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クリスマスディズニーシー単独プレイ記録

(内容は「はてなブログ」に2019年12月10日に投稿したものです)

去る12月8日。世間は既にクリスマスの華やかさに包まれていたこの日、私は一人ディズニーシーを敢行した。何のことはない、理由は単純に、

クリスマスのディズニー撮影楽しいだろうなぁ

といった、ごくごく平凡なものであったのだ。以前ディズニーシーを訪れたのは、まだ私がフィルムカメラを携えていた10年以上前のこと。一眼レフを装備した今の私にとって、ディズニーシーは撮影未開拓地と言っても過言ではなかったのである。

 ちょうどバイト先の研修が松戸であった当日、JR武蔵野線を使えば30分ほどで舞浜に到達すると知った私。もはやこの日を差し置いていつ行くのか。迷いはなかった。私は研修が終わると革靴を駅へと走らせ、スーツ姿のまま車両に乗り込んだ。

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ちなみにこれは厳密な定義における「一人ディズニー」にあたるのだろうか?と一人ディズニーをエクストリームスポーツとして認定しているアンサイクロペディアを参照したところ、以下の条件に抵触していた。

・カメラ以外の電子機器は持ち込み禁止→スマホ持ってた
・第三者との接触及び会話を禁止→頼まれて写真とってあげてた
・笑顔を絶やさないこと→後半多分真顔だった

したがって、厳密には一人ディズニーではないのかもしれないが、今回はどうか許してほしい。(改めてアンサイの条件の厳しさに驚いている)

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舞浜駅からディズニーシーまで徒歩で行けることは事前の調べで判明していたものの、(面倒くさかった)普段はまず乗らないであろうディズニーリゾートラインが気になり、これに乗って行くことにした。この時点でかなり気分は高揚している。

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余談ではあるが、リゾートラインに乗り込む前、改札を抜けた先にあったクリスマススペースに、ダッフィー系列の人形が多数置いてあった。「サービスで置いてくれてるのかな、気が利くな」などと、謎な上から目線を放射していた私であったが、この後驚くべき光景を見ることとなった。

なんとこれ、全て私物であったのである。

これは私がにわかディズニー利用者であることにも原因があるのかもしれないが、まさかこれだけの量の人形をわざわざ聖地に担ぎ込んで来ようとは、思いもしなかったのである。男女二人組の夫婦と見られる両者は、写真を撮り終えた後、この人形たちを慣れた手つきで袋に詰め込んでいた。ディズニー魂おそるべし。

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さて話をディズニーリゾートラインへ戻すと、車内はクリスマスラッピングが施され、前面展望席には多くの子ども達やスマホで動画を撮影するいい歳した大人たちが群雄割拠していた。この時点で私の精神年齢は小学校1年生レベルまで低下し、ただ純粋に目的地であるシーが近づいているこの瞬間を楽しんでいた。

今日は東関道で通り過ぎるだけじゃない。

今日はイクスピアリに寄るだけじゃない。

中に入って楽しめるという事実が、私の心を湧き立たせて止まなかったのである。

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チケット購入にはさほど時間はかからなかった。午後三時から使えるスターライトパスポートを手にした私は迷うことなくゲートへ向かい、定番の巨大地球儀の右側をすり抜け、メインアーケードへと歩みを進めた。

ディズニーシーの撮影を行うにあたって魅力的だった点は、やはりこの異国情緒溢れる建物群であろう。総費用1万円以内でプチ海外旅行ができると考えれば、むしろ安いのではないだろうか?(ここで既に思考破綻が起きていた。)興奮冷めやまぬ私は、このアーケードで実に10分以上を撮影にかけながら通り抜けたのであった。周りを行く人やBGM、全てが新鮮に感じられた。

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今回の訪問はあくまでも撮影(とディナー)が主目的である。アトラクションやパフォーマンスはその片手間にある程度楽しめれば良い、と割り切っていた。

撮影に関しては、いわゆる「ディズニー的な」ものが撮りたい、というわけでもなかった。ここにカメラを持ってくる多くのファンは、例えばパレードのキャラクターを撮りたいとか、そういった目的を有していることが多いと思われる。しかし私は、パーク内で「発見」的な撮影をすることを楽しみとしていた。上の4枚の写真は、そのスタンスを如実に表した写真を言える。ちょっとした通り道、裏道、看板など、隠された「映え」スポットを見つけ、そこをあえて撮るという特別感が楽しいのである。

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アトラクションは片手間に、と言っておきながら、心が貧乏なのでせっかく同じお金を払って入っているのだから何かしらには乗りたかった。しかし時間も時間の為、人気アトラクションの大方はファストパスが全て飛んで行った後だった。かといって絶叫系は遠慮したかったので、10年前にも乗った海底二万マイルをもう一度体験してみることにした。

ビッグバンドビートの抽選券が(一人だけだったからか)当たっていた手前で、時間が間に合うかどうか微妙な頃合いではあったが、とりあえず待機列へと並んだ。ここで一人ディズニーの欠点が判明した。

待ち時間の話し相手がいないのだ。

今回は45分と「比較的」短い待ち時間ではあったが、これを一人で、真顔で、待つのである。しかも運の悪いことに目の前にはダブルデートと思われる4人組がさも楽しそうに写真を見返したり、スキンシップをしているのである。

そんな中私は何をしていたかと言えば、待機列からセットを撮ったり、ツイッターを見たり、ごちうさの曲をウォークマンでひたすら流したり、とにかく暇を潰すことに執心していた。ディズニーでウォークマンとは、なんとも滑稽な姿である。

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ビッグバンドビートには何とか間に合い、20世紀初頭のニューヨーカーの気分を維持したまま、いよいよお待ちかねのディナーに向かうことにした。

場所はリストランテ・ディ・カナレット。ベネチアゴンドラのすぐ脇にあるイタリアンレストランである。プライオリティ・シートで予約していたため、すぐに席に通してもらった。建物の中かテラスの席か選べたが、どうせなら外の景色を見ながらたべたいと思い、テラス席を要望した。

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テラス席には天井吊り下げ式の屋外用ヒーターがあったり、またブランケットを貸してくれたりしたため、予想以上に快適に過ごすことができた。注文する品は事前に決めていたクリスマス限定のスペシャルセット。2900JPYは、普段大学の昼食を300円台で済ませている私からしてみれば異例の出費ではあるが、財布の紐はすでにゆっるゆるであったから気にはしなかった。

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メニューは以下のとおりである。(ディズニーHPより)

・アンティパスト・ミスト(合鴨胸肉のオレンジソース、パンプキンサラダ、チーズクリームのツリー仕立て)
・スパゲッティ、ウニのクリームソース
・リコッタクリームのストロベリーソース、メレンゲとライムのセミフレッド添え

普段まず食べないであろう味や、丁寧に盛り付けられた具材。

ここには私だけの「特別」が確かにあったのである。(は?)

同じ2900円をかけるのであれば、サイゼリヤの方が十分に腹を満たすことができるであろう。確かにその通りである。しかしここでの食事は、精神的にも満たされたのであった。なるほど場所は大事だと感じた瞬間である。

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さてこの後の私の様子であるが、最初にディズニーリゾートラインに乗ったころの小学1年生の精神年齢が少しずつ実年齢に追いつきつつあった。それは単純に歩き回った疲労によるものかもしれないが、何と形容すればよいか、

雰囲気で腹いっぱいになってしまったのである。

クリスマスのディズニーは確かに美しい光景と雰囲気に包まれていた。確かにその点は満足していたのである。しかしながらもはや子どもの頃のように「あとはお家で寝ればすべて解決…」と思えるような年齢ではなかったことに気付かされたのは、閉園1時間半前の20時半過ぎのことであった。

クリスマスディズニーの雰囲気を十分に摂取した私を襲ったのは、翌日に控えたバイト、大学のゼミ資料作成、冬期講習の準備、公務員試験といった過酷で強烈な現実感であった。この敷地の外に広がる現実は、確かに私を待ち構えているのである。もはやここで死んだ方が私は苦しむことなどないのではないのだろうかと、人気が失せたアラビアンコーストを通り抜けながら思ったものである。お土産を買うときの私の頭は既に冷静さを取り戻しており、夕食に3000円溶かしたにも関わらず、1500円の家族へのお土産を買うか否かで10分ほど迷っていた。

当日はたまたま東京で休日を過ごしていた中学時代の同級生と合流して帰ることができた。夕飯を既に食べていたにも関わらず、夕飯を食べていない彼に付き合い、私は最寄り駅近くの居酒屋にほいほいと入ってしまった。そこでなんと2人前の鍋と更には〆のうどんまでたいらげてしまったのである。私の体は世俗を求めていた。あまりにも美しい世界にいた反動なのか、強烈な俗っぽさを私の体は本能的に求めたのである。

店を出る頃には、時計は既に深夜1時半を指していた。終電もとっくに過ぎ去った暗い駅を通り過ぎ、寒空の下自宅へを足を進めた。

こうして私の一人ディズニーは夢のように終わりを迎えたのである。懸念していたリア充に囲まれることによる居心地の悪さは思っていた以上に感じることなく、むしろカップルや女子高生4人組の「すみません、撮ってもらえませんか?」といった申し出を快く受けてしまう程、私の心は非常に落ち着いていたのである。

それ以上に、一人ディズニーの様々な側面を発見することができた。

・写真を撮るだけなら、気楽にできるから一人が良い
・シングルライダーを利用できる(使わなかったけど)
・思い付きの行動ができる(移動が雑になる)
・間に合うやろ、とか思ってつい走りがち
・話し相手がいないので待ち時間が辛い
・カメラぶらさげてると撮影頼まれる
・1人なので終盤にかけて余計なことを考え始める
・雑念が生まれる

といったようなことが挙げられるだろうか。最後の「雑念が生まれる」というのは本当である。ディズニーにいるにも関わらず、急に自分の生き方はこれで正しいのだろうかとか、訳の分からないことを考え出すのである。ディズニーに行くときは、誰かと行った方が気も紛れて、「純粋な意味で」楽しめるのかもしれない。しかしながら、一人ディズニーは新鮮極まりない経験となることは間違いないと思うので、是非機会があれば挑戦してみるのも良いと思う。

人は常に誰かといないといけないわけではない。

そして人は優美さと世俗のバランスが重要なのだ。

令和最初のクリスマス、みなさんはどのように過ごされるだろうか。私は25日にゼミの飲み会、そして26日から冬期講習で働き詰めとなる。良いお年を。

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