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『HEY!OHISAMA!』という日向坂46の曲に問いたい。”スター”とは何かを。

ダサすぎる。ふだん日向坂46に関しては冠番組『日向坂で会いましょう』を愛好しているわたしだが、楽曲に関しては趣味が合わないのかまったく親しんでおらず新曲がリリースされても一周聞いてそれっきりで記憶に残らないことが多い。しかしこの『HEY!OHISAMA!』については、思わず身体が動いてしまいそうになるブラスが効いたサウンドに「ノリがよくて結構いいじゃん、ライブで聞いたら楽しいやつじゃん」と珍しく波長があってお気に入りの曲になりかけた

「ん?いま”ちゃんと応援してね”って言った?」

台無し。時々炎上する「男は女に奢るべき論」とおなじこと言ってる。そんなこと日向坂に言わすなよ、せっかく好きになりかけたのに。歌詞は読まないと理解できないので改めてさらってみるとこれがとにかくダサかった。歌詞人格が甘ったれている。表現が直接的過ぎて全体的にうっすらスベってる。こんなもん他人に歌わすな。この曲の致命的な欠陥は披露するパフォーマーに宿す品性を歌詞によって著しく欠落させてしまっているところにある。

この曲はライブでお客さんと一緒に盛り上がるためのアンセムを想定して制作されている。先にも述べたようにサウンド面では十分な出来である。歌手に限らずわたしがパフォーマーに求めるスタンスは①開けている。お客さんを限定しない。②堂々としている。変に媚びない。であり、この2点を守ることでパフォーマーとして品性が宿ると思っている。

ライブに来るのはファンはもちろん、友人や子供孫に誘われたりなんとなくで参加する場合もあり、会場にいるお客さんが全員ファンとは限らない。お客さんに呼びかけけるのにライブ会場にいるからって開口一番「HEY!OHISAMA!(おひさまはファンの呼称)」と既成事実で丸め込むのはすこし乱暴で、わたしがたまたま参加した人なら「いや別に俺は違うんだけどな」とすこし引っかかってしまう。タイトルはともかく歌詞の「HEY!OHISAMA!」呼びかけはいらない。

日向がどこに 突然現れようが
絶対見つけて ちゃんと応援して欲しい
(中略)
この次はいつ会えるか分からない
後悔ないように死ぬほど騒ぎましょう

日向坂46『HEY!OHISAMA!』

少なくともわたしは、ステージに立つ人間には「わたしについてこい」と頼もしくあってほしい。

わざわざ時間とお金をつかって会場に足を運んでライブを見に来てもらってるのだから、下手でも虚勢でもいいから自信満々な姿が見たい。「応援してね」くらいなら可愛いものなのに、”ちゃんと”、”欲しい”とヘタレた保険かけている。ライブ開始から血眼になって見つけてちゃんと応援してるから心配しないで。挙句の果てには「次はいつ会えるかわからない」だって。知るか、こっちはチケットの抽選をクリアしなくちゃならねえんだわ会いたくても会えないんだわ。「死ぬほど騒ぐ」って中学生みたいな語彙もなんか冷める。なんというか、部屋を片付けようとしたらお母さんに片付けなさいって言われた時の挫かれ方に似てる。

さっきのファンの限定にもつながってくるけど、”タオルうちわにペンライト ここにいるよって(アピールして)”って箇所もなんか販売促進みたいでイヤだ。メンバーにアピールしたり、音楽に合わせて体揺らしたり、じっと聞き入ったり、ライブの楽しみ方は人それぞれなのにまるでアピールこそが正義とでも言わんばかり。器がちいさい。大勢のスターを抱えるグループがこんな器のちいせえ歌詞を歌っては見かけ倒しではないだろうか。

久しぶりに会えたのよ もっと盛り上がって

日向坂46『HEY!OHISAMA!』

一番気に食わないのがこの部分。盛り上げるのはあなたたちの仕事でしょう?わざわざお願いしないと盛り上げられないの?合コンでカラオケ来てるんじゃないんだからさ(筆者は合コンでカラオケに行ったことはほとんどないため実態は不明)。お客さんを盛り上げるために歌やダンスのレッスンしたり、セットリストや演出考えたりしてるんじゃないのか。プライドはないのか。敗北宣言に等しい禁句だぞ。さっきは「騒ぎましょう」って呼びかけられたじゃん。どうしたのさ。

他にもいろいろ気になる箇所は山ほどあるけどキリがないのでここまでにする。改めて読んでも、ライブでお客さんを巻き込む想定をして制作された楽曲にも関わらず、自信なさげで器量狭く甘ったれたダサいスタンスの歌詞人格、そしてこれを披露することによってパフォーマーの価値が著しく損なわれる曲だなという印象は変わらなかった。

曲は本当にいいのになあ。勘違いしないでほしいのは、本稿はあくまで歌詞について言及しているのであって、歌い手である日向坂46は歌わされているだけであることをご理解いただきたい。

おしまい。


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