものを食べる時だけすげー嬉しそうな顔してるな」と言われたこと。
それから私は人前でものを食べることができなくなってしまいました。
その代わり、家に帰ると纏めて食べてしまうようになったのです。
そして私はぶくぶくと太り始めました。
これではいけないと思い、一度にたくさん食べるのは止めようと決めたのですが、ストレスで体調をくずしてしまいました。
そこで、食べても飲み込まなければ良いのではないかと気付き、トイレで戻すようになったのでありました。

そんなある日、会社の謝恩会が中華料理店で行われ目の前にたくさんのご馳走が並びました。
しかし大勢の人も並んでいるため、その食事に手を伸ばすことはやはり出来ずにおりました。
周りの同僚からは、食べないの?と心配されましたが、適当な理由をつけてはごまかしました。
なるべく料理は目に入れないようにして会話に集中するようにしていたのですが、体は正直です。
隣に座る3つ年上の先輩と話している時に突然お腹がギューっと鳴ってしまったのです。
私はその先輩のことを密かに慕っておりましたので、とても恥ずかしくなり火が吹き出しているのではないかと思うほど、顔が熱くなりました。

すると先輩は「ダイエットしてるんだね、でもね食べたい時は食べた方がいいよ」と言って私の取り皿に小籠包を取ってくれたのです。
私はもう断るための言葉を見つけられず、意を決して小籠包を口に頬張りました。
「熱くない?」訊ねる先輩に私は頷いて返事をしました。
口に広がる旨味に自然と顔がほころんでしまいます。
「そうやって美味しそうに食べる表情、とってもかわいいよ」
先輩に言われたその言葉で、私はまた湯気が出るほど顔を真っ赤にしたのでした。

それから毎日のように先輩からランチに誘われるようになり、私は夜の爆食いをしなくなりました。
そして今、先輩と一緒に食べる食事を私は幸せな気分で作っています。



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