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再会④【メイの記憶】

一旦、カフェの外に出て
その隣の小さな煙突のある小屋に
わたしは案内されました。


そこは
焙煎用の機械がいくつかありました。
壁の煤と同化して
年期が入っているようですが
どれもすごく細部まで手入れされているようで
仄かな光を反射して美しく佇んでいました。


珈琲のいい香りが立ち込めるその場所の
片隅にある
小さなテーブルに案内され

私はナツキと正面に向かって
腰かけました。


「ちょっと待っててね」


そう言ってナツキは席を外し
わたしはその部屋に一人きりになりました。


ナツキがいつも焙煎をしているであろう
その部屋にも
少し大きめの窓があり
いつでも緑が見渡せるようになっていました。


まるで時間が止まったかのようにも感じられて
わたしはなんだか気が抜けてしまいました。


わくわく、ウキウキ、久しぶりで嬉しい!
という感情ではなく
ただ、なにか理解できていないものを感じて
思考が停止してしまいました。


木のテーブルに
まるで授業中に意識を失っている生徒のように
机に寝そべりながら
ただ外を眺めていました。


しばらくすると扉が開く音がしたので
身体を起こしました。

「寝てていいよ」

ナツキは珈琲を持って微笑んでいました。


ううん、大丈夫。

ここ、すごく素敵な場所だね

「ありがとう、ここにきた経緯も不思議なんだけどさ」

ナツキはここにくるまでの大変だったこと、
実は以前大変なときに頭に思い描いていたその場所と
この場所がそっくりだったことを
説明してくれました。

その話を聞いて、あれ?
こんな感覚的な人だったかな?

安心と同時に、思いがけない一面を見せてもらった気がしました。


私は自己流ですがスピリチュアルな学びを
してきて、今その学びが私の中にあります。
人と話していると、その人が何を基準にして
物事を考えているのか、検討がつくのですが


ナツキは
知らないうちにかなりスピリチュアルな部分を
受け入れられる人になっていたことに気がつきました。

それに安心した私は
この一週間の出来事、今までのことを多分
順を追っていたのか、ぐちゃぐちゃだったのか
覚えていませんが
とりあえず
口に任せて、混乱したまま話していました。

途中で、は!と気が付き

ごめん、わけわからないよね、この話。

そう伝えたら
ナツキは


「その話が全部わからなくても
いいってことぐらい僕にはわかっているよ」


???


どうしてナツキがそういうことを言うのか
わかるようでわからなくて
理解したいのかしたくないのか

とりあえず私の頭の中は
余計に混乱状態に陥りました。


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