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「消費者金融にでも行って、金借りて来いよ」

愛さえあれば上手くいく。愛さえあれば。

会社同僚の彼氏は、同棲の家賃を払ってくれないらしい。
名も知らぬ彼の話で、同僚とたまに話が盛り上がった。

「私が出張中で住んでもいない家の家賃を、私が全額払っているの信じられない。」
らしい。会社員の彼女と、フリーターバンドマンの彼氏、のカップル。
彼女は出張中で、東京の同棲中の家にはなかなか帰れない。

東京都大田区2DK家賃10万円。20代サラリーマンの彼女が毎月ひとりで払い続けるのは苦しい額面。
「家賃は折半にしようね。俺はアルバイトで稼ぐから。」その合意のもとで始まった同棲らしい。

バンドマン彼氏が家賃を払ってくれない、という話は少し前から聞いていた。その不信感についても。
「わたしのこと、こんなに好きでいてくれる人、もう出会えないと思うの。だから大事にしたい。」そんな愛を呟いていたのはたった半年前なのに。

「家賃払ってくれないのがむかつく。でも、追い出す為に、東京の家引っ越すのも正直手間だし、ただただ腹立ってしょうがない。」
わたし「愛がもうお互いないんでしょ。彼氏が彼女のこと本当に愛してて、本当に信頼して欲しいんだったら、まず彼女にお金返すでしょ。消費者金融でも行って、本気で一緒にいたいんです、って伝えるでしょ。」
適当に、素直に、それでも、当たり障りなく、言ってみた。

わたし「正直わかるけどね、その彼氏があなたを手放したくないのも。自分の家賃払ってくれる働いてくれる彼女、めっちゃ都合いいじゃん。なめんてんだよ、いつまでも払ってくれてると思ってるよ。」
適当なわりに、大げさに、それっぽく、知ったかぶりをした。

「いますぐにでも、消費者金融にでもいってお金返して欲しい。何か月払ってないと思ってんのお前。」
翌日、すぐに、LINEでそう伝えた、と教えてくれた。

適当が過ぎた。適当に他人の関係性について述べるのと、当事者が、彼女が彼氏に伝えるのとでは、印象が違う。
「なんか俺が言った手前あれだけど、すっごいヒステリック彼女になっちゃってない?消費者金融、って怖くない?」
お得意のヘラヘラした、仕事片手間におしゃべり。
「えー、あなたがそういったんじゃん。まあでも、銀行から金借りるみたいよ。たった5万。あいついくら私に金払ってないか、全然わかってないんだよ。残り45万はどうすんだろうね。」
残りのお金はどうなるんだろうか。2人の関係はどうするんだろうか。

もっと深い愛さえあれば、
彼氏はちゃんと働いて家賃を払うだろうか
彼女はそれでも今の彼氏を応援して、2人でいることを選ぶのだろうか。

愛さえあれば。

ここまでしか知らない。


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