熊本大学 鈴木 先生のプレゼン「コロナ以降の高等教育デザイン」
国立情報学研究所主催、大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム「教育機関DXシンポ」の第40回にて、熊本大学の鈴木先生がお話になったので参加してきました。
開催40回目ということで継続されている点と毎回充実した内容が揃っていて、主催されている喜連川先生の尽力凄いのだなと感じています。
さて、鈴木先生のお話ですが、資料も以下で公開されています。
https://www.nii.ac.jp/event/upload/20211008-07_Suzuki.pdf
(2021年9月28日 YouTube動画リンク追記)
鈴木先生のプレゼン資料をなぞりながら私の考えも挟んでいきたいと思います。
平時に戻るまでの遠隔授業のデザイン7か条
3つ目に挙げられている、「同じ形ではなく同じ価値を追求する」というのがビシッときました。
2019年以前のように集合対面で実施していた授業の手法を、2020年春移行は、(なるべくそのまま)オンラインへ移行・移設しようと努力している先生方が多かったように感じます。
今までの手法が正だと思い込んでしまい、教育本来の価値とは何かを見失ってしまった状態です。
会社の打合せや会議でも、Waht/How だけに注目・話が終始し、Why がない議論と同じだなと感じます。
教育本来の価値を押さえつつ、では実際の授業ではどうしたらいいのかを検討していくのが本筋です。
また、授業ではどうしたらいいのかとう手法の部分に関しては、以下の要素が重要になるかと思います。
・ 先取りした行動
・ 情報のキャッチアップ力
・ 新しい環境(考え方や手法・ツール)への順応性
いきなりオンラインで授業といっても、オンライン(ツールを使って)でどのような事ができるのかを知っていないと、自分の授業へ適用することができません。そのため、普段から、先を見越しての調査活動やお試しする行動が重要になってきます。
アフターコロナの大学のニューノーマルに残したい5つの要素
2020年春休みの米国を直撃したコロナ禍は、「史上最大の非伝統的教育の実験であった」という表記にはワクワクしてしまった。
目指すは、Improved Student Engagement
エンゲージメントというと、企業人の私の解釈では、帰属意識 や 組織へのポジティブな感情 という認識が強い。従業員エンゲージメントが耳に慣れている。
ここでいう学生エンゲージメントは、私が普段耳にしている従業員エンゲージメントと捉え方が異なるようだ。
上記の帰属意識やポジティブな感情の他、授業活動への積極的な参加や関与といった行動的な要素も学生エンゲージメントに含まれるようです。
以下の資料詳細
「学生エンゲージメントの一考察 ーアメリカにおける学生エンゲージメント調査(NSSE)の発展ー」相原総一郎(愛知大学)
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/3/37319/20150526104626227478/DaigakuRonshu_47_169.pdf
具体的な5つの要素
1.意味生成のための協働的テクノロジー
(Collaborative Technologies for Sense-Making)
”デジタル”コラボレーションテクノロジーは、今までの対面授業では実現が難しい、複数でより濃いコミュニケーションを可能した。成果物を協働で作成するだけでなく、作成した成果物に関して、他の学生や教師からフィールドバックを得られる。多様な考え方や分析を得られ、そこから批判的思考のスキルを進展させることができる。
2.学生とテクノロジーの学生エキスパート
(Student Experts for Learning and Technology Support)
コロナ禍前から、学習を支援する上で、ピアチュータリング(上級生が下級生を助ける)・学生間の相互作業は重要であると認識されていた。パンデミックの間、学生アシスタントは、教師をデジタル面で支援する場面(オンライン授業運営の支援からツールの選定など)も多くあった。学生アシスタントが狭義の学習支援(単に学習内容を教える)だけでなく、より広く活躍できるように、役割や権限の拡大を検討することが必要である。
3.インフォーマルコミュニケーションのためのバックチャンネル
(Back Channels for Informal Communication)
多人数が参加するリアルタイム・オンライン授業の場合、学生がミュートを解除して意見を発言・共有することはハードルが高い。代替手段として、普段使い慣れたテキストチャットを使い、挙手・発言よりも気軽に意見のやり取りが可能になる。音声コミュニケーションの裏側で行われるテキストチャットでは、質疑応答、多様な意見表明、学習者相互や学生アシスタント・教師からのコミュニケーション・フィールドバックが行われ、その結果、学生の授業への積極的な関与を促すことができる。
4.協働学習のためのブレークアウトルーム
(Digital Breakout Rooms for Collaborative Learning)
ブレークアウトルーム(数人ずつの小部屋)を使うことで、エンゲージメントと学習を促進することができる。このブレークアウトルームは、授業の時間進行上の様々な場面で活用することができる。例えば授業冒頭で学習内容へのアテンションやモチベーションを高めるために、小ブループでこれからう学ぶ内容に対しての期待をディスカッションしてもらう事に活用できる。授業終盤で振り返りや質問のまとめにも活用ができる。
5.学習空間拡張のための授業録画の提供
(Supplemental Recording for Expanded Learning Space)
授業を録画するハードルが低くなり、授業を録画・配信している先生も多い。その目的は、始め欠席者対応の意味合いが強かった。新たな2つの視点でメリットが生まれた。1つ目は、欠席者以外の学生が復習目的で視聴 や 外国人学生の再学習する機会が提供できる。2つ目は、教師への授業分析の機会を提供できる。これの意義は大きい。時空を超えて学習空間が拡張できることのメリットは大きい。
自主的に学習できる人とそうでない人との差が格差の原因
日本財団(2020.5)第26回 18歳意識調査
上記調査でも、学習環境(家庭の物理環境、塾、デジタル環境など) 面以外にも、学習者本人の資質(学ぶ意欲や意思を強くもって勉強を継続できる)による差が格差につながっていると示されている。
何を目指して何を残し何を始めるのか
先生が懇切丁寧に教えるのはやめ、自主自律的学習を育てる。
学ぶ環境を供与し、動機づけとペースメーカを担当にする。
知識詰め込みではない。より高次の学びへシフトする。
👆 覚えてから応用(基礎から積み上げ)ではなく、応用する中で覚えてしまうアプローチ
授業時間内で何を実施するのか + 授業と授業の間になにをするのかをデザインする。というのが、同期・非同期ブレンドの本来の形
高校までは、バカ丁寧に ”教える”。大学にはいると、自ら考える・学ぶ。このギャップを乗り越えられない学習者が多いように感じる。
以下雑記
出来る学生は、学習手段が変わっても目標を到達できる。
Learning Analytics で 学習異常を detect し救う・補助する のではなく、自ら学習できる人を育てる。
よろしければサポート宜しくお願いします。研修用機材購入にあて記事にさせて頂きます。