読書感想-推し、燃ゆ

肉体と精神が裏切り合う持ち悪さが、作品を貫いていた。いたたまれない気持ちにさせるのは筆力の証左だろう

■重くて、醜悪で、人並みに操れない肉体を持て余している。「推し」にのめり込む行動からは、肉体を捨て、美しい精神だけで存在したいという思考が透けて見える

■推しが炎上し、アンチが押し寄せる。恋人の影がささやかれる。ありがちな騒動だが、彼女には死活問題だ。理想世界は土足で踏み荒らされてゆく

■打ちひしがれた彼女のラストが良い。推しと決別し、自分の醜さと折り合いをつけることから、人生は再生するはずだ。汚れた部屋に這いつくばったその時、彼女は読者の「推し」となる。

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