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相談事例と天風哲学(事例3) 7

(菓子卸売業の例)
 当社は県内一円と近隣県のスーパーなど主に小売店に菓子類を卸している菓子卸売業である。小売店の廃業などで年々取引高は減少傾向にあるが、県内でも有力卸売業であるだけに知名度も高く、また市場占有シェアも高い。
 
流通業や菓子業界の流れが、そのまま当社の業績の影響し、厳しい状態を招いている。このことは当社が現状を認識しないで、将来に対する方向性を見いだせないまま、ただ流れに乗って経営していることが大きな問題なのである。
 
 このような状態であるにもかかわらず、社長は毎月の営業会議で従業員に対し、売上高や訪問数など目先の数字結果ばかりを追求している。そのため従業員の多くは会議のたびに委縮し、前向きな発言や提案などは出せず、社長の一人舞台で終わってしまうのが常となっている。
 
この会社は社長のワンマン経営が特徴であるが、良い意味でのワンマンであれば事業展開はスムーズに運び業績は上がるはずである。しかし、会議内容をみても実績報告と次回の訪問予定を発表しているに過ぎず、肝心の前向きの会議にはなっていない。
ただ単に業績悪化の原因を従業員に押しつけハッパをかけている。これでは従業員にやる気をおこさせることは難しく、社長の一人芝居である。
 
当社が扱う菓子類はほとんどが大手メーカのもので、県内の一次問屋や特約店としての地位を築いており、また納入先もチェーン店やデパートなど地域に根差した小売店である。したがって、商品や顧客には全く問題はない状態にあるが、菓子卸売業という業態の今後についての認識と先を読む社長の先見性に問題がある。
 
この例では、社長としての資質、人格、管理力、先見性、判断力、断行力など基本となる能力の欠如が問題であり、せっかくの恵まれた経営資源を無駄にしている状況下にあった。特に先代は、ある市の重要な地位を経験し、親の偉大さが重荷なって本人の能力以上のことを求めた結果かもしれない。
 
当例を天風哲学からみれば、社長たる人間性の欠如にある。天風氏は経営に対し、「事業をしている人、その心に信念があるか。どこまでも人間をつくれ、それからあとが経営であり、あるいはまた事業である」と断言している。
 
経営者たる人格や資質がなく親の代を引き継いでいる事例は数多くみられるが、親の代に築いた基盤であろうが、維持していくことは難しい時代に突入したことを意味している。社長たる人間性の重要性を物語っている事例である。

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