深淵

人生で一番、しんどかったのは小学生高学年だった。

なんてことはない。小さないじめがあった。
少し前まで仲の良かったグループの友人に
ある日から突然無視をされるようになった。
遊ぼうと近づけばよくわからない掛け声を合図に
まさに蜘蛛の子を散らすように逃げられ、
給食の時には班員に目の前で悪口を言われ、


運悪く、家庭環境にも少しトラブルがあった。
父が浮気をしたか、家に寄り付かなくなった。
そのせいで母は荒れ、日々の鬱憤の吐き出し場所に
私を選んだらしくことあるごとに
「なんでこんな子に育っちゃったんだろう」
そう言われた。

大したことじゃないと、わかっていた。
世の中にはいろいろな人がいて
物理的ないじめを受ける人もいる。
親に捨てられてしまったり、
殺されてしまったりする人もいる。
だから、当時の私はその環境を苦しいと
思わないようにしていた。
こんなことで苦しんでいたら
長い人生生きていけないと思ったし、
本当に苦しい人に申し訳ないと思ったから。

ただ、どうしてもどうにもならないとき、
少しだけ自分を傷つけた。それだけ。

20歳もとっくに過ぎた今、
あの時に歪んでしまったなにかをひしひしと感じる。
自傷の期間はほんの1年くらいで、
幸いキズも綺麗に消えた。
見た目ではもう私が自傷をしていた事実は
どこにも残っていないし、
今交流がある人たちは親を除いて私の自傷を知らない。
ただ、今でも自傷の誘惑は心の奥底に住み着いている。
暗くて重たくて、束の間の快楽を味わえる場所。


多分名残は今でもあって、苦しいことがあると
食事と睡眠をとるのをやめてしまう。
別に時間を惜しんで頑張っているわけじゃない。
自分を雑に扱う以外、
この苦しみから逃れる方法を知らないだけ。

「自分の心配を無碍にしないで」そう言ってくれる人がいて
初めて自分の中の暗い場所を覗き込む勇気が出た。

この小さな一歩を記念して。
心のリハビリ投稿でした。

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