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教育学部生が公務員試験合格を目指した9ヶ月の足跡

第十五条 職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、人事評価その他の能力の実証に基づいて行わなければならない。(地方公務員法)

人生で二度とやりたくないことは何かと聞かれれば、有無を言わさず「就活である」と断言したいのです。就活を終えて抱いた感想は「これ恋愛と同じでは?」というものでした。「相手の魅力」を十分に理解した上で、自己分析という名の自傷行為の上に築かれた「自分の魅力」をそこにマッチングさせ、「御社が第一志望です」と愛の告白。もちろん浮気しまくるのが就活の正攻法であるからその告白の内どれかは嘘となります。何じゃこの茶番は。

日本の就活に対する問題提起を行ったところで来年から何かが変わるわけでもないため、せめてもの爪痕を残すため、今回は「教育学部生が公務員試験合格を目指すということはどういうことか?」というある程度需要がありそうな疑問に対して、自分自身の経験の記録を供給したいと思います。

※本記事は一般的な地方公務員試験を念頭に作成しています。国家公務員試験や東京特別区など、形態が異なる試験種については記述に異なる部分もあるかと思われますのでご留意ください。

1.教育学部→行政職公務員ルートはニッチでもない

はじめに、外野から投げられそうな「教育学部生ならほとんどが教員採用試験を受けて教員になるのでは?」という当然の疑問に対して実際の数字を見てみましょう。公立学校教員もまた公務員ではありますが、ここでは便宜的に公務員=行政・事務職公務員とお考えください。

千葉大学令和元年度卒業生(つまり20卒)の教育学部における進路状況について見てみると、教員として働く卒業生は全体の約5割、半分程度で、4割弱が民間企業、そして公務員になったのは1割という結果でした。

弊学教育学部生全体の10%も公務員になっているのであれば、これはそこまでニッチな就職ルートでもないのでは?と思います。教採を受ける学生が減っていることに学部は頭を抱えているようですが、この問題については前回noteを書いているので一旦置いておきたいとおもいます。

2.試験までの道のり全貌

それでは具体的に合格までの道のりについてご紹介します。全貌を分かりやすくするために上表をご用意しました。結論から言ってしまえば自分の公務員試験勉強は「かなり独特であった」と思います。

公務員試験系の雑誌や本に掲載されている勉強・受験ルートとは異なる場合もありますが、知って頂きたいのは「王道ルートではなくても最低限やることさえやっていれば合格はできる」ということです。それでは各項目について詳しく確認していきましょう。

2-1.学習期間

意識の高い受験生の中には、大学1年生から受験勉強を始める猛者もいるようですが、これは大学入学当初から公務員になることが分かっていればこそできる所業。教員を目指して教育学部に入ってきた学生にはなかなか難しいのが実際のところでしょう。

私自身も行政事務職に興味を持ち始めた学年こそ大学2年だったと記憶していますが、いざ教採を受けるか、公務員試験を受けるか。完全に方針を決定したのは3年次10月に教育実習が終わってからでした。

さて学習期間について言えることは、試験前年秋スタートでも十分に間に合う!ということです。むしろ早く始めすぎると、大学の授業・バイトとの兼ね合いや、モチベーションの面でデメリットが生じてくる可能性が高いのではないでしょうか。学習方法さえ間違えなければ、1年かけずとも合格圏内に達することは可能です。本実習を終えてから決める、でも大丈夫。

2-2.学習方法

学習方法については大きく①予備校(公務員講座含む)/②独学の2つの形態があります。千葉大学でも公務員試験の学内講座を行っていますが、これも広義の予備校に入れてあります。まずは簡単に両者のメリデメから。

①予備校について:予備校に通っていない私が言うので正確性に欠けるかもしれませんがご容赦ください。予備校での学習は「何をすればいいかを手取り足取り教えてくれる」「面接・論文対策が手厚い」「受験仲間を得られる」といったメリットを享受できます。一方で「費用がかさむ」「時間的な制約が課される」といったデメリットもあります。

②独学について:独学は「費用が抑えられる」「学習ペースを自分でコントロールできる」「バイト等との両立がしやすい」といったメリットがあります。デメリットとしては「情報収集を全て自力で行わなければならない」「受験仲間を得にくい」「面接・論文対策が疎かになりがち」といったものがあります。

私は後者の②独学を選んだわけですが、これは費用が安い・自己管理が容易というメリットに大きく惹かれたことによります。情報収集は自分で行わなければならない分、むしろ積極的に自分で調べられるようになります。ただ面接・論文対策の脆弱性と受験仲間を得にくい、というデメリットは存分にくらいました。面接・論文対策は予備校の単科講座や大学の就職支援課、ジョブカフェなどに頼ったり、また受験仲間はSNSで得るなどといった努力が必要になってくるかも知れません。一人で勉強し続けるモチベーションをいかに保つか、ということが重要になってきます。

独学でやりたい!という方には私も買った以下の本をおすすめします。

次に使った教材についてですが、これは私がつらつら話すよりも各種公務員試験の指南書を参考にした方が良いと思います(単に内容として重すぎるため割愛したい)。上にリンクを貼った本には公務員試験とはなんぞや、というところから具体的な勉強スケジュール・おすすめ教材まで網羅されています。一番上の受験ジャーナルなんかは大学図書館にも置いてあるので、興味がある人は読んでみてください。

私もこれらの本を参考に、主要科目(どの機関でも大体出題される科目)から勉強し始める、過去問の繰り返しを意識する、苦手な科目は参考書を買う、といった基本スタイルで勉強に臨みました。先駆者がたくさんいるので取り入れられる部分はどんどん実践していきましょう。

2-3.学習時間

公務員試験の雑誌なんかを見ると、試験前年内は6~7時間、年が明けてからは1日10時間以上勉強しました!というような文字通りの「受験生」を観測しますが、私はバイトが忙しかったのとそこまでの勉強の体力が既に失われていたので、上表の通りどんなに長くても1日6時間程度の勉強時間であったように記憶しています。

これに関しては人それぞれとしか言いようがなく、例えば教育学部生でも私のように社会系の課程に所属する学生とその他課程の学生では、大学で学ぶ内容と試験内容の被り具合も違うわけです。ただの教育学部生と、法律・経済系の科目をガッツリ勉強してきた法政経学部生では受験の下地が違うわけです。従って、自分にとって必要な勉強量と時間については、独学では自分でコントロールしていくしかありません。

2-4.学習場所

勉強する場所は私の場合特に定めず、大学の空きコマに図書館や教室で行ったり、自宅で行ったり、あるいは移動中の電車内で行ったりと様々でした。自分が集中できる場所であればどこでもいいのではないでしょうか。ただ科目が多い分教材もかさむので、外で勉強する場合には持っていく教材と学ぶ内容についてよく考えておきましょう。

2-5.模擬試験

公務員試験にも各予備校が開催する模擬試験があり、特に独学受験生については自分が受験生全体の中でどれほどの位置にあるのか、学習が足りない箇所はどこかを見極めるという点で優れたツールになってきます。

ところが怠惰な私は4月に1回だけ、しかも自宅受験の模試を受けただけでした。本当はコンスタントに受けるべきであったのかもしれません。しかし当時の私は「模試を受けようが受けまいが、勉強できてれば受かる、できてなければ落ちる」といった悟りの境地に至っていたため、そうなりました。

そしてその唯一1回の模試結果が上図です。本番2ヶ月前の時点で総合評価は「あと一歩、苦手分野を強化せよ」のC判定。Bぐらいは期待していたので少し焦りはしましたが、「模試は本番より難しく作問されている、本番まで時間はあるし大丈夫」と自分をなだめました。

参考までに本番の筆記はどうだったかというと、開示請求できた政令市の方では上図の通り、教養8割・専門6割まで得点することができました。また実際に模試よりも問題は易しかった印象を受けました。公務員試験の筆記合格ラインは6割前後と言われているので、主要科目でしっかり得点できれば面接には進めます。進めはするのです。私としてはこの面接で非常に苦労しましたが…。

2-6.面接・論文試験対策

面接・論文試験については以下の書籍を参考にしました。現職採点官の方が執筆しているので、安心感のある内容です。

独学のデメリット、面接対策・論文添削をしてくれる人を確保することの難しさは私にもふりかかることになりました。論文試験はコロナの影響により受験機関が実施を中止したため杞憂に終わったのですが、面接対策は逆にコロナにより対面で対策してくれる場所が少なくなり、困り果てた私は親に練習相手になってもらいました。

面接練習はすればするほど良い、と言われます。たとえ1回するだけでも全く違うかと思われます。私もちゃんとした面接練習は1回だけでした。練習のメリットとして、試験当日にぶっつけ本番による緊張で萎縮しなくなる、ということ以外にも自分では気づかない仕草や言葉遣いの癖に気づける、思ってることを話すことの難しさが分かる、といったことが挙げられます。

2-7.受験機関

最後に受験機関について。公務員試験は受験料が無料&併願可能なので、志望機関以外にも受験する人が多数存在します。通常4月に先陣を切る国家公務員総合職試験から市役所の秋日程まで、10近くの機関を受けるパターンも普通にありえます。

複数機関の受験は「どこかしらに合格をもらえれば…」という保険の意味として意義があるかもしれません。しかし、これは私の持論として、受験先はできるだけ少数に絞るべきであると思います。1つだけだとさすがに心もとないとしても、2つから3つ程度に。これには①準備することの増大化②面接で詰められるリスクという2つの理由があります。

①準備することの増大化:まず公務員試験は受験機関ごとで試験科目や内容が異なっていて、いたずらに多くの受験先を抱えると、対策・準備しなければならないことの増大を招きます。限られた時間を効率よく使うためにも、しなければならないことは極力精選したほうが効果的ではないでしょうか。

②面接で詰められるリスク:そして面接に進めたとしても、第一志望でない機関で詰められるリスクが、複数受験には存在します。これは公務員試験というより就活の性かもしれませんが、私も第一志望ではないにしろ、せっかく進んだ大学職員の最終面接で落ちています。なぜ落ちたかの本当の理由は与り知るところではありませんが、本当に行きたい機関であるからこそ、面接官に思いが伝わるものです。せめて多少なりとも興味のある機関を受けることを強くおすすめします。

3.もらった最終合格は1つだけだけど

そして8月末、全ての試験を終えた結果、最終合格を得られたのは政令市だけで、大学職員は2つ受けた大学どちらも不合格でした。教採を受けず、民間就活もせず、公務員試験1本で内定1つのフィニッシュというのは、思い返せばカイジの鉄骨渡り並みにギリギリの就活であったと感じました。しかしながら、本当に働いてみたいと思えた受験機関に合格をもらえたので、まさに「終わりよければ全て良し」でもありました。

これで私の公務員試験の記録は終了となります。正直教育学部生の使命、また王道の受験方法から逸脱する孤独なルートではありましたが、最後には確固たる志が最強の武器になるということを確信しました。

もし教育学生で公務員試験を受けるという方がいれば、少しでもこの内容が参考となれば幸いです。またここには書ききれていないことも多々ありますので、DMなどで質問して頂ければ分かる範囲内でお答えしたいとも思います。

さて就活が終わっても続くバイトに授業と卒論。しっかり卒業できるようにゆるく堅実にやることやって行きたいと思います。

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