その人は桜ともにやって来た(5)【ナツキの記憶】

「その話が全部わからなくてもいい、

ってことぐらい僕にはわかっているよ」


わざと、分かるような分からないような表現を使いました。

ちょっと聞いただけでは分からないように。


そうしてメイの思考を止めようと。

話したい事が洪水のように溢れて行きているメイ。

この部屋に入り、話しだしてから、緊張感ある顔になってしまっているメイ。

乗りたいブランコに興奮して慌てて駆け寄ろうとして、足をもつれさせて転ぶ子供ような状態であると、僕は感じたのです。


伝えたい、話したい。そして、分かって欲しい。。。。

それゆえ頭がオーバーロードで、いつのまにか何を言っているか、自分でも分からなくなっているだけ。


だから落ち着けば大丈夫。頭の回転を止めてあげれば・・・。


メイは予定どおり、きょとんとしています。


してやったり(^^。

そこから注意深く話を始めました。


何を言いたいかってね。

今、メイさんはただ混乱しているだけだと思うの。

あまりにいっぱいのことが怒濤の勢いで来て。混乱してるだけなの。

でも、すべての出来事は、あなたの器を超えていないと思うの。


確かにね、聞いていて分からない箇所はあったよ。

でもね、

時間さえかければ、それはメイさんの中で納得出来て、
ちゃんと僕にも分かるように話せるようになると思うの。

それくらいメイさんは、頭がいいって。力があるって。

大丈夫だから。

僕は知ってるの、それを。


だから今、僕が分からない部分はそのままでいいの。


メイから緊張が抜けて行くのが、目に見えるようでした。


メイは、本当に安心した顔で、ゆっくりつぶやきました。

「こうやって、あなたと話す為にここに来たのかもしれない・・・」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?