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成長し続ける企業の見極め方

気がつけば、コンサルティング業界に25年もいた。四半世紀もいると、コンサルファームに入社が決まった方々に、「コンサルタントを目指す上で、何を勉強しておいたら良いですか?」とよく聞かれる。昔と違って、MBAなどを保有していなくても、コンサルティング会社に入社する人は多数いるので、事前に勉強しておきたいということらしい。以前にもお話ししたが、私はとりあえず四季報や日経情報を読み込むことを推奨している。全企業が無理なら、マザーズ上場企業だけでも読み込んでビジネスモデルを理解してみては?と話している。

実際に実行されているかどうかは定かではないが、実行したらかなりの効果があるはずだ。そもそも、ビジネスパーソンの多くは、世の中にどのような会社があるかの全容まで把握はしていない。もちろん、目の前の仕事をやっている分には、把握する必要もないだろう。コンサルティング会社ですら、業界プラクティスができているため、担当する業界以外のことは興味がないかもしれない。しかし、ビジネスシーンが目まぐるしく変化し、先行きが見えにくい中、存在する全ての会社を把握することで、世の中の企業のランドスケープを把握することができる。全体を把握すれば、自分の置かれている立場もわかるため、今後どうしていくべきかも見えてくるはずだ。

DIを創業してまもない2002年の暮れ、一緒に働いていた若い当時20代のプロフェッショナルのM君に以下の宿題を出した。

「来年、ベンチャー向けセミナーをするから、成長し続けるベンチャーとは何か?考えて欲しい」。当時M君は20代前半、論点を出した上で、成長し続けるベンチャーの定義を決めてあげた(以下のスライド)




2002年の暮れなので、すでに四季報CDーROMがあったが、分厚い四季報も渡して、正月休みに分析してもらうことにした。

1992年から2001年までの10年間、地方上場または店頭市場から東証へ昇格した企業を全てリストアップし売上・経常利益のデータを獲得し、そこからステップ2、ステップ3・・・ステップ5とスクリーニングを行ってもらった。せっかくの正月休みなのに、M君は四季報の分析をすることになるのだが、彼の努力の甲斐があって、非常に面白い結果がでた。ステップ4に残った企業は8社、最終段階のステップ5に残ったのは企業は5社であった。

今から17年前の分析という前提で見ていただきたいのだが、5つのステップをメカニカルに行った結果は以下の通りである。




2003年正月明け、M君が出した分析結果は、一位がドンキホーテ、二位がパーク24。成長率で言うとドンキホーテが圧倒的であった。今でこそドンキホーテは売上1兆6000億円、時価総額1兆5000億円であるが、当時のドンキホーテは売上1200億円。今の10分の1以下の大きさであった。当時は、同業他社のMr Maxや北辰商事という会社と肩を並べ、2000年、2001年に一気に抜き去った頃である。

2位のパーク24も、今年はコロナ禍で苦労されているものの、昨年の売り上げは3200億円、経常利益220億円という大会社。2002年当時は、売上450億円、経常利益は45億円前後であった。

ステップ3の経常利益の10年間の年間成長率が40%以上というのは、かなりハードルが高く、さらにステップ4の、10年間一度も減益になったことがないという条件は、10年間成長続けたという証明である。すなわち、ビジネスモデルが盤石で、今後の成長が約束されたわけではないが、今後も成長する可能性が高いということを示していた。

さて、何が言いたいか。当時のM君は、通信機メーカーの社員から転職してきたばかりで、MBA的な知識もなければ、ビジネス経験も2年程度であった。もともと性格も明るく、地頭がよい優秀な若者であったが、上場企業のデータと格闘したため、彼はどんな分野が成長するのか?、どんな企業が存在するのか? というのを10日間ほどで、手触り感を持って把握することとなった。

その後、ステップ5まで残った5社の事例研究を行い、共通するエッセンスを抽出して2003年にベンチャー企業向けセミナーを行った。現在M君は、たくましく成長し、DIを退職して東南アジアで事業を立ち上げている。

今回ご紹介したのは、2003年ごろに行った分析結果である。これを2020年で行っても、色々と示唆深い結果が出るはずだ。上場企業データを分析するツールがSPEEDAやバフェットコードなど多数存在し、昔みたいに手入力しなくてもよくなった。バフェットコードは無料でかなりの分析ができるので、我こそはという方は、ステップ1から5を実践してみると、誰もが知らない新たな発見があるはずだ。

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