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その人は桜とともにやってきた(3)【ナツキの記憶】

「いらっしゃい。お久しぶり」

カウンターの前にたち、ひさしぶりのメイとの再会でした。

まったく8年前と変わらぬ姿に、びっくり。


豊かなクセっ毛。

大きな瞳。

薄い奇麗な形の唇。

小さな肩。

時が止まっていたのか?と思わんばかり。
記憶の中のままのメイが、そこにはいました。


魔女か?

そんな心の中のつぶやきのもと、6年ぶりの再会は、始まりました。


遠いところにようこそ。
おひさしぶり。

そんなあたり前の旧友との会話でした。

ゆっくりして行ってね。
そうして、オーダーのコーヒーを入れに、僕は下がりました。


うちのお店は外を見れるカウンターがあります。

そこに座った彼女は、とても疲れているようで、窓の外を見つめながら、静かに時間を過ごしていました。

そして、時々、こっくりこっくりと眠っていました。


疲れているんだな、メイさん。
ゆっくりしていったらいいよね。

とても優しい気持ちで、彼女を見つめていました。

しばらくして、目を覚ましたメイを、僕はとっておきの部屋に誘いました。
久しぶりに話をしたかったのです。

予定より早く咲いてしまった桜は、満開にも関わらず、暇な営業にしてくれていましたから。

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