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スタートラインに立つことの難しさ

*これはアブラハムがアメリカに到着するまでのたくさんの困難を乗り越えた若者たちの物語です

アブラハム世陸出れるよってよ

その知らせは突然やってきました。
「アブラハム世陸に選ばれたみたいです笑」
アブラハムが世界陸連からのUniversality Placesでの招待状を受け取ったのは6月10日のことでした。楠から知らせを聞いた時は、「おおー!世陸ウェーイ!」って感じで気楽に盛り上がってたなぁ。このあと訪れる困難を僕らは知る由もありませんでした。

出発まであと30日。

※世界選手権やオリンピックにはUniversality Placesという制度があってその国のどの選手も標準記録やワールドランキングでの参画資格を有してない場合に一か国に一名だけ参加枠が与えられるというルールがあります。

アブラハムおめでとう

このお金だれ出すんだっけ?

世界陸連からの招待状のメールには、航空券の一部と現地の宿泊費を負担してくれるとの記載がありました。こんなに負担してもらえるのかと思いつつ、そこにいたみんなの頭の中に?マークが浮かびました。足りない分は誰が負担するんだ?当たり前のように日本陸連に負担してもらっていた世界陸上や五輪のときの遠征費。南スーダン陸連からは、特に自分たちが払うというようなアクションはなく、「俺らが払うのか(察し)」となりました。

「楠の車売って遠征費にしようぜぇ。」と冗談を言いながら、世陸を楽しみにしていたのが懐かしい。本当に出国できるのか僕ら(トシと楠)の戦いが始まる。

出発まであと25日。

これ誰が手配するんだっけ?


日本選手権が終わり南スーダン陸連に連絡をしました。誰が宿や飛行機を手配するのか、ビザも誰が手配をするのか。そもそも、僕ら(日本人)はアメリカに入国するにはESTAをオンラインで申請すればよく、大使館にいってビザを申請すつ必要はありません。疑問を全て投げかけてメールの返信を待つことにしました。南スーダン陸連、世界陸連、アメリカ大使館を相手にした調整の嵐のはじまりです。

出発まであと23日。

VSアメリカ大使館 


横田さんから、アメリカ大使館に早めに連絡をしたほうがいいとの司令がくだり、アメリカ大使館に問い合わせて南スーダンの選手が世界陸上に出場する場合にはどのビザを申請したらよいのかを問い合わせることになりました。問い合わせしようとして電話しようとしたところ、アメリカは祝日なので大使館もお休みでした。なんとなく暗雲が立ち込めてきました。

出発まであと20日。

救世主登場!?

返事がないのでとりあえずBビザ(観光・商用)の書類作成をはじめていたところ、南スーダン陸連の、Secretary(秘書?)から「Aビザ(政府関係者におりるビザ)の申請完了したよ!申請料金も払わなくていいし、面接もないよ」という連絡が!これまでいろいろ動いてきたので、申請してるなら早く言ってくれよと思いつつも、あとは書類提出だけということで、一安心。時間もかからなそうなのでこれでアブラハムの出場はどうにかなるね。めでたしめでたし。


出発まであと19日。

VISAの習得できましたと横田さんに報告LINE。

絶好調

アブラハムは 6/22のホクレン深川大会で自己記録(=南スーダン記録)を更新(動画の1:48.0くらいから)。ユージーン行きのフライトもとり、あとはビザの申請書類を郵送してビザが届くのを待つだけ。なにもかもうまくいっている。世界陸上での彼の走りが楽しみで仕方ない。

出発まであと17日。

事件勃発

事件は唐突に起きるもの。アブラハムが(湯の丸で合宿中)急に僕(トシ)の部屋にやってきました。最初は、楠がいないから僕と話したいだけなのかなと思っていたら、アメリカ大使館からのメールを見せてきました。メールを読んでいたら目の前が真っ白になりました。正気を戻してもう一度読んでみると、「あなたの申請すべきビザはAビザじゃないので、Bビザで申請してください(つまり申請料金の支払いと面接を受ける必要がある)」と。南スーダン陸連に確認すると、「俺が申請したのはBだよ」と。。。

Aって言ってたやん!!!!!wwwwwww

Bビザで申請すると、アメリカ大使館の面接を受けてからビザが手元に届くまでおよそ営業日10日間かかるとの表記もあり、その日の時点で出発まで営業日10日でした。面接の予約もできていない時点で出発まで10日前、どれが最善の策か脳みそフル回転で考えましたが、直談判をしにいこうとするほど、この時のクスと僕はあり得ないほどテンパっていました。

なんとか活路を見出そうとしている楠とのLINE

この絶望的な状況でどうにかしようと、ビザの申請を最短でできるのは、楠と僕のどちらができるか相談し合いながら、終わったと思っていたアメリカ大使館との戦いは再びはじまりました。

アメリカ大使館のレスがあまりにも遅いので、まずは申請をして面接まで予約しようという結論に至り、1分1秒を争う戦いが繰り広げれられました。とりあえず、手があいている楠がBピザの申請書類の作成をし、申請まで至りました。

しかし、

楠、ここで痛恨の申請ミス!笑

トシが引き継ぐも、新幹線で電波が悪く、もう一回申請をやり直しになる。

きっと、神様はアブラハムに入国してほしくないのかなとすら思いはじめてしまいました。もう開き直ってビール飲みながら、この状況すら楽しもうとする我々。そして、楠も練習を削って、寝る間も惜しんで進める ビザの申請作業。

深夜1:00頃に、D S-160の申請と申請料金を払い、面接の予約画面に。やっとここまできたぜ。。。すると、

国籍選ぶ欄に南スーダンないやんwww

南スーダンがパスポート発行の国の項目に含まれていなく面接の予約すらできない状況に陥りました。もう僕は、無理だ。。。という気持ちになりかけていました。ただ、南スーダンの国のために走りたいと彼の意志を聞いた後では、できることは全てやるしかない。無理だったら仕方ないと割り切って、アブラハムをなんとかしてスタートラインに立たせることだけに全力を注いでいました。

出発まで11日前(涙)。

面接の予約完了


また、この日も大使館の営業開始時間と共に、大使館に電話をかけまくる。南スーダンがリストにないどうすればいい、面接の日を直接決めさせてくれ、と半泣きで例の中国の女性の方にお願いしようとしてもメールでこちまで問い合わせてください、面接の予約ができるかは保証ができません、ご了承ください。の一点ばり。この時には、大使館の電話担当の中国の女性の方との芽生えかけていた友情は無くなっていました。(しかし今思うとあたりまえですよね。一つ一つの緊急の要望に答えていたらパンクしてしまいます)

ただただ謝るアブラハム。

Live Chat というおそらく大使館の中にいるアメリカ人にも問い合わせました。ですが、私では対応できないからメールで問い合わせてくれと同じことを言われる。問い合わせたところでその人が解決してくれるわけではない。

そして、スーダンを入れろとメールが来て、すぐにスーダンを入れて面接の予約をしました。スーダンでいいのかよw 

とりあえず予約完了。

出発まであと10日前。もうあかん。

緊急リクエスト


一旦予約をしてから緊急リクエストを申請しないといけないので、面接の予約をしたのだが、最短で10月の面接予定。もうここからは奇跡を願うしかない。緊急リクエストが承認され、面接の日程が確定。出発の4日前。しかも鬼門の土日を挟むではないか!!!ここまで来たら面接の時に直接アブラハムに交渉してもらうしかない。当の本人のアブラハムは楽観的である。これがスターと平民の違いなのか。。。

出発まであと9日。

運命の面接

運命の面接の日 12:45に大使館に連れて行く。2日後にまた大使館にくるようにと言われる。アブラハムはこれで大丈夫と安心しきっているが、メールには、「ビザの発行を保証するものはない」との注釈が。これでいけるだろう、いやけどそんな甘くないか。心配性の日本人たちはまだ信じ切れないでいる

アブラハムの感謝のメッセージ。

出発まで4日前。

運命の日

7月10日に出発予定だったので、この日にビザを受け取れなかったら、アブラハムは出国を遅らせないといけない。

ついに、ビザをゲット!

Thanks god.

出発まであと2日。

出発の日

見送り by 新田良太郎

出発のギリギリまでVISAがなかった彼の出発の日。入国できたら全てが報われる。アメリカよ、すんなり入れてくれ。

オレゴンに到着

アブラハム無事にアメリカ入国。1分を争うやりとりの中、楠と協力し合ってなんとか、アブラハムを世界陸上のスタートラインに立たせることができそうです。アブラハムが南スーダンという国を代表することで、争いをしていた部族同士が一つになれる、子供たちに夢と希望をあたえることができる。1つの国の未来を背負ったアブラハムが世界陸上という舞台にたつことはとても大きな意味があるのです。1500m予選の日は、7/16(日本時間7/17 10:30)。彼の勇姿を楽しみにしていてください!

全てが報われた瞬間。

最後に

気づきましたか?一箇所だけビザと書くべき場所がピザになっていたことを。というのは、冗談で(本当に1箇所はピザになってます)、自分たちの当たり前がどれだけ特別なことかを感じた1ヶ月でした。代表になれば当たり前のように日本陸連の方達がすべてをスムーズに手配してくれていたこと。その1つ1つがすごく大変なのに、基本的には褒められない。少しでも不備やアスリートにとって不都合なことがあれば責められたりする。遠征の費用も日本陸連のスポンサーや国の助成金に支えられ僕らは1円も出さずに遠征ができる。そして、最強の日本のパスポート。いろんな人に支えられて僕らは試合ができていることを自分たちが出国のサポートをすることでより感じることができました。練習の1つ1つ、レースの1本1本をこれからもっと大事にしていきたいと思っています。

ここからは TWOLAPSからのお願いになります。アブラハムの遠征費用は阿見アスリートクラブが負担することになります。出発までにいろんな苦労があった阿見AC、そしてこれからアブラハムと物語をつくっていく阿見ACのサポートをお願いしたいです。阿見ACへのサポート方法としては以下の方法があります。

①Sharksのグッズを買ってサポートしていただく(brooksのシューズや2xuのウェア、俺は摂取すなども購入できます!)
②このnoteからサポートいただく(Noteの投げ銭システムなようなもので、twolapsから全額、阿見ACにお渡しさせていただきます)
③その他ご希望の方法SHARKSホームページよりお問い合わせいただく

ここまで読んでくださりありがとうございました!


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