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佐世保の港町「万津6区」の夜に、コーン看板が灯った日

「この看板、和食屋やってるうちにピッタリや!」

そんな嬉しい言葉を頂いたのは、会社勤めをやめて完全にフリーランスとして独立した2019年の年末頃のことだった。
文具屋を営む中で、自分用につくった三角コーン看板が人気アイテムとなり、その販路を拡大すべく、南港の大きな会場で開かれるイベントに乗り込んだのだ。

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台車に三角コーンで作った看板のサンプルを載せて、意気揚々と挑んだものの結果は惨敗。
1件の受注につながることもなく、すごすごとお店に戻った時の落ち込みは今でも背筋がゾワッとする。

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しかし一方で、冒頭のような新しい視点での言葉も頂いた。
単三電池駆動で優しく光る三角コーンの看板は、よくあるギラついた看板とはちがって落ち着きがあると、裏路地で和食屋さんを営んでいるという通りかかりの方からベタ褒めされたのだ。

三角コーン看板は、看板部分が目線より低いところにある。
更に普段見慣れた三角コーンを用いて作られているために、まちなみにも馴染む。
それは、目立つことを求められる「看板」の世界にあって、不思議なポジショニングにある商品だということを改めて認識させられたのだった。

いつか、まちにたくさんのコーンが立っていたらどんな風景が生まれるんだろう。
その時からずっと、そんな妄想を繰り返してきた。
でも、どんな願いも口にしていれば形になることがあるもので、今回佐世保の万津6区というまちから機会をいただいて、その夢が叶ってしまった。

今回は前回のnoteの続編にもなっている。
まだ、道路への設置については許可の申請等が引き続き必要になるけれど、まずは設置した時にどんな風景が生まれるのかを実験した結果発表となっている。
ぜひご覧頂ければ嬉しい。

「6」のまちの見える化すること

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長崎県佐世保市。
軍港としても有名なこのまちで、朝市も観光名所となっているまち「万津6区(よろづろっく)」

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建物の壁面等、「6」の数字を大胆に配置した町並みは、写真で拝見するだけでもとてもかっこいい。
ただ、まちなみを歩いていても、どこからどこまでが万津6区なのかがわかりづらく、三角コーン看板に期待されたのはその解決という役割だった。

新型コロナウイルスの影響もあるため、今回は三角コーンの製造販売ではなく、現地で実際に動ける方に使い方を預ける監修的な立場で携わる形をとることにした。

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看板のデザインについては、当店の駐車禁止などの既製品のモデルをデザインして頂いているNATSUKI HOSOKAWA DESIGNさんにお願いすることで、監修側としても安心してすすめることができた。

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真正面からみたデザインは、万津6区のシンボルである「6」のマークを中心に据えて、まちの情報にアクセスできるQRコードも配置。
初めて観光にきた人が、まちに並ぶ「6」の数字に疑問をもったら、すぐにスマホのカメラにQRコードを映してサイトにアクセス。
まちの情報に触れられるような仕掛けを施している。

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これが、実際にまちに置かれるとこんな景色が広がる。
定期的に置かれたコーンが、まちに一定のリズムを生み、控えめながらもしっかりとした主張を行ってくれる。

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三角コーンそのものが、元々まちで目にするものなので、立っていても違和感はない。
また、三角コーン自体や看板パーツもそれぞれがホームセンターなどでも一般的に販売されているもののため、消耗や破損をした際にも交換などが容易というのも、屋外で立たせる上でこの看板を使用するメリットになっているのではないかと思う。

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この光景をみて、地味だなと思う人もいるかも知れない。
でも私は、この地味さこそがまちに立つ看板に必要な要素だとも思っている。
必要な情報は必要な時にすぐに手に入れたい。
けれども、不必要なときには「無視したい」ものだと思う。

その、意識もできるし、風景に馴染んで無視もできるというこの三角コーン看板は、私としては理想に近いポテンシャルを見せてくれたように感じている。

3、4、5のまちと繋がること

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さてこの三角コーン看板。
当初の予定では「万津6区」の「6」バージョンのみがまちに置かれる予定だった。

ただ、ミーティングを重ねる上で、実験的にその兄弟たちが生まれる事になった。
それがこの「三ヶ町」「四ヶ町」「五番街」のコーンたちだ。

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こちらの写真の後ろに映っているけれど、佐世保には「三ヶ町」と「四ヶ町」に歴史のある商店街が存在している。

そして、その三ヶ町、四ヶ町に続く形でうまれたのが「させぼ五番街」というショッピングモール。
この3、4、5・・・と続いてきた先だからこそ、「万津6区」はここまで6を取り入れた展開をされているのだ。

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その関係性や場所の明示を、初めて佐世保に来た観光客にもわかるように生まれたのがこの3、4、5、6のコーン看板たち。
三角コーンは工事現場で使われていることもあってアタッチメントもこのように豊富。

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どこが三ヶ町で、どこまでが四ヶ町で、五番街につながって、「万津6区」がその先に広がっている。
その流れを明示してくれるコーン看板達の姿も、その土地に立って考える人達が生み出す新しいバリエーションで、今回携わらせてもらうことで新たな可能性を教えてもらえた部分だと感じた。

「6」のまちにコーンが灯る

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最後に、冒頭から地味だ地味だと言ってきた弊コーン看板。
夜になるとまた、違う姿を見せてくれる。

その姿を確認するためにも、夜に置いての設置実験をしていただくこととなった。

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単3電池3本で光る、LEDライトを仕込むことで、白いコーン看板は光る。
その灯りは、照明設備が豊富な都会の夜では目立たないが、どちらかといえば電灯の少ない、落ち着いたまちなみの夜においては抜群に存在感を発揮してくれる。

正直ここまでの景色は、お店などに導入していただいた時に目にしてきた。
でも、これが、まちにたくさん置かれた景色がどうなるのか・・・。
それをようやく目にする機会がやってきた。

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昼間の雰囲気とは一転。
まるで行灯(あんどん)のように、「6」の数字が描かれたコーンが灯る風景は、正直私の想像を超えていた。

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行灯以外にも、飛行機が着陸できそうなんて声を知り合いがあげてくれたけど、落ち着いたまちなみの中で、等間隔に灯るコーン看板は、初めてこのまちを訪れる観光客の人にどんな想いを抱かせてくれるだろうか。

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もちろん、道路に立てる以上、きちんとした許可を今後取得して導入されるかどうかは決まるのだけど、実際にまちで店を営む方からも「ぜひ置いてほしい」といった声をいただけたときいて嬉しくなった。

その光景を現地で見る日まで

小さな文具屋で作り始めた三角コーンの看板が、色々な人に面白いと感じてもらって、まちにこれだけたくさん置かれる光景を見る日がくるなんて1年半前の自分は夢にも思っていなかった。

緊急事態宣言が続く中で、現地にいくことなく進んだプロジェクトだったけれど、離れていてもこうやって進んでいくということが体験できたのはとても貴重な体験だった。

新型コロナウイルスが落ち着いた頃には、ぜひこの佐世保の「万津6区」でコーンのある光景を眺めてみたいと思う。
それまでは、佐世保のことを色々調べて、楽しみ尽くす旅程を妄想したいと思う。

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佐世保の楽しそうなところの情報は、今回ご一緒に動かせていただいている「佐世保 西果て漂流記」がおすすめです。
佐世保や万津6区にご興味を持たれた方は、ぜひあわせてご覧頂ければ幸いです。

今回の企画は、観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」事業の一環として、佐世保市のDMOから委託を受けた地元の街づくり組織である一般社団法人REPORTSASEBO、そして以前から公私でお付き合いのあったスタッフさんのいるHOTEL SHEブランドなどを運営するL&Gグローバルビジネスのグループであるブランドコンサルティングファームの株式会社水星とが協業で取り組まれる、いわば佐世保市のリブランディングのプロジェクトへの参加のお誘いを頂いたのが始まりとなっております。機会をいただいた皆様、ありがとうございました。

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