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海苔と卵と朝めし

最近のエッセイブーム。とうとう向田邦子さんまできた。手に取ると食べ物のエッセイが多い。と言うかむしろそれしかない。無意識にそれを選んでしまうのか、タイトルを見て意識的に選んでいるのか。

出て来る食べ物も、豪華絢爛で、高級食材で、希少価値のあるお酒といったものはない。美味しい自慢の話ではなく、むしろそれをきっかけに思い出される話が多い。それは郷愁にも似た感覚。
そういえば、子供の頃、色紙のサイズの海苔を食べる前に軽く炙りそれを切って食べることがあった。その香りと味は、海藻を美味しく食べるための工夫の結果なんだ、と思った記憶がある。
最近はしっかりと味がつき、きれいに切り揃えられたものもしくは、巻き寿司、おにぎりにしんなり状態の海苔しか口にしてない・・

向田邦子さんといえば、「父の詫び状」「寺内貫太郎一家」など有名すぎる作家さん。リアタイ世代ではないが、なんとなくは知っている。本作は子供の頃の記憶から、脚本を書いている頃、その後とさまざまなタイミングを切り出して、食にまつわるエッセイが並んでいる。

子供の頃の思い出は、家庭での強くそして理不尽な父親とのエピソードになっている。なんとなく寺内貫太郎と重なるところもあるのかも。物書きという職業はどれだけ話の種を持ち、それを如何様な方向にも育てられる人がなれる職業なのかも知れない。

断片的に知っている「寺内貫太郎一家」は、屋根の上で歌う美代子、ポスターに向かって悶絶するきりんさん、大暴れする勘太郎、とドラマだからこそのデフォルメなのか、まさに我が家と親しみが湧くほどのリアリティだったのかものすごい昭和の感じだった。この本の最後にも、1話書き起こしが掲載されている。

リアルタイムでは知らないけれど、なんとなくわかるという感覚は、これを今の人が読んでもそうなるのか?それとも、枕草子を読むが如く全くの空想の世界に見えるのか?

街歩きがさらに楽しくなるものがあるといいな