オンラインキッチンやってみて分かったこと、課題、これから。
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オンラインキッチンやってみて分かったこと、課題、これから。

いま、あらゆる体験について「オンラインに持っていけるのか?どうやって?マネタイズできるのか?」が模索されている。

オンライン飲み会はすでに市民権を得たと言えるだろう。飲食店もオンライン居酒屋、オンライン料理教室……、各所で試行錯誤が繰り返されている。airbnbもオンライン体験はじめましたね

賢い未来予想をしたり誰かの出す「正解」を待つよりも、リーンにやりながら考える方がいい。ということで、松嶋啓介さんのご厚意に甘えて開催したよオンラインキッチン 。

やってみて分かったこと、課題、これからについて、全部書く。(一人で考えるよりノウハウ含め公開してみんなで考えた方が絶対早くいい未来に近くと信じてます)

投げ銭式でやったが、結局いくらだったのかも書いてるので最後まで読んでもらえたら嬉しいです。

つまりそれは、なんなのか。「問い」の設定。

コロナの影響で個人そして世の中のパラダイムが変わっている。知らなかったカタカナもみんな2秒で覚えた。現在進行形すぎて気づかないけど、半端ないスピードだ。

そうした状況下、「オンライン対応」というのはめちゃ表層。本当のテーマは何かと考えた時、僕は「お店(および料理人)との関係」こそが脳みそをつかうべきところだと考えた。

お店とむすばれる「あたらしい関係」が、実はコロナ前の世界よりも、双方にとってもっと豊かで素晴らしいものになったら。コロナ後がきた時、いまオンラインでむすばれた人たちはこぞってお店に行ってまた関係を深めるんだろうな。そうした妄想をしながら、今回の企画をした。

あたらしい関係は「パーソナルトレーナー」という仮説

詳細は下述するが、結論を先に。料理人はパーソナルトレーナーになるという未来が見えた。

オンラインキッチンは、基本的にはオンラインでやる料理教室。なんだけど、講師の松嶋啓介さん、なんと料理しなかった。レシピに沿って一緒に調理をしていく中で、啓介さんはみんなの質問に答えたり手元を見ながら「○○さんいい感じー」「その玉ねぎデカいから1つでいいかも」、とみんなをサポートしていくだけ。自分は料理をせずワインを飲んでる

料理教室をオンラインに持っていく、というテーマ設定だと分からないけど、「関係性」とした場合、なんかいい匂いしてきませんか?「実際にお店にも行って素晴らしかったけど、お店に何度行っても得られない価値があった」という参加者のコメントに未来を感じた。ここらへんをもう少し具体的に要素分解したところ、後段で書きます。

(ちなみにイベントを経て「これだ!」と発見したつもりだった上記の仮説は、noteプロデューサーの最所さんが既にとても丁寧に指摘されている内容でした。さすが。)

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もうひとつの仮説は「ライバー」

オンライン料理教室ととらえた場合の展開方法としては、実はもうひとつある。SHOWROOMや17Liveのライブ配信のような「ライバー型」。料理をつくっているところをライブ配信する形だ。

ライバー型は人気の料理人かつMr.Cheesecakeがブレークしてる田村浩二さんの動画を見て確信した。リンクした動画はなんと4万人が視聴してた訳でそのスケーラビリティが素晴らしく、かつコメントと講師=ライバーによる口頭レスポンスという双方向性が担保されるのも心地良い。

でも、僕らはパーソナルトレーナー型を軸にもっと考えていこうと決めた。

理由は、ライバー型はインフルエンス力で勝ち負けが明確につきそうなのに対して、パーソナルトレーナー型は小規模分散型のコミュニテイのように多くの飲食店に展開可能性が高いからだ。

オンラインキッチンの価値

ここからは、少し具体的なナレッジ側の話を書いていく。まず前提としてのイベントの内容と流れは次の通り。

人数:
10人+講師+運営2名
利用ツール:zoom
タイムスケジュール:
18:00 - 18:10 オリエンテーション(乾杯・自己紹介)
18:10 - 19:00 レシピ紹介・調理
19:10 - 19:20 質疑応答、チェックアウト(感想・フィードバック)
スタイル:
パーソナルトレーナー型(シェフが参加者の手元動画を見ながら指導する)

今回の形で確認できた価値は、色々あるがポイントとしては次の3つ。ようは「手軽に便利に」「料理のナレッジが身について」「しかもシェフや参加者と友達になれる。楽しい」。ここに「しかもおトク」が入ってくれば間違いなくなるので、そこは後段で論じる。

①イージー:
交通の手間がなく、自分のキッチンで、慣れた調理環境でできる
②ナレッジ:
料理のスキルや食の歴史や哲学への理解を深められる。(手元の動画を見てもらいながら進めるのでコミュ下手でも自然にシェフに指導してもらえる)
③リレーション:
シェフと仲良くなれる。一緒にお酒を飲みながら、質問をしたり、指導してもらったり。エプロン姿のキッチンの絵はなかなかのエモさがあり、今回はやりきれなかったが、他の参加者と仲良くできる仕掛けもやるべき(案は後述)。

運営にあたってのナレッジ

講師を含む運営側のポイントを、よかった点や見えた課題含めて書く。

①まずは乾杯!

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少なくとも僕らのスタイルではこれ大切。「料理教室ではなくエンターテイメント」にすることで新しい関係が見えてくると信じてる。ちなみに乾杯は今は休業中の本業「美食倶楽部」でも大切にしてきた。

チェックインとしての自己紹介は鉄板で有効。人数や目的にもよるけど今回は10秒ルールで「講師に覚えてもらうワンポイント」でまわしました。

②講師はテクニックより思いを語る

参加者のフィードバックにおいてダントツの満足度があったのが「講師の哲学にふれられた」ことだった。なぜその料理、その手順にしたのか?などの「思い」を伝えることがとても大切。パーソナルトレーナーに期待されているのは、テクニックだけでなくパーソナリティなのだと僕は強く思う。

たとえば松嶋さんは今回、次のような話を随所にまぜながら進行してくれた。

塩なしカレーにした。塩味、美味しいは脳への快楽。それに対して旨味を中心とした料理は、優しい、愛しい。それは自分の体への労いであり、癒しなんです。
いいレシピは色々あるけど、どれも大切なことが書いてない。「時間をかける」ということ。じっくり火を通すことで素材の香りや旨味をしっかり引き出してあげることで優しい味がつくれる。
(刻んだニンニク・生姜を入れた後)シューという音が聞こえますか?ジューと言ってたら火が強すぎです。(その後玉ねぎを投入)音がニンニクのときより低いですよね?同じ音の高さまで調整をしていきましょう。
こうして、五感を使って料理することが大切です。現代は視覚情報が多すぎるので、聴覚や嗅覚をふんだんにつかうことで、癒されるんです。

参加者が最後に言ってくれた「レシピだけならネットにいくらでもある。欲しかったのはレシピの裏側にある温度」というコメントは印象的だった。理解や共感によって「美味しい」が多重的に増幅していく。味覚的満足だけではない食の形がそこにあった。

③トレーナーになれる環境づくり

思いが重要と書いたが、もちろん調理指導がしっかりできることも大切。

・事前連絡:
レシピや食材だけでなく必要な機材なども書いてあげると親切。下記の他のポイントもできるだけ事前通知をする。
・カメラ設定:
参加者に適切にカメラ位置を案内する。「手元をうつす」が基本、だけど「自己紹介とかは顔が見えると良い」ので、固定ツールがあるとやっぱり便利。
・異なる環境への配慮:
講師側として留意すべきは、参加者によって食材の大きさや機材、環境が異なること。同じIHとガスで違うし、動画を見ながら個別のアドバイスをしてあげるととても親切。
・ルール設定:
基本ルールを設定する。今回は「zoomのアカウント名は名前orニックネーム」「音声は原則ミュートで会話するときのみミュート解除」「ビデオは常にON」など周知した。特に講師が声をかける時に呼びやすいよう、アカウント名は大切。ローマ字の人が多かったので日本語にするとか呼んでほしいアダ名にするとかをもっと推奨してもよかったかも。
・テクニカルサポート:
全体の進行を妨げないよう、zoomまわりのトラブルなどはチャットを通じて運営側が行うよう周知する。向きが横になってしまうとかはアルアル。

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ちなみに今回は、どうだろう?と不安になった人がカメラを鍋に近づけるだけでコメントを入れていて、松嶋さんの動画チェックの隙の無さに脱帽した。この「相手を思う姿勢」は実は一番大切なポイントかもしれない。

④事前、事後も楽しめる「余白」の設計

今回参加者のひとりは「カレー、しかも飲みながらOKと聞いて、友人のソムリエに相談してターメリックの香りがするワインを仕入れた。」なんて声を寄せてくれた。お酒に限らず食材や課題図書などでも、参加者が事前から楽しめるフックを設計すると満足度は上がる。また今回はレシピ動画があったので事前予習ができたのも素晴らしかった。

今回つくったカレーは実は元となるソースで、ここにお好みの具を加えてそこからアレンジを楽しめるものだった。これが最高で、参加者にセッション後の楽しみや、そこへ向けた会話が生まれた。「自分のクリエイティビティを発揮できる場の設計」はどんな分野でも本質的な要素。

※ただし「アレンジ食材も用意して!」を事前告知しなかったのは今回の反省。それがあればもっと盛り上がったはず。僕は戻しておいた豆に加え、急遽冷凍庫から鶏もも肉を取り出してぶち込んだ(「冷凍から直でいいですか?」と確認できたのは言うまでもない)。

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⑤参加者コミュニケーションの仕組み

参加者のコミュニケーションのために、今回は「10秒自己紹介」と「最後に感想・フィードバック一言」の2つを用意した。これは良かったが、もっともっとできることがあると痛感した。

アイディアの一つは、事後セッション。講義時間が終わったあと、希望者は「作った料理をたべる会」をできるようにしてもよさそう。すぐに、せっかくならみんなで食べたいよね。

あとは、発信の場。今回参加者には「#オンラインキッチン」での発信をお願いしたが、各自のハッシュタグだけでない「セッション後の体験の共有」の場は要設計。おいしかった!は伝えたいし、共通体験をふんだ人たちならではの関係性が生まれるかもしれない。(このさじ加減は実は相当難題だけど……)

投げ銭はいくらだったのか?逃げちゃいけないお金の話

今回は松嶋啓介さんのご厚意で参加費は無料とたが、一方でプロへの敬意という意味と今後の展開の実験として投げ銭(参加者が自由に決めた金額を払う。払わなくてもよい)をお願いしていた。

現状、当然個人による差分はあり、かつまだ思案中の方もいるが、皆さん一人2000円くらいで落ち着きそう。10人で2万円。これは正直僕が支払いたかった料理人の方へのギャラ(なんとなく3万円?意見聞きたいです)には足りない金額だけど、一つの結果。

なお、致命的な設計ミスをしてしまった。今回noteの記事の下部にある「サポート」機能で投げ銭をお願いのだが、ボタンを押すと100円、500円、1000円、任意金額、の4択の画面が出てくる。ある人は「3000円と思っていたがなんか2000円にしてしまった」と言っていたが、かなり低額のバイアスがかかったと思う)。

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何人かに、なぜその金額にしたのかそのロジックを聞いた。

既存の料理教室との対比として「リアル料理教室マイナス食材費やランチ代」みたいな方や、「講演会」「飲食代の代わり」など様々な意見があった。既存のサービスが比較対象になるのは当然である一方、まったく新しいバリューを提案する意味や可能性を感じた。

繰り返しだが、テーマは「お店・料理人との新しい関係」だ。

価格設定という「期待値設定」を、どのようなバリュー定義で行うのか。料理人の皆さんの経済性を担保しなくてはいけないし、彼ら彼女らの拘束時間やこれまでの努力などへの「想像力」を喚起していかなくてはいけない。そこと向き合うことは、間にたつ僕らの役割だと思っている。

料理人の皆さん、ぜひ#オンラインキッチンを一緒にやりましょう!ユーザーからのリクエストもお待ちしてます

今回、もちろん松嶋啓介さんの力量による部分も多分にあるけれど、「オンラインキッチンを通して料理人とお客さんの新たなつながりが作れる」ことを確信することができた。

僕らはこの取り組みを継続することで、見つけた仮説のブラシュアップそしてよりよい未来へ向けたアクションを重ねていきたいと思う。

現状としては、「パーソナルトレーナー」としての価値が、スケーラブルかつ経済的に持続可能なものになることを目指していく。そのために提供価値を

・料理にまつわる価値(=料理のナレッジや技術、店/料理人そしてレシピの質や数)
・つながりの価値(=料理人および参加者とのコミュニケーション)」

の2つに分けつつ、それらのレベル感やバランスをいくつかのパターンで試していく。高価格帯レストランだけでなくラーメン屋さんともやりたいし、有名無名ももちろん問わない。

お店を閉じて時間に余裕があるお店/料理人の皆さん、新しい食の未来をつくりたい皆さん、是非オンラインキッチンをやってみてください。もしくは、是非僕らと一緒にやりましょう。協働をご希望いただける方、またやり方や集客等不安なことがあったら、美食倶楽部でサポートできるので、お気軽にご相談ください。

そして、食べる側の皆さんも、「このお店のレッスンを受けてみたい!」などありましたらコメントお寄せください。よろしくお願いいたします。

P.S.

WEBサイトオープンしました(4/30)ぜひ一度ご覧ください。

P.S.
参加者の方が早速noteを書いてくれました。その中にある一節「「with コロナ、after コロナの世界」?これは、「どうなると思う?」じゃなくて、「どうしていきたい?」っていう問い。」にとても共感しました。僕も心からそう思う。当日の様子も垣間見れるので是非ご覧ください。


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ありがとうございます!!!
バスク地方に広がるシェアキッチン「美食倶楽部」の日本版を展開しています→2020.4より「オンラインキッチン」スタート https://bishok.club/ 書き手は主に代表の本間。食べ物つき雑誌『食べる通信』やオンライン産直市『ポケットマルシェ』のファウンダーでもあります