お腹がすいた。

会社を休んだ。

もう2ヶ月ほど前から体はおかしかったけれど
だましだましやっていたものだから
ついに無理が祟ったか、動けなくなった。

理解のある職場で、
数日休みをもらえることになったけれど、
やることもなく、
ただぼーっとベットに横たわる。

そうしたら、職場から連絡がいったか、
両親が片道5時間もかけて
一人暮らしの家まで来てくれた。

あれよあれよと
病院に連れて行かれたけれど
病名なんて出ずに、
また家に帰ってベッドに横たわると、
次にハッとした時には
乱雑な部屋が片付けられ
野菜だらけの食卓が用意されていた。

「食べられるだけでいいから」と言われて、
お米を少しと、インゲン、梅干しを食べて
そこで力尽きてまたベットに戻る。

うわ言のように
ぺらぺらといらない話をしながらも、
私はつい最近ちゃんと食事を取ったのがいつか、
そしてそのとき何を食べたのか、
思い出せない自分に気づいていた。

母親は「お米くらい買っときなよ」
と言ったけれど、
いつからお米がなかったんだろう。
よく思い出せなかった。

そうやってまる2日休んで、
ようやっと「お腹が空いた」と思った。
食べることがものすごく好きだったのに、
この感覚がひどく久しぶりな気がした。

洗い物を増やしたくないから
包丁ではなく調理鋏と電子レンジだけで
料理を作ったり、
うらっ返しのまま洗ってしまった洗濯物を
干すタイミングでひっくり返して腕が冷えたり、
掃除機をかけようとしたら充電がなくて
クイックルワイパー済ませてしまったり。

お世辞にも「丁寧な生活」と言えるような
上等な何かはなかったけれど
私は私なりに、
ところどころを端折ったそんな生活を愛していて
それなのにいつからかそれらを
全くこなせなくなっていた。
そしてそのことに気づいてすらいなかった。

同じように本を読むこと、文章を書くことも
とてもとても好きだった。
そのことを思い出したからこうやって
殴り書きだけど文章を書いている。

ひとはたぶん、限界に近づくとそうと気づかず
好きなものをどんどん手放していってしまうのだと思う。

文字にして、形にしておかないときっと
私はまた忙しさの波に呑まれて
やっと気づいたこういう大切なことを
また忘れてしまいそうだからちゃんと記します。

明日は何をしようかな。
明日を楽しみにできることがいかに素晴らしいことか。
忘れてしまいそうな人に届きますように。

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