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第四の経営資源 経営の意思

ここ数年ベンチャーマーケットに流入してきた資金は、金利の上昇と共に急速に縮小し、ベンチャー企業の資金調達も以前と比して困難になりつつある。リーマンショックの時も同様なことが起きたわけだが、その後は低金利の恩恵を受け、大量にベンチャーに資金が投下されたのはご存知の通りである。

この手の話は、2000年のITバブルの崩壊、その後のリーマンショックと繰り返されてきたわけだが、その度毎に大企業のベンチャー投資の熱は冷めてきた。CVC(Corporate Venture Capital)を設立しても、熱が冷めたら縮小し、減損対策で経理部門も担当者も疲弊するということが多かったが、果たして今回はどうであろうか。

企業が、創出→成長→成熟→衰退のサイクルにおいて、多くの日本の大企業が成熟・衰退のステージに来ている中、新たな事業の種を探さなくてはならない。今回ベンチャーマーケットに資金が流れず、金の出し手が少なくなる中、大企業にとってはある意味大きなチャンスかもしれない。

25年もコンサルティング業界にいたので、大企業における新規事業関連のプロジェクトは数多く経験した。どのあたりにビジネスチャンスがあるかをサーベイし、自社の強みが活かせるか、競合優位性はあるか、ビジネスパートナーは?・・・などなどオーソドックスなやり方を行うわけだが、恥ずかしながら実現したものは、そう多くない。

私が在籍していたドリームインキュベータにおいても、こんな事業をやってみたら面白いのでは?というアイデアはたくさんあったが、それは私がやりたかっただけで、担当者は別にそこまでやりたくなかったのかもしれない。つまり、振り返ってみると、新規事業をやりたいという経営の意思が存在していなかったのではないかと思うのである。社長は新規事業をやれ、コンサル使ってここにチャンスがあるらしいぞ。とやったところで、アサインされた人間はやりたいわけではないかもしれない。それを経営する意思が薄いのである。

一方、これがやりたい!、こんな事業をしたいと会社で騒ぐやつは、会社からしたら扱いに困るタイプが多く、放置しておくと会社を辞めてしまい外に出てしまう。

以前書いた組織OSと新規事業という記事の中で、会社というのは、長年の歴史において組織OSなるものと、それに最適化された事業(アプリ)が存在し、時間をかけてお互い最適化を研ぎ澄ますということを書いた。最適化されれば最適化するほど、効率が良くなり会社も儲かるし、出世もする。そうなると組織OSにマッチしない人材や事業は弾き飛ばされる。

しかし会社としては、事業環境が衰退へ向かう中、何か新しい事業を探さねばならない。コンサル頼んで、サーベイしてここにチャンスがあるらしいぞ!と言うことで、そこに人をアサインして事業を始めたりするわけだが、結局うやむやになってしまうことも多々あるはずだ。

結局なんだかんだいって、大企業で新規事業が成功するパターンは、強い経営の意思があることが前提である。人からここにチャンスがあるからと言われて、そこに呼ばれた人がやる新規事業には、経営の意思は一般論として薄いはずだ。

常々思うのだが、
 ・ベンチャー社長は、強いビジョンと意思+エナジーがある
 ・ベンチャーキャピタルは、資金と経験とネットワークがある

これをお互い交換しましょうと言うことで、投資が成立しているわけだ。ビジネスチャンスがあっても、意思がなくエナジーを感じない人に投資家は投資したりしない。つまり、ビジネスチャンスよりも、経営の意思やエナジーの方が優先するのである。

企業が成長しているときは、人、モノ、金が大事な経営資源であることは間違いない。しかし、今後新たな事業を行うのであれば、「新たに事業をつくりたいという経営の意思」が重要な第四の経営資源となるはずだ。

多くの会社が、妙な経営の意思を持つ人材は、扱いにくく排除してきた。とにかく色々と言ってくるのでめんどくさい。上司の言うことを従順に聞いて実行する方が、はるかに扱いやすい。しかし、これからはこれらの扱いにくい「意思を持つ変人」をどれだけ会社の内外に持つかと言うことは、企業にとって非常に重要になるはずだ。新規事業のコンサルティングにおいても、ビジネスチャンスを考えるだけでなく、その扱いにくい変人を世の中に出すための編集者やプロデューサーの役割が求められる。

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