見出し画像

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #00 環境と建築を考える

建築をつくることの本質の一つが「環境との応答性」だとすると、当然、建築はそれが建つ場所の特質や状況に左右されるはずです。

かつて、産業革命が進み、人が豊富に資源とエネルギーを利用することが可能になったとき、建築をつくる技術もまた、その「場所性」から解放されました。建築を作る素材がそれまでは、建築が建つその場所にある土や石や植物、動物から得られるもので作るしかなかったのが、ガラスや鉄、セメントなどの大量生産型の工業製品にとって変わられたのです。工業材料を使えば、世界中に同じ品質と性能の建築を作ることが可能になりました。いわゆるインターナショナルスタイルであり、結果的に建築の風土性、というものがだんだん顧みられなくなってきたといってもよいでしょう。

ル・コルビジェのような近代の建築家が牽引してきたこうしたスタイルは、建築の輝かしい未来を目指すものでした。また、それは同時にその時代を覆う、社会主義的な思想と相まって世界が平和になるためには、建築の民主性、平等性のようなものが、近代建築が目指すこととして捉えられたのでしょう。

面白いことに、同時代に開発された技術として、「空調」(空気調和)があります。いわゆるエアコン、です。
最初は糸を生産する工場で、その糸の品質を確保するために工場内の温度を一定に保つことが必要なことから開発された技術でした。世界で初めて、空気を「冷やす」ということが可能になったのです。

こうして、スチールとガラスでできた近代の建物は「空調」とセットで成立するようになりました。
世界中、どんな気候であっても、この空調技術があれば、なんとかなるようになったのです。こうして、世界中の都市に同じような摩天楼が出現しました。

しかしながら、こうした建物は大量のエネルギーの供給があって初めて成立する建築です。環境問題、エネルギー問題が喫緊の課題として顕在化してきた現在、そうしたエネルギー浪費型の建築の作り方は方向転換を余儀なくされています。
建築もまた環境に対するインパクトを極力抑えるものにすることが大きな課題となったのです。

建築というものが、エネルギー消費を抑え、かつその他の要素でも環境に対してインパクトを極力与えないものにしていくためには、その場所性を尊重し、その地域が持つポテンシャルを極力活かすことが必要になってきます。

そうすることで、建築内部をエネルギーを利用する設備に頼ってコントロールしていくことを極力少なくしていく。建築を常に外部の環境との応答性で捉えていく、そんな意識に転換していくことが必要なのだろうと思います。

そうだとすると、建築は環境から切り取られた「閉じた箱」というそれ単体で思考することの限界があります。建築の外部にある、自然、生態系、果ては宇宙などの仕組みがどうなっているのか? そうした自然や生態系と私たち人間との関係性はどうあるべきなのか? など環境倫理や環境哲学のようなものを包摂した新しい環境建築像を再構築する必要があるのではないか、と思うわけです。

そうした思考を掘り下げる中で、私は「バイオシェルター」という本に出会い、やがて、「パーマカルチャー」というデザインの考え方に出会うことになります。

(まだつづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?