初恋を叶えたわたしの悪夢見心地
たとえばご飯屋に行った時、ご飯を茶碗に盛るとする。その茶碗をわたしはお膳の右手前に置く。
ふと記憶がよみがえり、彼女とご飯に行った時、ご飯を左手前に置かないことをよく注意されたのを思い出した。和食の配膳においてご飯は左側・お味噌汁は右側というのが基本マナーであり、きちんとしていた彼女はそれが気になるのでしかめ面でよくわたしを注意してきた。断っておくと、わたしは左利きである。だからご飯が右側にあるほうが食べやすい。マナーというものは相手が気持ちよく過ごしてもらうための気配りなんだから、左利きの人が相手ならばご飯は左だろう、と思ってたし、伝えたし、思っている。
当時は注意されるごとにいなしながら意固地にご飯を右側に置いたり、とは言えマナー違反であるのも居心地が悪いので配膳の時だけはご飯を左側においたり、時々で配膳を変えていた。基本的にだらしない人間だし、運動部の粗野な環境に身を置くことが長かった(言い訳がましいが)ので、こういった細かい所作やマナーについては彼女の方が正しいことが多かったので、基本的にはその教えに倣い、従っていた。そういえば茶碗を持つ時に指を揃えないで、包むように持ってるのも注意されたっけ。
当時は気にもしながったが改めて調べてみると、ご飯を左側に置くようになった理由は「”左優位”という伝統」と「右利きが基準」だからだそう。主たるもの・尊いものを左側に配置する慣例があるらしい。左が尊いと言われるとまんざらでもない気持ちになって、ご飯を左側に置くくらい許してやるかと寛大になれそうだ。
こんな話を持ち出して、手垢まみれの左利きあるあるを披露したり、あれは彼女のモラハラでは?と告発するつもりは毛頭ない。最近なんだか作文に対して固くなりがちだったので、ただこんなことがあったのを思い出しましたとさ、ってなんてことない話がしたかっただけである。ついでだから、最近見た悪夢についても聞いてほしい。
歌手やアーティストがライブ前に、歌詞を忘れたり舞台から落ちたり衣装を着ずに丸裸で登壇したりなどの悪夢を見るとラジオでよく聞くのだが、わたしにとっての悪い夢は「足が遅くなる夢」と「片思いしてた女の子が自分の事を好きになる夢」の2つある。高所から落ちたりなど生命の危機に瀕する夢も見たりするがこの2つが段違いに恐怖を感じる。
前者は金縛りのように硬直した身体の感覚が気味悪く、この前はスモッグきた幼稚園の子に抜かされた。運動経験が長く運動神経にもそこそこ自信があるがゆえに、生きてきた分の人生をまるまる奪われたように感じてしまうので、起きた時に心の底からホッとする。
しかしダメージで比べると後者の方が傷は深い。その子は漫画のホレ薬を飲んだかのようにわたしにメロメロになってくれる、一見して良い夢のようにも思えるが、小学生や中学生時分の実らなかった片思いを空想の中で成功させたがってることを知ってしまう、深層心理への自己嫌悪がキツい。いい大人になったんだからモテとか気にしてないですよ面して生活してるのに、まだ引きずってやがるのかと洗面台の鏡に映るこいつに辟易する。こちらはこれから生きる自分が不安になってくる悪夢である。
他人の夢の話ほど退屈させるものはないので、ここらで終いとしよう。文脈的に彼女がマナーに厳しいかったというのが悪夢だった、みたいに捉えられそうだが彼女の名誉の為にもそれは断じて無いと一応言っておく。とりとめない話をここまでお付き合いいただきありがとうございます。矛盾するようだが、あなたの悪夢が知りたい。ぜひ教えてもらえるとうれしいです。
最後に悪夢を見たときに思いついた単語を文末に添えて結びとする。
悪夢見心地≪あくむみごこち≫
おしまい。
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