読書感想-「悪人」吉田修一
悪人と善人の、食物連鎖のようである。起きてしまった殺人事件の咎を、たった一人の「悪人」に背負わせていいのだろうか。
■ためしに登場人物を「悪い順」に並べようとするといい。どこかで手が止まるだろう。小説の深さ、複雑さは、そこに現れる。
■どす黒い欲望に突き動かされる人。その歯車に巻き込まれる人。自分の見たいものしか見ない人……。法で裁かれ、指弾されるであろう祐一が、宙ぶらりんのまま投げ出されている。
■吉田修一さんは、作風の幅がつくづく広い。今回は構成にも引き込まれ、心に直接訴えかけてくるような力を感じた。
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