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はじまりの日⑨【メイの記憶】

お店の外をでて

どこにいく? とナツキが聞いてきます。

じゃあ、こっち。

と、私が感覚で指をさした方向へ
歩きはじめました。


そこは、小さな公園のような場所が
いくつも続いている
緑が溢れる散歩道でした。


なんとなく話ながら
私たちはその散歩道の突当りまで歩いてきてしまいました。


そこには、綺麗に手入れされた
イングリッシュガーデンがありました。


美しいベンチもそこにありましたので
そこに座って話せたらなぁと思いました。

でも、その中に入ることができず
その突当りの場所から、

私たちはその美しい緑の庭を
眺めていました。


イギリス、好き?


ナツキが聞いてきます。


うん、好き。

二人ともイギリスに旅行に行った経験があり
その話をしばらくしていました。


ストーンヘンジ行ったの。


ああ、ぼくも行ったよ。
レンタカーを借りてね、結構まわってきたよ。


そんな会話を途切れ途切れ
していました。

時折流れる沈黙の間も
その美しい庭が、そして小鳥の声が
埋めてくれていました。


ただそこにいればいいような気がしていました。


私たちはその時はまだ友人同士でした。


少し距離を保ちながら
私たちはその場を静かに感じていました。

どれくらい時間が経ったのでしょうか。


また手の話になり、お互い見せ合いっこをしました。

やっぱり似ているね、という話をしていました。


すると、ナツキが手を差し伸べてきました。


わたしはまた、
お寿司屋さんでやったように
再度、そっとその上に自分の手のひらを重ねました。

優しくあたたかい
ナツキの手をただ感じていました。

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