見出し画像

『地域』を楽しみどう働くか 「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる」に刺激を受けた話

「地域の面白いクリエイターさんやお店を紹介してもらえますか?」

雑誌の方や、地域クリエイターと協業をしていきたいというお店の方から、そんな質問をこの頃立て続けにいただいた。

もちろん面白いことをやっている方は何人も想像できて、あの人もこの人も紹介していたのだけど、「地域」というワードをきくとなんだか後ろめたさを感じることがあったりもする。
うちのお店がある場所は、いわゆる「問屋街」
倉庫が多くて、そこに住んでいる人がたくさんいるというわけじゃない。
そもそもお店の場所まで毎日30分かけて通勤しているから住民というわけでもないし、「地域に根ざす」という言葉があるけれど、そういった意味ではそこまで根ざせていない。それが誰に責められるわけでもないのだけど、心のどこかでモヤモヤっとすることがある。

更に来年には、電車の駅が近くにできる関係で、お店の隣りにあった駐車場もマンションにするための工事がはじまったり、急速に倉庫街から「住む場所」に表情を変えつつある場所で、地域とどう向き合っていくのかを考えなきゃいけないなと漠然と悩んでいた。

画像1

そんな時に、面識のあるデザイナーさんが関わっている本が出た。
「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる 地域×デザインの実践」という、まさに自分にも関係しそうな題名で、教えてもらってすぐに買ってみた。

更には、大阪の本屋さんで出版を記念したトークイベントも開催されると言うのでせっかくなので話を聴きに行ってみた。
そこできいたお話のひとつひとつが刺激になって、働き方の悩みが全て解決とはいかずとも色々とヒントをもらうことができた。
そんなわけで今回は、イベントで気になったフレーズを元にnoteをまとめてみたいと思う。

地域とはどういう範囲?

おもしろい地域……と言われた時にそもそも、地域とはどのくらいの範囲なんだろう。
そんな疑問は正直今回のイベントで耳にするまで考えたこともない論点だった。

大体「市町村」とかで括って話しがちなところなので、ずっとそう思ってきたんだけど、例えば都市でどのように働けばいいのか……という質疑応答で、必ずしも市町村で区切る必要がないことを実感した。

例えば大阪市であっても、○○区などの24区に分かれているし、その一つ一つも広い。
ならば、○○駅周辺であったり、○○通りといった単位でも地域は捉え直すことができる。
そう言われてみれば都会やなにか一つの産業が発達した市町村においては、○○といえば△△!みたいなイメージが強すぎて、なにか新しいことをしようとしても旧来の名物に意識を奪われてしまいがちだ。

でも、地域によっては範囲を絞ったり、あるいは広めたりすることで、イメージも変わってくる。
実際に今回のイベントの大元になっている書籍では、「町のなかで動く」「市のなかで動く」「道・県のなかで動くといった範囲に着目した目次分けが意図的にされていて参考になる。
すでにキャラクター付けが明確な年においても「○○通り」といった範囲にまで地域を絞り込むことで、既存のカラーに縛られない動きができるということもすごく学びとなった。

一言でこたえられない仕事を

デザイナーの仕事と聞くと、かっこいいポスターを作ったり、おしゃれな商品の形を考えたりと、パソコンを使ってかっこよい仕事をしているというイメージが未だに色濃くある。

でも、今回書籍で取り上げられている人たちは、単純にデザインを受注して、納品して終わり……という働き方以外の比重がとても多い。

これは実際に自分もお店をやってみて理解している部分でもあるけど、大きな金額をかけてかっこいいことをして、パッと成立する仕事なんてどんどん減っているのだと思う。
例えばオリジナル商品を作って販売するにしても、いきなりたくさんの量を作って、パッケージやロゴにもこだわってお金をかけて仕上げていく……なんてのはよほど自信がないとできない。

そんな中で、書籍に登場するデザイナーさんたちは、初回にかかる経費をおさえてでみ一緒に商品のことを考えて、商品が売れた時にお互いが利益を得られるような仕組みを構築していっている。
地方に住めば家賃は下がる。でもその周辺で動くお金は必ずしも大きいわけではない。東京や大阪に拠点をもつデザイナーは総人口の6割に及ぶそうだけど、地方ではそもそもデザインの仕事自体たくさんあるわけではない。
でもデザインが関わることで、その価値を更に発揮する産業は少なからずあるわけで、家賃が安い分だけすぐにお金に窮しない利点を、依頼主との並走というゆっくりとした回収方法に活かしているときけば、その手法にも納得できる。

そして時にはイベントを開催し、自社オリジナルブランドとして商品をプロデュースして実際に店舗を持って販売したり、カフェを作って運営してみたり……
え? それもデザイナーの仕事なの?と思えるような「卸(おろし)」や「キャンプ場」の仕事までやっている姿を見ていると、そもそも何をしている人なの?という感じになってくる。

でも、そもそも産業がどんどん発展して効率のために「分業」することが当たり前になる以前は、デザイナーも「グラフィック」や「プロダクト」といった形で区分けされてなくて、むしろ製造工程や流通にだって絡んでいた。というか、デザイナーという言葉自体不適切かもしれない。
誰がどの役割といったところも不確かで、個人で商いをしているところもたくさんあったのだから、必要なことは垣根をこえて全部やっていたはずだ。
効率よく物をたくさんつくっていれば売れた時代は終わったと言われて久しいけれど、結局のところ、多くの組織では変わらず分業体制がとられている。
一方で、地方には都会には当たり前にあるような会社もなかったりする。
結果として、その誰も手を付けていない分野を、自分たちの住む場所を面白くするためにやっているということが、地域の課題や強みに合わせて様々な形で進化していった……というのが今回の書籍で紹介されている無いようなのだと思う。

一言でこたえられない仕事。
かっこよく言えば、いまの学生さんたちが憧れるクリエイティブ・ディレクターになるのかもしれないけれど、必ずしもはじめからそこを目指した人ばかりではない。
むしろ、地域のたくさんの仕事を受け持っていて、百の姓(かばね)を持つと言われたお百姓さんのように、必要な仕事をやり続けていたらたくさんの仕事をとり行うようになっていた……というあり方は、スマートな横文字よりも泥臭い試行錯誤が感じられてとても腑に落ちる。

デザイナーでない私たちは

さて、書籍に載っている様々な実践例やイベントで聴いてきた話から「なるほどなー」と感心してきた私だけど、大変なことに気づいた。

そもそも私、デザイナーじゃない。

でも、だからといってなにもできないと泣き寝入りする必要もないような気もしている。
デザイナーが、たくさんの工程に関わり、様々なおもしろい仕掛けを実践しているように、小売の視点だったり、職人の視点だったりからスタートして、いろいろな仕事を地域の中でやっていけば、デザイナーとはまた違った角度から新しいことができるのかもしれない。

そんなふうに思うわけです。
というか思わないとやっていけない。
そして、同じ様に様々な仕事をしてきた人の角度の数だけ、おもしろい地域が増えれば、日本はきっと楽しいことになるのではないか。
「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる 地域×デザインの実践」は、そう思いながら読むとデザイナーでない人もするめのように噛み締められる書籍だと思った。

ぜひ、まちづくりほど気負わずに、いろいろな場所で面白いことを仕掛けたい人は試しに読んでみることをおすすめします。

こちらの記事を面白いと感じて頂けた方は「♡マークのスキ」を押していただければ幸いです。(スキは非会員でも押すことができます)
また、フォローやシェアも大歓迎でございます。
大阪の気軽にアクセスできない場所にあるお店ですが、今後もnoteを通して皆様と交流できれば幸いです。

↓↓↓ぜひtwitterやinstagramのフォローもよろしくお願いいたします!↓↓↓

twitter @tyarinko
instagram @docketstore

紹介した本はこちらからご覧いただけます。

書籍の発売にあわせて全国でイベント行脚されるそうです
気になる方はぜひぜひいってみてください


この記事が参加している募集

#買ってよかったもの

59,040件

#仕事について話そう

110,645件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?