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【連載】ノスタルジア大図鑑#06|絵で見る商店街:立石仲見世商店街②

画家・濱田恵理子さんイチオシの商店街を、味わい深いイラストとマニアックな視点で紹介する〈 絵で見る商店街 〉の第2回目をお届けします。

前回に続き“呑んべえ”たちが愛して止まない「立石仲見世商店街」のお店を深堀り!
商店街に通い描き続ける濱田さんだからこそ知る、商店街のあの店この店の魅力をいっしょに探索してみましょう。

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※記事の最後に、濱田さんの展示会情報を掲載しています。「立石仲見世商店街」の原作も展示中。ぜひチェックを!

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第1回はこちら↓

【ノスタルジア大図鑑とは】
昭和やそれ以前、物心ついた頃からあたりまえにあったもの。
めまぐるしく移り変わる時代の中で、気づいた時には無くなっていることも。さまざまな理由で「このまま放っておいたらいつか無くなってしまうかもしれないもの」、後世までずっと残して受け継いでいきたいと思う「日本の文化・日々の暮らしの中の物事」を取り上げ、個性豊かな執筆陣による合同連載ノスタルジア大図鑑としてお届けしていきます。


第2回:立石仲見世商店街 その2

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私がこの『立石仲見世商店街』を描き始めたのは、昨年の夏です。
縦25cm×横幅160cmの画用紙を持ち込んで、自転車で通いながらスケッチしていました。

いざ描き始めると、困難だったのは立石仲見世通りの狭い道幅でした。
お店全体が見える場所を探すと、お向かいのお店の前に立たなければならず、営業の邪魔にならないよう、なるべくシャッターの前やお店とお店の隙間に立って、素早く描くことを心掛けました。

はじめは緊張しながら描いていたのですが、「暑いのに、頑張ってね」とか、「ここの商店街を描いてくれてありがとうね」など、お店の方々が声を掛けてくださり、励まされることがたくさんありました。

『立石仲見世商店街』第2回目は、そんな温かい商店街の人たちのエピソードを交えながら、お店を一軒ずつ紹介していきたいと思います。

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今回は京成立石駅側の入口から入ったときに、左側に並ぶお店を紹介していきます。

向かって左方向に進むと京成立石駅、右方向に進むと奥戸街道。
現在は、駅側にお惣菜屋さんが集まっています。


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立石駅の目の前、入口すぐにあるのが『鳥善商店』さん。
名前の通り、鶏肉のお惣菜を作って売っています。午後から開くこのお店は、夕方になるとご飯の支度をする人たちで賑わいます。商店街の一番端に位置するので他のお店よりも少し広く感じられ、通路に面したL字のショーケースには、ピリ辛味や醤油味などの唐揚げや手羽先、ローストチキンやモツ焼きなどのお惣菜が盛り沢山に置かれています。


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続いてまぐろや』さん。
一軒ずつ右方向(奥戸街道の方)へ移動しながら見ていきます。
手前にある冷蔵ショーケースの中には、新鮮なお刺身が20種類以上置いてあります。一盛りが大体5〜6切れずつになって置いてあるので、好きなお刺身を好きな量だけ(一盛から)買うことができるのが嬉しいお店です。
『まぐろや』だけに、特にマグロのぶつ切りは美味しそうです。お店の真ん中にある大きなまな板があり、そこで捌く姿が見られます。


お隣の『味はら』さんは巻寿司屋さんです。
メニュー台の上にある小窓から覗くと店員のおじさんが中に居り、ガラス窓を開けてニコニコと挨拶をしてくれます。
鉄火巻や納豆巻、かんぴょう巻などの細巻きから、梅トロ太巻(産経新聞「商店街探偵」で名物に選ばれました!)や大阪太巻き(玉子・かんぴょう・椎茸・海老おぼろ・青味を巻き込んだ太巻き)など、このお店オリジナルのものまであります。
注文をしてから巻いてくれるので、私が絵を描いているときも注文をして後で取りに来る、というお客さんがいました。


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麺匠にしわき』さんは、麺屋さんです。
ほかのお店よりも奥行きのある造りになっていて、そこで麺を作っています。ラーメンやうどんはお好みに合わせて太さが色々選べます。別売りでスープや天ぷらも購入できます。
お店を切り盛りしているのは西脇さんご兄妹。気さくな人柄で、私がスケッチをしているときは必ず声をかけてくれます。
お二人のご両親は、戦後まもなくこの場所にお店を出し、商店街が現在の形になってからはお店の2階に住んでいたそうです。2階は現在、物置部屋になっているとのこと。


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『麺匠にしわき』さんを過ぎ、黄色のテントは『丸忠蒲鉾店』さんです。
手作りの熱々おでんで有名なお店です。冷蔵ケースには、種類豊富な練りものが並びます。
小柄で可愛らしいお母さんが、注文を受けてくれます。
よく見ると蒲鉾店の左隣にも『丸忠』の看板が!  
なんと隣でおでんを食べながらお酒を楽しむことまでできてしまうのです。看板の特徴ある文字は、ターザン山本さんが書いたものだそうです。

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丸忠さんには、この絵のほかにもシューマイ巻やあさり天、カレーボールなど初めて見る練りものがたくさんあります。
長時間煮込むことでいろんな具材の旨味が出て、深みのある出汁になっています。


隣の『サクライの餃子屋』さんは、その名の通り餃子がメインのお惣菜屋さんです。
種類が豊富で全て手作り。餃子の他にも、グラム売りのサラダや焼き豚など、どれもハズレなしの美味しさです。

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ここの餃子はモチモチでジューシー。不足しがちな野菜が餃子やお惣菜で美味しく頂けます。
これらのほかにも、お惣菜の種類は日によって変わります。


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最後は『玉起屋』さん。
お店の中にキッチンがあり、ここで調理をしています。

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看板に “珍味食品” とあるので、「どんなものが置いてあるのだろう?」と気になっていましたが、お店手作りの煮魚や煮物など、惣菜20品目、サラダ5品目、魚の煮付けが5品目、焼き魚が6品目……と、目移りしてしまうほどたくさんのお惣菜が並びます。

昔は工場が沢山あった葛飾区。
従業員が帰り道に買ってすぐに食べることのできるお惣菜屋さんは(飲み屋さんも)住民にとってなくてはならない場所でした。ひとつひとつ手作りのお惣菜やおつまみから、下町ならではの人の温かさを感じることができます。


次回は、『玉起屋』さんの先(奥戸街道方向)にあるお店から続きを紹介していきます。
シャッターが降りてしまっているお店も多いので、お店は変わっても残っている看板に注目していこうと思います。


========【商店街に関する色々】========

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私の住む葛飾区には、商店街がたくさんある。
立石仲見世商店街』以外にも、新小岩駅前にある『新小岩ルミエール商店街』(葛飾区と江戸川区にまたがっています)も有名。

私が初めて訪れたときはチェーン店や大手コンビニがすでに入っていたが、もう少し前なら個人商店が盛りだくさんな商店街だったのだろう。
今でも数店舗は昔のままなので、そこから想像を膨らませることができる。

さて、日本には約14,000(2018年時点)の商店街が存在する。
今回はその中でも「一番」を謳う、アーケード商店街を紹介しよう。

日本一長いアーケード商店街は、大阪府にある『天神橋筋商店街』で、2.6kmもある。
逆に日本一短い商店街は、これまた大阪府にある『肥後橋商店街』(※)で79m。ちなみに先ほどの『ルミエール商店街』は420m、『立石仲見世商店街』は約120mある。

日本一歴史の長いアーケード商店街といえば、大分県別府市にある『竹瓦小路アーケード』だ。大正10(1921)年に完成、つまり今年で100年(!)を迎える。近代産業遺産にも認定された、現役の商店街だ。

商店街は家計の味方というイメージがあるが、大阪府にある『千林商店街』は日本一“安い” アーケード商店街として知られている。

そのほか、道の幅が広かったり狭かったり、日本一の高さがある商店街……など色々あるが、一番ではなくとも各商店街にはそれぞれ魅力的な特徴がある。
そういうものを探しながら歩いてみると、いつもの商店街で新たな発見ができそうだ。

※「肥後橋商店街」は現在アーケード・看板ともに撤去されています。

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【INFORMATION】
今回の記事にも掲載している、濱田さんが描いた「立石仲見世商店街」の作品が、現在開催中の『第29回葛飾の美術家展』にて展示されています。
ペンと水彩で細部まで丁寧に描かれた作品を実際に見ることができるチャンスです。
葛飾にゆかりのある美術家の方々の作品も多数展示されているので、足を運んでみてはいかがでしょうか。

会期:2月19日(金)~28日(日)10:00~18:00(初日13:00~/最終日17:00まで)
会場:かつしかシンフォニーヒルズ本館2階「ギャラリー」
*入場無料


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プロフィール_ERIKO HAMADA prof ph

【著者プロフィール】
濱田 恵理子
葛飾区在住の画家。多摩美術大学油画卒業。
現在は主にミリペンと水彩で日本のレトロな建物や商店街を描いている。他に、ベトナム漆絵や油絵も描く。海外で美術教師をしたことや子供の頃から様々な国を転々としたことが、日本の文化や街並みを改めて見直すきっかけとなった。
Instagramや展示会にて作品を公開している。

●Instagram : @ericohama
●Web : https://tatsumasa-e.wixsite.com/erikohamada


「ノスタルジア大図鑑」の過去の連載はこちらから↓


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今一番やりたいのは「編集長の今日のファッションチェック」(連載)です。何卒。

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