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アンテベラム

Antebellum(2020年製作の映画)
鑑賞:2021/11/26、記事公開:2021/11/26
監督:ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ、脚本:ジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ

※※※ ネタバレ注意! ※※※

ゲットアウト、アスの関係者(ジョーダン・ピールは関係ないみたい。ブラムハウスでもない)が絡んでいるという話と、タイトルやビジュアル、佇まいが不穏ないい感じだったので鑑賞。仕事のタイミングもちょうどよく劇場で見れた。


何も調べずにいたので、大変楽しめた。

映画は差別に踏み込んでいて、挑戦的で良かった。
あえて悪いやつが悪に振り切っているのは、物語の要請だとおもう。
差別についての映画なのか、差別を題材にした映画なのかは微妙なところがある。

この手の映画を理解する上での前提として、人種差別は他人事ではないが、外国に出かけたことすらない日本人としては「暴力は良くない」という以上の事はなかなか言えない。

昨今の事情も踏まえると、繊細な問題にもかかわらず、臆せずに現代のテーマとしてむしろ果敢に挑んでいった意気込みは伝わった。
いわゆる白人がどう受け止めているかは興味深い。
キャストに(多分)プレシャスのプレシャスが出ているので、ついついプレシャスの影がさして「まあプレシャスほどではないし」と言う心の声が聞こえてしまう。(自分がプレシャスをドキュメンタリーとして認識しているからかもしれない)
主人公のお姉様はイロイロとやる事があって大変そうだが、活躍度合いも華々しいし魅力的。

表現は大胆なワンアイデアをシンプルに一点突破。潔くてイイ。
この題材をやり通す勢いもいい。

ネタバレに触れずどこがどうイイかは言えないが、見ても損はない気がする。

追記
あまり悪役が描かれていない、絶対的な悪としか描かれていることから、「差別についての映画なのか、差別を題材にした映画なのかは微妙なところがある。」と書いた。しかし、考えてみるとアメリカ(もしくは人権活動)ではいちいち説明するまでもない常識というか認識があるとしたら話は変わってくるかも。

他に面白かった点。
奴隷貿易やプランテーションでの奴隷労働などは歴史的事実として知られているし、70年後半(日本では80年代)にはドラマの「ルーツ/ROOTS」やスピルバーグの「カラーパープル」(1985)なども発表され次第に認知は広まっている。近年は人種問題を取り扱うことに以前のようなタブー感はなく(昔はあった気がする)、奴隷そのものが主題ではない映画やドラマ(自分が記憶しているところではクラウド・アトラス、アメリカン・ゴッズとか)でも見かけるようになった。
が、今作では、歴史的事実として認知されているプランテーションの風景を現在と繋げることで、奴隷貿易の悲惨さや人権蹂躙の度合いを改めて認識し直され、且つ、それは現在でも行われていると印象付けられた。
後半、あの呼び出し音が鳴った時の戸惑いは、いつの間にか過去の出来事として遠ざけていたものが突然目の前に現れた戸惑いで、今まで味わったことのない種類の心の動きだった。
なので前言撤回。今作は堂々「差別についての映画」との認識にいたりました。

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