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メロンと寸劇

向田邦子さんのエッセイで前回も読んだ本と同じ食いしん坊エッセイ傑作選となるもの。今回も食べ物を軸に、空襲に遭って家族全員で最後の食事と思って食べた食卓から、酔った父親が帰りに持って帰った手土産を寝ているにもかかわらず、起こされ食べた記憶、手土産持って尋ねた宅でいつ渡すか、もらったものをいつ開けるかなど、枕草子ばりに「〜の頃がいい」と書いてある。

箸とナイフ・フォークの話が出てくる。ほとんどのものを2本の棒で起用に食べることができるのは日本人と中国人ぐらい。と出てくる。確かに切る、つまむ、すくう、わる、むしる、さすと器用としかいいようがない。それが、ナイフ・フォークとなるとまさにチャンバラ状態。食べることよりも、作法に則り粗相の無いよう、子々孫々まで恥辱を残さぬようという気概で肉や、魚に挑み掛かる。それは見栄なのか、人に不快な思いをさせてはならないという道徳なのか。「ナイフは剣で、フォークは刺股」という表現が使われている。これが書かれたのが1981年、あれから40年はし、ナイフ、フォークどれも使いこなせるようになっただろうか。

思い出の街に人形町が出てくる。水天宮があり、老舗の店が多く並ぶ街で、目抜通りの有名店だけでなく一つは言った通りにある店などが取り上げられている。流行り廃りの早い店でなく、今も残っている店は多くあるのではないだろうか。
綺麗だった、美味しかっただけではなく、思い出と共に紹介される店は、たとえ縁がないジャンルであっても、せめて店前を通り、あ、載っていたのはここか、と思い浮かべるのも楽しそうだ。

巻末は前回と同じく 寺内貫太郎一家の台本が載っている。ライブで見たことはないが、配役はどなたも存じ上げる方ばかり、読むだけで演じられているところが思い浮かぶのが不思議だ。

街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな