見出し画像

ナレマネを社内教育に生かす


法務の社内教育

事業部から法務への要請として、社内教育は二の次以下かもしれませんが、ないよりはあった方が良いと思います。とはいえ、準備も結構な労力がかかるので、今年は毎月1~3回のペース(それでも、一人で行うにはかなり多い)で実施しています。契約関連の社内研修を一通り行い、事後アンケートを取ったところ、コンプライアンス関連の要請が多かったので、コンプライアンス研修をやろうと思いました。

しかし、一口に「コンプライアンス」と言っても、かなり幅が広いです。コンプライアンス教育はどんなのがあるだろう、と調べたのですが、

  • ハラスメント

  • 個人情報保護

  • 独占禁止法

  • 不正経理防止

など、日頃の自分の業務とは離れている、又は、対象者が少なくなりすぎる感じのテーマが多いと思いました。自分が聴きたくもない話を他人様の時間を頂いてお話するものではないと思っています。社内教育の内容は自分で決められますから、「そんなテーマ又はアプローチなら、私が一番聴きたい」と思える内容にしたいです。あるウェブサイトに「知財コンプライアンス」がコンプライアンス研修のテーマに挙げられていて、これなら、私もできると思いました。

事例で学ぶ知財コンプライアンス

知財コンプライアンスといっても、著作権法や特許法の条文を、おもしろく解説する才覚は私にはありません。でも、これまでに社内から受けた知財関連の質問を入口として、法令や契約書に広げて行けば、参加者が身近に感じて、興味を持ってもらえ、ポイントが頭に入りやすいのではないかと思いました。社内事例で学ぶ知財コンプライアンスであれば、私が聴きたいです。

概ね以下のような事例を10(一部省略)、取り上げました。自分が受けた相談は、調べたことと、回答と共にデータベース化しているので、「事例で学ぶ知財コンプライアンス」とテーマを決めたら、構成を考えて題材を整理し、資料を作成するのは、1週間くらいでした。

  • 新聞記事の社内配布/新聞記事の著作物性、JRRC、クリッピング

  • 論文の引用/引用の条件、最判S55.3.28「パロディー事件」

  • 委託して作成してもらった成果物の改変・公表/著作権の帰属、著作物の利用、著作権法第27条、第28条、著作者人格権

  • サブライセンスと下請実施/下請実施の三要件

  • 同一テーマの共同研究の制限/共同研究ガイドライン

  • 試験・研究目的の特許実施/特許法第69条、最判H11.3.9

レビュー、〇×

スライドを作成し、親会社の知財部にレビューをお願いしました。親切な方ばかりで、とても良い機会をもらった、と言って頂きました。内容をレビューしてもらったばかりでなく、こういう研修は親会社でもやりたい、資料を使っても良いか、と言われました(お使い下さい)。

1スライドで事例を1個取り上げ、テレカンの投票システムで、参加者に〇×を回答してもらう方式にしました。〇×投票だけでも、参加型にすることで、寝ないで視聴してもらえたようです。社内で実際にあった事例を取り上げ、興味を持ってもらえたのか、投票参加率は90%でした。

宣伝効果(?)

事後アンケートで、身近な事例を集めた事例集が欲しい、とのリクエストがありました。良い機会なので、作成してため込んでいた相談事例集(社内からの法務相談事例約80を掲載)を紹介しました。マニュアルや資料の9割は、要請を受けて5分以内に出せるようにしたいです。社内教育をきっかけに、日頃のナレマネ活動の宣伝になったかもしれません。…というのは冗談にしても、「どの程度のレベル感で法務に相談すべきかが掴めた」と言われたのは、良かったことでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?