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ディック・ロングはなぜ死んだのか?(2019年製作の映画)

The Death of Dick Long
鑑賞:2020/11/29、記事公開:2020/11/30
監督:ダニエル・シャイナート、脚本:ビリー・チュー

※※ ネタバレあり ※※

今となっては期待を裏切らないA24制作配給作品。
劇場公開は見逃していたけどタイミングがあったので鑑賞。


相変わらず面白かった。特に何がどうということもないけど見れるのが不思議。お話の引きとしてはディック・ロングさんの死因だけど、それがお話的にどんでん返しというものでもない。その点でA24関連では「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」や「WAVES/ウェイブス」で似ている部分を感じる。耳目を引く事件はあるけど、テーマとしてはあくまでのその事件に直面する人たちのあり方を見つめる距離感。予算がかかってなそうなところも似ている。アクションやCGでのトリッキー画面なんかで見栄えを上げようとしていない。ひょっとしたら低予算でも面白い映画は作れるという信念があるのかもしれない。そこはどうかわからないけど、必然的に役者の芝居が立ってくる。しかも、あんまりスター推しというわけでもない。だからなのか、本当に事件に遭遇して困っている人がそこにいるように見えてくるから面白い。これは役者冥利に尽きる方針だと思う。
不思議な点としては画作りで、各場面が生活感を感じるのに美しい。夫婦で言い合いをしているシーンなんて今までいくらでも撮られている絵面だろうにそれでも見ていて飽きないのはなんでだろう。なんかコツがあるんじゃないと思っている。「WAVES/ウェイブス」の時はビビットなカラーグラデーションを挟んだりして工夫してた。

「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」は閉塞感のあるコミュニティで個の恥部のようなものを巡る葛藤のお話と受け取った。素材が下ネタであることはそんなに気にならなかった。面白かったのは、悲しくも滑稽な出来事に対して困惑する様。その点で若干コーエン兄弟の「ファーゴ」も意識しているのではと思った。捜査官もファーゴのフランシス・マクドーマンドを思わせる。こんなことでもちゃんとした映画になるんだというのも驚きだった。

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