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◆遠吠えコラム・大河ドラマ「どうする家康・第1話『どうする桶狭間』」、初っ端から大ピンチ、名将続々登場の豪華絢爛第1話(※画像はドラマ公式ホームページより)

 大河ドラマ「どうする家康」がとうとう始まった。第1話のタイトルは「どうする桶狭間」。「桶狭間」は、1560年、尾張の織田信長が駿河の今川義元を討ち取った、世に名高い桶狭間の戦いのことだ。実は家康も桶狭間の戦いに今川軍として参戦していて、敵陣の最前線で義元討ち死にという青天の霹靂の報を受けている。勝ち戦でイケイケだったところから、敵陣深くの最前線で孤立してしまうという大ピンチに直面している。

 第1話は、結論から言うと、「桶狭間」の看板に偽りなしの豪華絢爛な回だった。名将たちも次々登場し、初っ端から大盛り上がり。鑑賞後間もないご機嫌の遠吠え行ってみよう!

【トラウマ級、大河史上「最強」の織田信長の登場シーン】

 第1話で一番しびれたのは、なんと言っても織田信長登場シーンだ。信長を演じるのは、今やアクション俳優として名高い岡田准一。下から上へとなめるように映し出されるショットで馬にまたがる岡田准一の鎧姿が見えた時は、キャーっと悲鳴を上げたくなるくらい興奮した。だが、歓声もつかの間。信長がおもむろに掲げた槍の先端に括り付けられた今川義元の生首が映し出され、キャーという歓声がギャーという悲鳴に変わる。

 桶狭間の戦いで織田信長は、精鋭部隊2千を率いて、その何倍もの規模の軍を率いる今川義元を討ち果たしている。大高城での松平元康(後の徳川家康)の戦勝などで沸き立っていた今川軍の油断に目ざとく漬け込み、戦線が伸びきって手薄になった本陣をあっという間に襲いかかり、今川義元を討ち取ったのだとか。本陣が手薄だったとはいえ、尋常でない武力や胆力がなければなせない業だろう。

 岡田准一は、ドラマ「SP」(2007年、フジテレビ)でアクション俳優として覚醒した。数々のドラマや映画で人間離れしたマーシャルアーツを披露している。そんな岡田准一が演じるからこそ、当代随一の武将今川義元を打ち破った織田信長のジャイアントキリングは説得力があった。なんなら、本能寺の変でワンチャンサバイブして、逆に明智光秀殺してしまうのでは?信長登場シーンだけ見ても、「『どうする家康』面白い!」と言わしめる強度だった。

【効果的なシーンによる人物描写】


 信長のシーンに象徴されるように、登場人物の人となりを台詞以外で効果的に表現するのが上手かった。生首を掲げるシーンは信長の残虐性をよく表していたし、主人公の元康が織田家で人質として過ごしていた時代の信長との記憶を思い出して手が震えてしまう場面なども、信長の恐ろしさを巧く補強していた。

 他にも、今川義元が最前線で戦う元康に金色の具足を与えるシーンでは、元康がただのみじめな人質ではなく、破格の扱いを受けていたことを表している。金色の具足は実際にはもっと後の時代に家康が着用したものだが、久能山東照宮の義元から与えられたという伝承を反映しているところもすばらしい。しかも、「鉛を通さない」という今川義元の台詞も、三河一向一揆で具足の硬さから命拾いした逸話を射程に置いていて見事だ。しかし直後には金色の具足は目立ちすぎて戦場では不向きというデメリットが露呈するシーンが差し挟まれる。あげてからの落とす演出もコミカルで面白い。台詞やナレーションに頼らずとも、キャラクターの人となりや関係性を端的に表現しているから、ストーリーのテンポが良くサクサク物語が進んで見やすい。

 物語のテンポが良いから、登場人物が次々と出てくる。第1話はなんとあの、武田信玄まで登場した。台詞はかなり少なかったが、武田信玄を知らない人でも、コイツ絶対強いじゃん、と思わせる説得力が外見からにじみ出ていた。役者からにじみ出る風格も、台詞に頼らない演出を大いに助けていたと思う。

 一方で、脇を固める俳優の円熟した演技力に比して、松本潤の演技の拙さがどうしても気になってしまった。桶狭間直後には世話になった今川家を見限るという複雑なライフイベントが待っているが、どう演じる?松本潤。
(了)

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