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無印良品は、あなたの「推しとの暮らし」を支えるホームセンターだ

「DIYしてみたい」

唐突にそんな気持ちが沸き起こった。
当時、無印良品のお店で働いていた私。
東京→大阪→九州と転勤をする度に家賃が下がり、間取りが広くなっていたことに気持ちが膨らんでいた
とはいっても都市部に転勤した時にじゃまになるので、家具を買う気は起きない。

でも、デスクを置いた仕事スペースとリビングを分けれるいい感じの仕切りとかならどこに転勤しても邪魔にならないのではないか。
それもDIYで簡易に作るのであればお金もかからないし、行く先々で手を加えていける。
縁もゆかりも無い九州にあって、別に自宅を誰を呼ぶわけでもないのに、そういうやつを作ってみようと思うに至った。

ホームセンターで売っている木材を使って、かっこいい仕切りをつくれる道具の情報を掴んだ私。
なんでもその道具を使えば、ただの木材が、天井と床をつなぐつっぱり棒になるという。
木材はホームセンターでカットしてもらえるらしいし、これぐらいなら不器用な自分でもなんかいい感じに仕切りを作れるんじゃないだろうかと考えた私はネットでそのパーツを注文した。

パーツが到着したらもう湧き上がる気持ちをおさえきれない。
夏の炎天下もなんのその。
浮かれ気分で自転車を漕ぎ、15分ほどかけてホームセンターにたどり着いた。
問題なく木材を3本購入。
天井と床の長さに近い木材は自分の身長より大きい。

そこで愚かな私はようやく気づいた。

「車がないと木材って運べないんだな」ってことに・・・

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勤め先のイオンで買った自転車にひとまず載せてみる。
一応は載った。
一応は載ったけど、私が乗れない
これだけの長さを跨げる人間は芸能界にもそうはいないし、またげたところでまともに漕げない。

完全に盲点だった。
さすがにこの木材を上から跨ぐ度胸も足の長さもない私は、1時間かけて家まで木材を持って帰った。
真夏の太陽の下、干物になりかけながらも、ホームセンターで買った経口補水液を2本飲み続けた旅路を今も忘れられない。

ただ、家に帰ればこっちのものだ。
さっそく木材にパーツをセット。
今回はデスクの周囲を仕切れるだけでいいと考えた私は、IKEAで買ったレースカーテンとのれんのように引っ掛けて使えるカーテンレールを組み合わせ、デスクの周囲にセッティングを施した。

なんだ簡単じゃないかDIY。
木材を買ってくるのは大変だったけど、木にネジをとりつけるぐらいは簡単にできる。
楽勝楽勝!

しかし出来上がったものは・・・なんか違った。

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なんだろう。
よく言えば・・・乙女?
なんだったっけ? 天蓋(てんがい)ってやつ?
なんかこう、プリンセスのベッドについてるふわふわしたやつを思わせる謎の仕切りが目の前にあった。

いや、でもなんか日本的なやつで似たようなのがあったような気がする。
「蚊帳(かや)」的な・・・いや、蚊帳だ。

しかも、炎天下の中無茶な運び方をした木材はなんだか反り返っている
ラジオ体操第一で「ゆっくりと上体を反らせましょう♪」と言われた中高年のようなぎこちないカーブを描いていることが、ただただ腹立たしい。

私は自らの不器用さをこの時に改めて再認識し、DIYは得意な後輩にお願いするスタンスを取ることに決めたのだった。

無印良品で色々買えば、とりあえず生活は整う。


さて、そんなDIYのセンスが壊滅的な私でも、10年間無印良品で働き、10回以上引越を繰り返してきたら少しは学ぶ。
無印良品を取り入れて、少しはインテリアを構成できるようになった。
無印良品で揃えれば、雰囲気もケースのサイズ感も、何も考えなかったとしても揃っていくのだ。
それは洋服においても言えることで、無印良品の商品を買い揃えることで、私の生活は少しずつ豊かになった。

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でも、全てを無印良品で揃えることは、意識的に避けてきた。

それは、昔上司からきいたこんな言葉に端を発している。

「ヤマちゃん。
 白い壁の賃貸で、無印の家具で全て揃えて住むのは危険よ。
 整然と並んだ空間は度を過ぎると精神病院みたいになるの!」

当時も、そして今思い出しても笑い話だし、あくまで上司の感想にすぎないのだけど、言いたいことはよくわかる。

不純物を取り除いたきれいすぎる水に魚が住めないように、インスタグラムなどで見かける美しい空間が、実際に住みやすいかどうかは人による。

全部無印良品で住んでいます的な「無印良品の家」の企画は、個人的には大好きだけど、実際にやろうとすると極端なようにも思える。

平野太一さんが書かれていたこちらのnoteを読んでいても、すごく共感した。

無印良品の商品は、衣料品・生活雑貨・食品と様々な分野に及んでいる。
そのたくさんの商品たちがチームのように群れとして働き、役立ってくれる。
そこに身を委ねてしまえば、無秩序な生活に比べて暮らしの質は向上する。

でも、平野さんが感じたように、生活の全てを無印良品に委ねることが正解だとは思わない。
たぶん、無印良品もそれを望んでいないと思う。

じゃあ、どうすればいいのだろうか。
ここからは無印良品で10年働いてきた、自分なりのコツをご紹介したいと思う。

無印良品という「デザインのあるホームセンター」

無印良品で働き始めた頃。
D&DEPARTMENTのナガオカケンメイさんの考えに惹かれ、本を買ったり、トークイベントやトラベルの企画に参加させていただいたりした。
その時に、ナガオカケンメイさんと話している中で、「無印良品はデザインのあるホームセンター」という言葉をお聞きした覚えがある。

無印良品に並ぶ商品は、ホームセンターに置いてある木材やペンキといった材料ではない。
では、なぜホームセンターなんだろう。
禅問答の謎掛けを受けたかのように、私のお腹の中で消化不良のまま引っかかっていた。

でもようやく、このnoteを書きながらおぼろげながらに出た私なりの答えがある。

たぶん現代の日本人の多くは、無印良品というホームセンターで材料を買って、自分なりの「暮らし」をDIYしているのだ。

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社会に出て、親元を離れた時。
結婚をして、2人で暮らし始める時。
子供が生まれて、広い家に引っ越した時。

誰しも自分なりの「暮らし」を作っていくことになる。
というか、だれかが作ってくれるわけではないのでDIYせざるを得ない
初めて借りた家には風呂やキッチンといった設備はあるものの、ベッドもお皿もテレビもない。
それでもひとまず、暮らしていけるように色々と買っていかなければいけない。

そんな時、無印良品に行けば、「ふつうの暮らし」に必要なものが売っている。
日本人の多くの人の心に響くような、こうだったらいいなという暮らしを成立させてくれるような小物達。それが無印良品には売られている。

「ふつうの暮らし」はスマホで言いかえれば「標準のアプリ」のようなものとも言えるかもしれない。
スマホには購入した時点で、その時代のトレンドを反映した、「メモ」や「アドレス帳」「カメラ」といった機能が搭載されている。
でも、賃貸住宅やマイホームの多くには標準アプリにあたる家具や生活小物、家電は搭載されていない
だから、標準アプリをダウンロードするように、無印良品に新生活のあれやこれやを買いにいく。

ただ、「ふつうな人」という言葉が具体的な誰かを指していないように、材料を全てを無印良品にして作った「暮らし」には零れ落ちがちなものがある。
それが「自分らしさ」とか「自分だけのこだわり」と呼ばれるものなんだと思う。

無印良品という「ホームセンター」を使って、自分なりの暮らしをDIYしよう

暮らしの全てを「自分らしさ」や「自分だけのこだわり」を元に構成していくと、効率が悪かったり、お金がたくさんかかったり、一緒に暮らす人のことを置き去りにしてしまうこともあるだろう。
だけど、全く偏りがない暮らしが、満足感のある「自分の暮らし」にはならないように思う。

だから、無印良品は「ライフスタイルショップ」のような場所というよりは、「ふつうの暮らし」という材料やパーツを揃える「ホームセンター」として考えてみると健全な距離感が保てるように思える。

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特にこだわりのない「暮らし」の部分は無印良品をうまく使って統一感をもって整えていく。
そして、自分や家族がこだわりたいと思う「ここぞ!」という部分には、自分の好きなものを使っていく。
そうやって暮らしをつくっていくと、こだわりの部分を目立たせる「額」のように無印良品の商品が働いてくれる。

無印良品に携わっているデザイナーである深澤直人さんは、「これがいいではなく、これでいい」という言葉を無印良品を表現する際に使っていた。
無印良品がいい!と強く求められるものではなく、個人的にすごくこだわりたいわけでもないけれど、100円均一でそろえるのも微妙・・・という時、「もう無印でいいか」とお客様が思える。
そんな立ち位置に狙って立っているのだから、無印良品は改めてすごいなと思う。

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実際、私も無印良品の棚やデスクを最大限、文具屋の脇役として使い倒している。
人の数だけ「これがいい」はある。
あなたが暮らしの中で大切にしたいのは、ゲームなのかもしれないし、料理なのかもしれない。

もし、すでに生活に慣れたあなたが無印良品を使うことに飽きが来ているとしたら。
あなただけの暮らしの「推し」を引き立たせる脇役として、無印良品を使ってみてほしい。

その時、無印良品は脇役のプロフェッショナルとしていい仕事をしてくれると思います。

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