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今のレアルBはJ3程度の実力

私は昔から数度ユース選手を持て囃しすぎるなという話を書いているが(プロ選手になるにはユース10世代分程度からの生き残り競争を勝ち抜かなければならない)、最近またレアルBに所属している(た)中井卓大選手について似たような話題が出てきているので、ちょっと書いておこうかと思う。

スペイン3部の実力

レアルBが所属しているスペイン3部は、アマチュア扱いのリーグである。2020–21シーズンまではセグンダBとしてセミプロ扱いだったが、2021-22シーズンからPrimera División RFEF、つまりアマチュアリーグ第一部として正式に改組しており、組織構造的には日本のJFL相当になっている。

スペイン人選手と言えど霞を食っているわけではなく他国の2部3部でプロになれる選手はそちらに流出するため、スペイン3部は(1部・2部のレベルの割に)かなり落ちる。それはスペイン3部とJリーグの間で移籍した選手を見てもわかるだろう。

指宿洋史:柏でプロ昇格失敗→スペイン3部やベルギー2部では2桁ゴール、J1下位~2のエレベーターやAリーグでは2桁ゴール行かないがレギュラー
安部裕葵:J1で活躍→バルサBでは出ればそれなりに活躍していたが、怪我が多くまともに出場していない
カルロス・マルティネス:J2ではぱっとせず。その前後にプレーしたスペイン3部では安定した活躍。
ビクトル:GKだが、スペイン3部から来てJ2、J3のエレベーター

セグンダ在籍経験がある選手では以下が参考になるだろう。

香川真司:セグンダとJ1ではそこそこ、ベルギー中下位ではぱっとせず
原大智
:J3無双→クロアチア下位で無双→セグンダやベルギーではぱっとしない→J2
フアンマ:セグンダ、ギリシア、スコットランド、J1とJ2のエレベーター
カルロス・グティエレス:セグンダ残留争い→J2

選手の移籍を基準に大雑把なtier分けをするならば、以下の通りで概ね外れてはいないと思われる。
Tier 1.0:ビッグクラブ
Tier 1.5:5大リーグ中位以下、葡蘭白の上位
Tier 2.0:5大リーグ2部上位、葡蘭白の中位、J1
Tier 2.5:スイス、オーストリア、スコットランド中位
Tier 3.0:英独の3部、スペイン2部下位、J2
Tier 4.0:スペイン3部、葡蘭白の2部下位、クロアチア等の下位、J3

大まかに言えば、スペイン3部でぱっとしない選手が出場機会が移籍するなら、同格だとしてもJ3、ベルギー2部の下位、デンマーク中位あたりであり、東スポの記事で武者修行先に勧められているJ2になると、よほど相性のいいチームに入らない限り厳しいと思われる。

ビッグクラブのカンテラはかつてほどではない

ビッグクラブのBチームは、かつてはとんでもない強さであった。レアルBは1980~90年代は1部昇格圏に入ったりコパ・デル・レイで8強入りするなど普通にスペイン1部クラスの実力があった。バルサBは2010年ころに全盛期を迎え、2回1部昇格圏に入っているほか、その最強時代にはピッチ上の全員が下部組織出身者になったこともあり、その全員が一流選手として遇されるようなメンバーが揃っていた。

だが最強時代を除けば3部や4部の時代も多く、今現在もそういう時代である。かつて1部クラスの実力を有していたからと言って、今現在所属している選手がそうであるわけではない。プレミアリーグや他のCL常連に金がある現在は、下部組織で台頭してきた選手はすぐに他のチームに移籍してしまうので、「今現在レアルBやバルサBに所属しているがぱっとしない」というのはなんの実力の証明にもならない。

またかつては将来のスターを手広く集めていたが、未成年の青田刈りが禁止されてからは「ユースの銀河系軍団」でもなくなっている。以前の記事でも書いたが、レアルの下部組織から5大リーグ1部に生き残っている割合は僅か15%で、そもそもプロにすらなれない実力の選手が過半数を占める。それでも数あるユースの中では最高の率なのだが、ユースからプロになるのはそれほど狭き門である。

久保建英という上澄み

それでもビッグクラブ下部組織出身者への期待論があるのは、久保建英が成功したからという理由が大きいとは思う。ただ彼はかなり上澄みの選手である。18歳時点でJ1で普通に通用していたというのは、スペインにいればセグンダの中上位チームでレギュラーを掴んでいたというのに相当する。20歳時点で1部でプレーしていたのは、その時点で上位10%の生き残りなのだ。

その彼は、スペイン再移籍時にJ1でプレーしていた経歴について、バルセロナは評価せず3部のバルサBへの加入を求めたのに対して、レアルはそれを評価したということでレアルを選んだと言われている。現在の状況から見ればその判断は妥当としか言いようがないだろう。

20年前であれば「J1で台頭してきた若手の逸材」の妥当な行先はスペイン2部下位や3部であったかもしれない。コパ・デル・レイで8強入りしていた1980-90年代のレアルBや、最強時代のバルサに続々選手を送っていた10年前のバルサBであれば、J1からでも挑戦と言えたかもしれない。

しかし今は違う。Jリーグはかつてよりワンランク実力を伸ばしたし、レアルBやバルサBに昔日の実力はなく、とうの昔に力関係は逆転している。今の中井卓大選手はクロアチアに行ったころの原大智選手より実績が低く、まずJ3やベルギー2部で評価されるあたりが現実的な目標だろう。たとえ彼が将来日本代表に選ばれるほどに成長するような才能を秘めていたとしても、今現在の実力ではそのあたりを目標にしないとならない。


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