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正常性バイアスを疑おう

正常性バイアスとは

人間の心というのは、予期せぬ事態に直面した場合に、その事態に対してある程度【鈍感】にできています。

普段の生活の中で、予想外なことがあった場合にいちいち過剰に反応してしまっては精神が崩壊してしまいます。

正常性バイアスとは、心理学用語で【自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりする人間が本来もっている特性のこと】です。

『自分は大丈夫』『まだ大丈夫』といった根拠のない自信って皆さんあると思います。

心を落ち着かせるためには、必要な働きといえます。

しかし、災害時や有事の際にリスクを過小評価し、この正常性バイアスが原因とみられる逃げ遅れによる被害が数多くあります。

過去の事例

・2003年2月18日に韓国(大邱)で起きた史上2番目の死亡者を出した地下鉄火災事故。
煙が充満する車内で、多くの乗客は口や鼻を押さえながらも座席に座ったまま、避難行動をとらずに亡くなってしまいました。
『被害は大したことがないのでその場で留まるように』という車内放送があったことが、より一層リスクを過小評価して被害につながったという事例です。

出典) 防災・危機管理心理学 防災システム研究所
http://www.bo-sai.co.jp/bias.htm


・2014年の御嶽山噴火。長野県の御嶽山の噴火で登山者58人が噴石や噴煙に巻き込まれて死亡しました。
死亡者の多くが噴火後も火口付近にとどまり噴火の様子を写真撮影していたことがわかっており、携帯電話を手に持ったままの死体や、噴火から4分後に撮影した記録が残るカメラもありました。
彼らが正常性バイアスの影響下にあり、「自分は大丈夫」と思っていた可能性が指摘されています。

https://youtu.be/7Ea3uED1Zgc


・東日本大震災では多くの人々が実際に津波を目撃してから初めて避難行動に移り、結果、避難に遅れが生じたことが分かっています。

出典)Wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/正常性バイアス

コロナと正常性バイアス

新型コロナウイルスが未だ蔓延していますが、このウイルスに対して、『自分は大丈夫だろう』『ただの風邪のようなもの』『コロナなんて怖くないんだから、みんなもっと冷静になろうよ』といった考え方をする方もいると思います。

冷静というのは、ものごとを適正に判断することであり、リスクを過小評価して、『どうだ!動じない自分すごいだろう』というのは冷静とは言えませんよね。

多数派同調バイアス

自分の考えとは若干違っていても、多数派の考えにあわせることを【多数派同調バイアス】と言います。

社会で生きていくために【周りに合わせる】ということは集団での意思決定をスムーズに行うために重要となります。

しかし、災害時には前述の正常性バイアスと同様に判断を鈍らせることもあります。

本来ならすぐに避難しなくてはいけない状況でも、このように考えてしまう方は多いと思います。

『みんなまだ避難してないから大丈夫』

重要なことは・・・

まずはこのような心理的な働きがあるということを知った上で、有事の際に『自分は今バイアスにかかっているのでは?』と疑ってみることが大事だと思います。
そして、

①想像力を働かせること

②防災・減災のために訓練や計画を立てること

この二つが何より重要です。

また企業経営者においては、特に注意が必要です。

経営者が正常性バイアスにかかり、誤った判断をして職員や従業員が被害を被った場合に、【安全配慮義務】を怠ったとして、遺族より訴えを起こされることがあるからです。

東日本大震災の際に津波によって、ある自動車学校の教習生24人と職員1人が犠牲になり、遺族らが安全配慮義務違反や過失があったとして自動車学校の会社と役員らに対し損害賠償を求めました。
これに対し、仙台地方裁判所の第一審判決では同自動車学校に対する法的責任が認められました。
(計19億円の賠償命令)

出典)日本経済新聞 宮城の津波26人死亡、教習所に19億円賠償命令 仙台地裁
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG13H03_T10C15A1CC0000/

知識を身につけ、有事の際には正しい行動が取れるように癖づけて、自分や家族の身を守り、会社や地域を守るために事前に備えをしっかりしましょう。

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