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「小売の未来」にフルボッコにされた店主の振り返る「小さなお店のメディア化」の話

「ダグ先生、ちょっとまって。個人事業主のHPはもうゼロよ」

小売の未来。そんな題名の本を手にとって読み始めたら、もう止まらなくなった。
小さな文具店を営む自分にとってもきっとなにかヒントが見つかりそう・・・
そんな淡い期待はひとまず、400ページ中の前半225ページをかけて一度ボッコボコに打ちのめされる。

新型コロナウイルスによる実店舗への様々な影響。
その中で更に勢いを増すAMAZONをはじめとした超大手の戦略と投資、そして成長。
著者であるダグ・スティーブンスさんの前著でもある「小売再生 リアル店舗はメディアになる」という本も、そういう本だったからある程度覚悟していたけれど、そんな私でさえ読んでて涙目になるほど、淡々と積み重ねられる世界の動きに圧倒された。

しかしながら、そんな現実を見据えるからこそ、リアル店舗はこれからもっと重要になると本書でも語られていたとおり、超大手がやっていることを見た上で、小さなお店だからできることをすればいい。
リアル店舗はメディアになる
という前作の帯コメントに勇気づけられてはじめたうちのお店は、コロナの影響を受けながらもなんとか生き抜けている。
今回は、「小売の未来」という本を読んで感じたことと、新型コロナウイルスの影響を受けながらもメディアを目指したうちのお店の実践をご紹介できればと思う。

人が来ない場所だからこそと、牙を研いだ1年目

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「近くまで来たんですけれど、お店はどこですか?」

そんなお電話を月に何回かいただく。
ただでさえ、大阪の中心、梅田駅から電車で数十分かかったうえに、最寄り駅からバスで更に10分。
たどり着いたら入り口が分かりづらい。
乗ったら怒られるんじゃないか?と疑ってしまうような搬入口の赤いエレベーターで3階まで登ってようやくたどり着ける場所にうちのお店はある。

オープン翌年には梅田駅から地下鉄一本でつながるようになる・・・はずだったのだけど、その工事は3年延長となり、さながらお店は陸の孤島。
お店に到着できるかどうかからして、ちょっとしたアドベンチャーになっている。

そんな立地でも、ご来店いただいたお客様に楽しんでいただこうと、せっかくここまできたからこそ出会える商品を揃えようとしていた日々は、意外と役に立っている。
Amazonでも楽天でも、買おうと思えばだいたいのものは揃う。
だからこそ、まだ誰も見つけていないものを探そうともがいた。

ただ、その頃はネットストアにも手をつけられていなくて本当に試行錯誤。
実店舗をメディアに!という受け売りのテーマはあるものの、なかなかに厳しい日々だった。

ただ、そんな日々の中で少しずつはじめたnoteが、2020年の年明けに唐突にバズった。
厳しい環境でセレクトしたアイテムを、ようやくnoteという文章を中心としたメディアで展開することで、メーカーの在庫が全て売れるという経験を経て、ようやくうちのお店は「メディア」として出港できたように思っている。

それは、「実店舗をメディアに」という当初の思い込みをこえて、「実店舗があるからこそネットで発信できることがある」という想像もしない切り口だった。
そのころはまだ、メーカーが自社商品のことを発信することは多くても、小売店が発信することがまだまだ少なかった頃だったので、こんなやりかたが通用するとは夢にも思っていなかったけれど、たどりつけて本当によかったと思っている。

ネットへの船出。そして訪れた新型コロナウイルス

新型コロナウイルスの影響は、そのあとすぐにやってきた。
都心の大型店舗が軒並み閉まってしまう中、陸の孤島であったうちのお店は来客もないけれど、通勤における感染の危険性もほとんどないために比較的動くことができた。

そんな時にネットで提案して好評を頂いたのがこのMIWAXさんのデスクマット。
オープンした頃から揃えていたこの商品は、「いい商品だけど、家で働くことなんかないからなー」というお客様の生の声が脳内再生されたことがネットで力を入れて販売するきっかけとなった。

リモートワークを初めて行う大勢のお客様から支持を頂いたことがありがたかったのはもちろん、こんな事態だからとメーカーであるMIWAXさんも在庫を全カラー預けてくださり販売できたことには感謝しか無い。

同様に、在宅勤務で急遽「会社がスケジュールを管理してくれない」状態になった皆さんに支持されたのがスケジュール帳。
これもいつもならいくらでもスケジュール帳を比べて購入できるロフトさんや東急ハンズさんが開いておらず、スケジュール管理に悩む人が多いという声を得て、メーカーであるラコニックさんと一緒に販売させていただいた。

こうして、ただ商品を紹介してアフィリエイトの利益をもつのではなく、メーカーと付き合いのある実店舗だからこそできる動きを展開できたのは、お店をもっているからこそできた展開だったのではないかと思っている。
ただこのメディアとしての展開も、noteという発信の場が持てていなければ、どうやって展開すればいいのかから悩んでいたと思うので、年明けにnoteでやっていけるという自信を得られたことは本当にありがたかった。

提供できるのは「モノ」だけか?

日々商品について、自分なりの使用方法を発信しながら商いをしていくうえで、他にもなにかコンテンツとして読み手の皆さんに届けられないか。
そんな想いからはじめてみたのが「補助金の申請方法」についてだった。

新型コロナウイルスの影響もあり、様々な補助金や給付金が出ていたけれど、実際に使おうとして調べてみるとわかりにくいことが多い。
誰かこの内容を噛み砕いてまとめていてくれたら楽なのに!という怒りにも似た気持ちで書いたのが上のnoteだった。

実際困っている方が多かったのか、この記事をきっかけにnoteのPV(ページビュー)数は10万を突破。
特にそれで直接的な収益はないものの、商工会議所の方に感謝されたり、読んで申請がうまくなったので商品を買います!という方も現れたり、実店舗が発信できることは商品のことだけじゃなかったんだと実感できた。

商品で収益を上げることばかりにとらわれず、せっかくnoteを通して商いをしているのだからその方法を皆で共有してみると、結果的に沢山の人にフォローしていただいたりつながりを持てる。

「小売の未来」の本の中では、実店舗が生き残る上で「ノウハウ型」というそこでしか得られない知見を持っている強みがあるかどうかの話が出てくるけれど、結果としてそのノウハウは文具についてのみに留まらず、どうやって小売店を営んでいくかという話にまで発展しているのがうちのパターンということなのかもしれない。

実店舗をメディアに・・・からはじまって、「実店舗をやっている姿そのものがメディアに」なりはじめていることを感じている。
そんな感覚は2021年になって、予想もしない形で実例が生まれることとなる。

それが中川政七商店さんに選ばれた「プロのカタリベ」という取り組みだった。

プロのカタリベという新たな役割

新型コロナウイルスの影響で、小売の現場もどうやって商品を発信していいか悩んでいる。
それは言われてみれば当然の話だ。
これまでは実際に会って、商品に触ってもらって、店舗という空間の中で商品を伝えて購入してもらう体験を積み重ねてきた。
そんな方法が、ネットでさあ再現してくださいと言われて、すぐに実現できるはずもない。

そんな中、大日本市という中川政七商店さんの工芸ブランドの小売業向けの展示会で、「プロのカタリベ」という役割として選んでいただくことになり本当に驚いた。

でも、それはこれまでやってきた「実店舗をメディアにしていく手法のシェア」を中川政七商店さんの担当者さんが見てくださっていたからこそ起こった奇跡だった。
小売の未来では、実店舗でのお客様から得られる様々なデータをメーカーに提供する会社などが登場して「そんな考え方もあるのかー」なんて思っていたけれど、小さなお店を実際に運営しながら、小売店向けにどうやってメディアを作ってきたかということを共有する役割を得ることになるなんて、オープン当初は本当に予想もしていなかった。

そんな機会までいただき、本当に嬉しく思っている。

小売の未来、うちのお店の未来

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小売の未来という新型コロナウイルスの影響をリアルタイムで描いた本を読みながら、自分のお店のこれまでを振りかえってみたけれど、改めてよくわからないなりに「実店舗をメディア」にしようと思って走ってきてよかったなあと思う。

正直、これまで予想もしなかった方向に発展してきた自分なので、これから自分がどうなっていくのかもわからない。
けれど、世の中のすすんでいる方向を知って、自分なりにアプローチをしていく上で、ダグさんの本はすごく刺激になると思う。

ぜひ、225ページフルボッコにされた上で、その先の未来にワクワクするために読みすすめるきっかけに、このnoteがなれば嬉しい。

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