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グレート・ギャッツビー【読書感想】

華々しい物語だった。影があるから、光は存在感を発する。

「グレート」という題と、侘しい結末。ギャッツビー邸の華やかなパーティーと、彼の薄暗い過去。一途にデイジーを追い続けたギャッツビーと、不貞に走るデイジーの夫。そして、生き残るものと、死ぬもの。

この小説は、対比の構図が随所に仕組まれている。映画で言えば、シャンデリアの明かりと、街灯ひとつない夜道のシーンが反復するようなものだ。読者は必死に目を慣らしながら、物語の起伏に振り落とされないように必死についていく。

大学の頃に読んだはずだ。その時はなんの感銘も受けなかった。あらすじすら忘れるほど。

当時はぜんぜん知らなかったのだ。金を稼ぐということ。結婚するということ。夜道を車で運転するということ。大人になった今なら、いろんなことが分かって、面白く読める。

結局、美しさとか、豪勢さとか、そういったものは、自分自身で「そうでないもの」をたくさん目の当たりにしない限り、ほんとうには理解できないのかもしれない。

美しい絵に親しみ、芝生のよく整えられた庭に囲まれて育っただけの少年は、不健全なのかもしれない。彼が手を絵の具だらけにして、樹木の手入れで腕やすねに擦り傷を負うその日までは。


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